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170.白内障手術眼内レンズ レンティスコンフォート

今回は白内障手術で使うレンティスコンフォートという眼内レンズに関してお話いたします。

白内障手術術後の見え方に大きく影響するのが眼内レンズです。どの眼内レンズを選ぶかによって術後の見え方は大きく変わります。そのためレンズ選びはとても重要です。

眼内レンズは大きく二つに分かれます。

①単焦点眼内レンズと➁多焦点眼内レンズです。通常保険診療で使われるものが単焦点眼内レンズです。単焦点眼内レンズは単焦点という名前がついている通り、ピントが合う箇所が限られます。遠方に合わせるのか、中間距離に合わせるのか、近くにあわせるのか、生活スタイルや目の状態から希望を伺いながらどこに合わすか決めていきます。

単焦点眼内レンズの最大の特徴は見え方の質が保険外のレンズを含めて最もよい事です。ピントが合わない部分に関しては術後眼鏡が必要になる事を理解して頂いた上で、とにかくくっきりはっきり見たいという方には良い選択になります。実際白内障手術を受ける方の95%以上の方は単焦点眼内レンズで手術をされています。

一方で多焦点眼内レンズは遠くから近くまで幅広くピントが合うレンズです。術後に眼鏡をかけたくない方にはよい選択となります。多焦点眼内レンズは色々種類があるわけですが、多焦点眼内レンズでの手術を希望しても金銭面でネックになる事があります。選定療養という方法で白内障手術を受ける場合、選定療養とは手術代は健康保険がまかなえて、レンズ代は自費でという方法ですが、両目で60万円程度しますし、選定療養で認められていないレンズでの手術だと完全に自費になるので更に高くなります。

そのため多焦点眼内レンズのメリット、デメリットの前に金銭的な理由で断念される方も少なくありません。

もう登場して5年ほどたちますが、保険で使える多焦点眼内レンズ、レンティスコンフォートという眼内レンズがあります。

多焦点眼内レンズなので、全ての方に適応というわけではありませんが、白内障手術を受ける前にこのような選択肢もあるということを知っておくとよいかなと思います。

今回は白内障手術を検討しているなら知っておきたいレンティスコンフォートという眼内レンズに関してお話しいたします。

白内障手術で使う眼内レンズは保険適応の単焦点眼内レンズのほかに、同じく保険が使える多焦点眼内レンズ



でレンティスコンフォートという眼内レンズがあります。保険診療の範囲で使用可能な唯一の多焦点眼内レンズです。

ドイツの会社が開発したレンズで2019年から国内で発売されています。

長方形の独特の形状をしています。通常



の眼内レンズはこのような形をしていますが、少し変わった形していますよね。

レンティスコンフォートの特徴はというと

①通常の単焦点眼内レンズよりも裸眼で見える範囲が広がっている。

多焦点なのでこれが最大の特徴です。

単焦点眼内レンズ


で遠方に合わせると、遠方から1mぐらいまではしっかり見えますが、中間距離から近くは見えにくくなります。僕らがいう中間距離とは50cm~70cm程度の距離、近くは40cm程度の距離をいいます。単焦点眼内


レンズで遠方に合わせた場合、中間距離、近距離は眼鏡が必要になります。なのでパソコン、新聞、スマホを見るときは基本眼鏡が必要になる事が多いです。

レンティスコンフォート


の場合近距離は難しいですが、60cn程度の中間距離までピントが合います。

レンティスコンフォート



はこのように遠くを見る部分と中間距離を見る部分のレンズが二枚組み合わさっています。

上半分が遠方で下半分が中間というと、イメージとしては遠近両用のメガネが近いです。

ただ光が遠用部分と中間部分を通って網膜に結像するので、メガネのように遠くを見るときはレンズの上の方を、近くを見るときは下の方を意識して使う必要は全くありませんので安心してください。目を動かさなくても60cm程度までは連続的にみれます。

そして、遠方部分は必ずしも遠くに合わせなければならない訳ではありません。遠方部分を中間距離に合わせ、ある程度の近方まで見えるようにすることも可能です。遠方部分


を1mに合わせると、近方は40cm前後まで見えるようになります。両眼手術の場合


左右で少し差をつける、マイクロモノビジョンといいますが、そのような方法で単焦点眼内レンズのモノビジョンより違和感なく、より見える範囲が広がるようにする場合もあります。

出来るだけ眼鏡をかける頻度を減らしたいという方にはこのような手法も行えるよいレンズです。

➁二つ目の特徴は多焦点眼内レンズなのに保険で行えることです。このレンズが発売される前は保険で行える多焦点眼内レンズは存在していなかったので、単焦点眼内レンズ一択でした。どの距離にピントを合わせるかという選択はあっても、レンズをどれにするかという選択肢まではありませんでした

今はこのような保険で使える多焦点眼内レンズがあります。

レンティスコンフォートは多焦点なので、保険がきくと言っても追加で費用はかからないですかと聞かれる事があります。

単焦点眼内レンズを選んでもこのレンティスコンフォートを選んでも費用は変わりません。

少し白内障手術の費用に関してお話すると

レンティスコンフォート以外の多焦点眼内レンズは、選定療養の場合、一部保険がきくといっても片目で30万程度、両目だと60万円位になります。

完全自費になると両眼で100万円を越す場合もあります。

一方で通常の保険診療での白内障手術の費用は、3割負担の方は片眼45,000円程度、両眼で9万円程度になります。

また70歳以上の方で健康保険の負担割合が1割・2割の方であれば、自己負担限度額があります。月に18,000円を超える場合、それ以上の自己負担はありません。そのため同じ月に両眼白内障手術を行えば両眼白内障手術を行っても18,000円ですみます。

多焦点眼内レンズをいれたいけど金銭的な事情で悩まれている方はよい選択になるかもしれませんね。

では保険で手術を受けるなら全員がこの多焦点眼内レンズを選ぶべきかというとそうではありません。いくつか注意事項があります。

1つ目 ハロー、グレアがわずかにでます。ハローグレアとは光が滲んで広がったり、光の周りにリング状のもやがかかったように見える現象のことをいいます。夜間の運転に問題になる場合があります。通常の多焦点眼内レンズほど強くはでませんが、若干出るとされています。そこまで強いものではないので問題にならない事が多い印象がありますが、感じ方は人それぞれ違うのでこのような異常光視症を感じる場合があることも知っていてください。

2つ目 コントラスト、くっきり見える度合いが通常の単焦点レンズに比べると、若干落ちます。そのためカメラマン、デザイン関係などの仕事をされている方や、術後の見え方の質にこだわりを持っている方、細かいことが気になりいろいろと考え込んでしまう神経質な方には向かない場合があります。また、緑内障、黄斑変性症のような眼疾患をお持ちの方は適応外となります。

白内障以外に目の病気がなくて、車の運転もするしパソコン作業も多い方やゴルフやピアノなどが趣味で裸眼で遠くも見たいけど、もう少し近くも見えるといいなという方にはよい適応かなと思います。

現在、眼内レンズには色々種類あります。保険外で良いレンズが登場してきていますが、レンズの違いを説明する前に金銭的な事情で諦める方結構おられます。全員に適応になるわけではありませんが、このようなレンズがあることも知っていただいた上で白内障手術を検討していただけたらと思います。

今回の話をまとめますと

①レンティスコンフォートは保険診療で使用できる唯一の多焦点眼内レンズです。

②単焦点眼内レンズを遠方に合わせるとピントが合う部分は1m程度までですが、レンティスコンフォート【遠方合わせ】の場合60cm程度まで合います

③ハローグレアがやや出ます。

④色彩関係の仕事や眼疾患がある方、神経質な方は選択されない方がよい場合があります。

という4点です。

白内障手術を検討にする場合、手術後の生活スタイルをよく考えて眼内レンズを決めるのが大切です。眼鏡を一切掛けずに裸眼だけで生活することを目指す方は多焦点眼内レンズ、眼鏡を掛けても良い、ハッキリくっきり見たい方は単焦点レンズ、その中間をとるのが今回お話したレンティスコンフォートという眼内レンズです。白内障手術の眼内レンズの選択は、選択肢が多くなった分カウンセリングがとても重要です。しっかり要望を伝えて頂いてレンズを決めて頂けたらと思います。

今回はレンティスコンフォートという健康保険で使用できる多焦点眼内レンズに関してお話いたしました。

(2024.6.11)