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168.緑内障を悪くしないために知っておきたい生活習慣

今回は緑内障を悪くしないために知っておきたい生活習慣に関してお話しいたします。緑内障治療において大切なことは目薬によって眼圧を下げることです。眼圧を下げる事が唯一確立された緑内障の治療法です。その日々の点眼治療の中で外来の患者さんからは緑内障を悪くしないために何か他に気を付けた方がよい事ありますか?というように聞かれることあります。何より優先すべきことは①きちんと点眼して➁通院するということつきますが、悪くしないために知っておきたい事がいくつかあります。今回は緑内障を悪くしないために気を付けたい生活習慣に関してお話しいます。

緑内障の発症と進行に大きく影響を与えるものは、眼圧ではありますが、その他に加齢、近視、血流障害、酸化ストレスなどいくつかの要因が複合的に関与していると考えられています。

緑内障は治す事ができないので、早めに緑内障をみつけて、治療を続ける事が一番大切なポイントです。そのためにまず知って起きたいこと

一つ目は

①健康診断で視力検査に問題なければ眼は問題ないと思わないでください。一年に一度健康診断で視力検査を受ける方が多いと思いますが、視力がよければ目に病気がないというわけでは決してありません。緑内障



を発見できるかどうかは視力検査ではなく、眼底検査を受けているかどうかがとても大切です。眼底検査をきちんと受けるようにしてください。

緑内障の場合、初期には症状がでません。緑内障の症状は視野欠損ですが、視野欠損が出はじめる頃には視神経の50%はすでに障害を受けているとされています。

緑内障は何故初期には症状がでないのかというと、

①初期の段階では視野欠損がそもそも出ません

視野欠損が出ていない非常に初期の段階を前視野緑内障といいますが、この段階では視野の欠損がでません。そして

➁多くの緑内障は視野の中心からではなく周辺からかけていきます

自覚症状が出始めるのは視力でとても大切な部分、黄斑部に障害が起きてからです。

多くの緑内障は黄斑部が障害されるのは末期になってからです。人は黄斑部でものをみているんですが、初期中期では黄斑への障害はほとんどありません。そして

➂片目がある程度視野欠損しても、もう片目が補ってしまう

脳は常に良い方の見え方を選択する特徴があります。片目が末期になるまで進んでも気づかない方もいるぐらいです。

どんな病気も早めに分かった方がいいですが、緑内障も早期に見つけるのが鍵です。

緑内障と診断されたら何に気を付けたらいいんでしょう。知っておきたいこと2つ目

➁ストレスをためすぎないようにしてください。

ストレスによって、血管が収縮して視神経への血流が悪くなり、視神経に影響があるのではないかと考えられています。

緑内障の方は緑内障気質といいますが、ストレスをためやすい真面目な人、神経質な人に多い傾向があるとされています。具体的にどのような方をいうのかというと

①眼圧が少しでも高くなると気になって仕方ない、

➁眼圧をその日のうちに何度も測り直してもらっている

➂視野が進行していないか毎日何度も右左目をつぶって見え方を確認している、

といったことはないでしょうか。このようなやや神経質な方を緑内障気質といいます。

緑内障が進むと進行して、見えなくなってしまうという恐怖感からそのように感じるのも十分分かりますが、考えすぎるのはよくありません。悪くなった視野・眼圧のことばかり考えていると苦しくなります。 定期通院と、目薬はしっかり行っていいただいて、それ以外の時間は、良い意味で緑内障の事は気にしないで過ごすことも重要です。

読書やテレビなどの趣味を制限する必要はありません。ストレスをためすぎないようにしてください。

➂軽い運動を続けること

軽い運動、有酸素運動は身体によい影響を与えるだけでなく緑内障にもよいことが以前から知られています。例えば2019年にophthalmology



という雑誌からの報告によると、身体活動の増加は、緑内障患者さんの視野欠損の速度の低下と関連しているという報告がされています。こちらの研究では141名の緑内障患者さんの運動習慣を調べて緑内障の進行速度を比較検討されたものです。その結果は

①ウォーキングで1日あたり1000歩増やすごとに緑内障の視野進行が優位に減少していた

②5000歩追加すると視野欠損の速度が10%減少していた

③筋トレのような中等度から強度の負荷がかかる運動を1日10分以上していることも視野進行の低下と関連があった

と報告されています。

運動というとジムに行かないとと身構える方もいるかもしれませんが、通勤分を歩くとか、散歩をするとか、負担にならない範囲で始まられたら良いです。週何回か継続するようにしてください。

注意すべきこととして筋トレで、バーベルやダンベルを持ち上げる時は、正しい呼吸法をトレーナーに教えてもらうようにてください。息をとめたまま重いものを持ち上げると息こらえによって眼圧が上がる原因になります。

④寝るときは目を圧迫しないようにしてください。うつぶせや机に伏せて仮眠とる方は腕で目を圧迫しないようにしてください。

風船にたとえると分かりやすいと思いますが、膨らんだ風船を押すと中の圧があがりますよね。そのまま押すと内部の圧力が高くなって破裂してしまいます。目も同じです。破裂することはありませんが、長時間眼球を圧迫すると眼圧が相当あがります。

中には習慣的にしていたうつ伏せで緑内障がかなり進行してしまった方もいます。

柔らかい枕を使っている方はいいですが、硬めの枕や腕で眼球を圧迫して寝る習慣がある方は要注意です。

その他、睡眠時無呼吸症候群は緑内障の発症や進行を促す危険因子です。睡眠時無呼吸症候群とは,睡眠中に何度も呼吸が止まったり,浅くなったりして身体中が低酸素状態になることをいいます。イビキがひどい方、睡眠中に何度も起きている方睡眠時無呼吸症候群の検査を受けることをお勧めします。

⑤は、血圧に関してです。外来でよく聞かれることとして、「私は血圧が高いから眼圧が高いんでしょうか?」と聞かれる事があります。高血圧の方なら緑内障への影響に関して一度は心配された事があるかもしれませんね。実際とてもよく聞かれるご質問です。

しかし血圧が高いから眼圧が高いというわけではありません。血圧が高くても目の中を循環するお水 房水が増えないような仕組みが目には備わっているので血圧と眼圧はあまり関係がないとされています。なので内科の先生にお願いして、緑内障だからといって必要以上に血圧を下げる薬を処方してもらう必要はありません。では血圧を無視していいのかというとそうではありません。緑内障は高血圧も低血圧もリスクになります。血圧が高いままだと動脈硬化につながって、視神経への血流低下に繋がります。

一方で低血圧は眼還流圧といいますが、目に充分に血液を与えるための血流が少なくなります。

ある報告では107



をきると視野障害の進行と関係があったという報告もあるぐらいです。

もともと血圧が低い人は調整できているので問題になりにくいですが、問題なのは高血圧治療薬を内服して下がり過ぎているかたです。血圧の薬を飲み始めてから、頭がボーとしたり、ふらついたり、やる気はあるのに身体がだるい、疲れてすぐ横になりたくなるなどの症状のある方は内科の先生にご相談ください。注意事項として決して自己判断で血圧の薬を中止したり飲み過ぎたりしないようにしてください。

⑥ フラマー症候群の方に関してです。フラマー症候群とは、自律神経系の異常によって血管の調節に障害がおきて、からだのさまざまな部位に支障が出る症候群です。具体的には冷え性、匂いに敏感である、入眠に時間がかかる 耳鳴りがある 低血圧、頭痛持ち、疲れやすいといった体質の事をいいます。

フラマー症候群は体質なので病気ではありませんが、正常眼圧緑内障の方には古くから関連性が知られています。

緑内障の中でも正常眼圧緑内障と言われている、そしてフラマー体質の方には特に運動、屋外での運動習慣が推奨されています。

⑦ 緑内障の家族歴がある方、強度近視の方です。家族歴があるから必ず緑内障になるわけでもありませんし、強度近視だから緑内障になるわけではありませんが、リスクが3倍程度高くなります。家族歴がある方、強度近視の方は必ず定期チェックを受けるようにしてください。特に気を付けたいのは昔強度近視だったけどレーシックして目がよくなったから眼科受診していない方です。

レーシックすると視力検査もひっかかりませんし、角膜を削った分眼圧も低くでるので、眼圧検査でも見逃されてしまいます。レーシックすると眼圧が低くなる事、レーシックやICLをしてももとの強度近視の眼球の構造は何も変わっていないということを知っていてください。眼底検査を受けるようにしましょう。

⑧薬に気を付けてください。ステロイドには注意が必要です。ステロイドは薬の影響で眼圧上昇の原因になることがあります。若い方ほどステロイドの感受性が高いので注意です。30,40と高くなることがあります。

ステロイドには軟膏、経口薬、注射や目薬がありますがどれも注意が必要です。アレルギーの結膜炎やぶどう膜炎の診断で何本も目薬をもらっていて、定期検査が長引いている事はないですか?眼圧は40ぐらいまで上がっても自覚症状が出ません。ステロイドの薬を使われている方は基本的には一カ月に一度は眼圧のチェックをされた方がよいと思います。

⑨喫煙に関してです。喫煙習慣がある方は禁煙しましょう。タバコが身体によくないというのは当たり前に知られている事ですが、緑内障にも悪影響があります。2022年



のophtalmologyの報告によると、喫煙者



は非喫煙者と比べると2,2倍緑内障の進行が早いというデータが発表されています。

実際外来でも目薬はきちんとさせているけど、タバコはやめれないという方はやはり進行している方が多いなという印象があります。目のためにも禁煙するようにしてください。

⑩口腔内を清潔に保つようにしてください。口の中が緑内障に影響するってどういうことと思われた方もいると思いますが、歯周病菌が緑内障患者さんの視神経障害に関与する可能性が報告



されています。歯磨きとデンタルフロスをきちんとして、歯医者さんに定期受診して口腔内をよい状態に保つようにしてください。

最後に

⑪個目 緑内障と診断されたら目薬をきちんと指示通りにさしてください。目薬がきちんとしっかりさせているかどうかは緑内障の進行と明らかに関係あります。

目薬をしてすぐにぱちぱち瞬きしている事ないですか?すぐに瞬きをすると、薬の成分が鼻側に流れて充分に効果がでません。正しい薬の差し方は1つ目、点眼前に手洗いをしてください 二つ目 仰向けになってください、三つ目、下瞼を下に引いてください。4つ目 目薬の先が黒目、まぶた、まつげに触れないようにしてください。5つ目、目薬は黒目に当てる必要がありません。目の表面のどこかに当たればよいです。6つ目 目薬は1滴で溢れる量が入っています。1滴のみ点眼してください。そして瞬きをしないでください。7つ目2つ以上目薬をさす場合、必ず5分あけてください。連続でさすと先に入れた目薬が流れてしまうので注意してくださいという7点です。この中で特に大切なのが目薬直後に瞬きをしないことです。

目薬を忘れないためのコツは目薬の置き場所を決めておくことだと思います。

朝さすなら洗面所、就寝前ならベット付近、他の内服薬と同じタイミングでさすものがあれば内服薬の近くにおいて自然に目に付く場所に置くのがよいですね。

緑内障と診断されたらこのように知っておきたい事がいくつかあります。今回の事を詳しく知りたい方は、好評発売中 緑内障に効くたった2つの習慣 読んでみてください。詳しく書いています。

今回の話をまとめますと

①緑内障で失明しないための重要なポイントは目薬の継続と定期通院です。

➁早期発見が非常に重要です、40歳以降眼底検査を受けるようにしてください

➂運動習慣を作るようにしてください。

④薬剤性の低血圧に注意してください

⑤禁煙をして、歯磨きの習慣、目薬をするときは瞬きをしないようにしましょう。

という5点です。

緑内障は非常に多い病気で、40歳以上で5%、60歳以上では1割以上の患者がいます。残念ながら日本の失明原因一位となっているので、診断されたらかなりショックを受ける方もみえます。

緑内障はきちんと治療を継続できれば、失明するような病気ではありません。緑内障とは長くうまく付き合って頂くように、このような事を知って頂いて治療を継続していただけたらと思います。

今回は緑内障なら知っておきたい生活習慣に関してお話しいたしました。

(2024.6.10)