今回は強度近視で失明しないために必ず知っておいてほしい事に関してお話しいたします。
現在日本人の約4割は近視と言われています。周りの方で近視の方は多いと思うので、別に近視だから何?って軽く考えられている方もいると思います。眼鏡やコンタクト、レーシック、今だとICLみたいなので直せるから別に問題ないんじゃないの?と思うかたもいるかもしれませんね。
確かに近視だから必ず目の病気になるわけではありません。多くの方は眼鏡やコンタクトさえすれば生涯それで済むと思います
しかし一口に近視と言っても軽い近視から、中等度の近視、強度近視と色々あって、特に問題なのは強度近視です。
最近の研究では強度近視になると
近視性黄斑症、845倍、網膜剥離 12倍 後発白内障4倍 緑内障3倍 正常の方と比べて発症する割合が高くなると報告されています。
強度近視から見えなくなるという最悪の事態を避けるために様々な取り組みが世界中で行われています。今回は強度近視で失明しないために知っておきたい事に関してお話しいたします。
近視は主に三つに分類されます、0--3Dまでを弱度の近視、―3~―6Dまでを中等度の近視 ―6Dを超える近視を強度近視と分類されています。自分の近視の値が分からなければコンタクトレンズされている方なら度数の値
を見てみてください。その値が自分の目の屈折の値です。この場合-5.75と書いてあるので分類上は中等度の近視になります。
近視の方の多くは軸性近視といいますが、このように眼球
が大きくなっています。
正常の目の奥行の長さは24mmです。たった1mm眼球が伸びるだけでー3Dの近視になります。強度近視の方
はー6D以上になっています。目の奥行でいうと26mmを超すようになります。
近視の方が黄斑症、網膜剥離、白内障、緑内障など様々な目の原因になると冒頭でお話ししましたが、何故起きやすくなるかというと近視の値が大きくなるほど眼球が大きくなるからです。目の奥の網膜や神経が引き延ばされる事によって網膜が避けたり、黄斑から出血したり、視神経に障害をおこして視野が欠ける原因になります。
風船で例えると分かりやすいですが、風船も適度な膨らみなら弾力があって破裂する確率は低いですが、膨らみ過ぎると少しの刺激でも破裂しやすくなりますよね。
同じ事が目にも起きます。目にも適度な大きさというのがあってそれがだいたい24mm程度です。この大きさからたった数ミリですが、25mm 26mm 27mmと大きくなると増えた分だけ眼球にストレスがかかります。風船と同じように、近視が強いほど眼球が大きくなって網膜は引き延ばされて薄くなっています。そのためまず強い近視の目は刺激に弱い事を知っておいて下さい。老眼対策として目の周りをマッサージしたり、必要以上に強くおしたり、ぎゅっと強く目をつぶるような事はおススメしません。膨れ上がった風船を強く押したりしないですよね?毎年アレルギーで目をかいている方は花粉飛散時期を確認してください。2週間前からの点眼でだいぶ痒みがおさまります。目の周りの刺激をさけるという事が1つ目の大切なポイントです。
2つ目 年齢に注意してください、今何歳ですか。網膜剥離の場合50歳以降
網膜剥離の発症率が高くなります。50歳以降発症率が高くなるのは網膜剥離
は後部硝子体剥離と関係があるからです。目の中には硝子体というゲル状の物質があって、若い間は網膜とぴったりくっついています。ところが50歳を過ぎると、皮膚にしわが出てくるように、硝子体も縮んで網膜から離れています。通常網膜と硝子体の接着は弱いので綺麗に離れていくんですが、部分的に強くくっついている部分があります。その部分
で刺激が加わった結果網膜に穴をあけて網膜裂孔になってしまうような場合があります。自分にしか見えない黒いもの、飛蚊症といいますが飛蚊症が増えるような事があれば、網膜に穴が空いたサインかもしれません。強度近視の方は身構えておいた方がよいです。近視でない人より網膜剥離の発症率が12倍高いわけですし、何か目にイベントが発症している可能性が高いです。その他にも視野が欠けてきている、ピントが合わない、これはアムスラーチャート
といいますが、30cm程度離して黒い点を片目ずつみてみて下さい。全て格子状の線が等間隔でみえますか?
歪んで
みえたり、中心が欠けたりすることないですか?1つでも当てはまればすぐに眼科行く必要があります。
3つ目は昔強度近視だったけど、レーシックをして眼科未受診になっている方です。通常目の病気はコンタクトレンズの作成とか何かで受診した際に見つかる事が多いんですが、目がよくなると眼科を受診する頻度が少なくなるので発見が遅れがちになります。レーシックやICL
をして見え方はよくなったとしても、手術前の強度近視の目の形は何ら変わりありませんので、レーシックをすれば近視の病的リスクが減るわけではありません。こちらを見てみてください。
30cmほど離して黒い点をみつめてください。
片目ずつ見るようにしてください。こんな
感じで雲がかってみえる事ないですか?強度近視の緑内障の発症率は3倍程度高いです。知らないうちに緑内障になっていることもあります。
このように強度近視になると眼球が大きくなるので、様々な病気のリスクになります。
強度近視
になってしまった眼球を元通りのおおきに戻す事ができたらいいんですが、それはできないので、子供のころの取り組みが非常に大切です。特に小学生の間は最も近視が進む時期なので強度近視にならないために知っておくべき生活習慣があります。
強度近視にならないために大切な習慣、これだけは覚えておいてほしいということがあるんですが、その1つ目が 屋外活動を毎日2時間以上確保する事です。
太陽の光をしっかり浴びて外遊びする事が近視の抑制に非常に有効がある事であることが分かっています。太陽からの光を浴びるとドーパミンが出てそれが近視の抑制につながるのではないかと考えられています。事実台湾やシンガポールは国策として子供の屋外活動を徹底して管理した結果、近視人口が頭打ちして減少傾向にある事がすでに報告されています。。学校での昼食を外で食べるようにしたり、週末公園で遊んだらおもちゃ券を配布したりしている国もあるぐらいです。天気のいい日はできるだけ外に出て、太陽の光をしっかり浴びるようにしてください。
2つ目、ブルーライトカットの眼鏡をしないでください。ブルーライトは目に悪い光として広まっていますが、そのような事全くありません。ブルーライトカットの眼鏡は目にいいどころか、子供にとっては悪影響となる事ご存知ですか。日本眼科学会
からもこのように注意喚起されています。
タブレットやパソコンなどの自宅学習が増えて、画面から発せられるわずかなブルーライトも目に悪影響を与えるのではないかと誤解されている方もみえますが、そのような医学的エビデンスはなく、むしろカットすることが子供にとって害になります。ブルーライトは覚醒作用があるので夜は避けた方がいいかもしれませんが、現状その程度です。大人にもブルーライトカットはすすめていませんが、子供にはしないようにしてください。
3つ目、近くでモノを見続けないでください。ゲーム機、スマホが目を悪くするというのは常識と思いますが、これらが何故目を悪くするのかというと近くでモノを見続けるからです。近くで見続ける事が近視のシグナルになります。近業作業はゲームだけでないですよね、本を読むこと、長時間机に向かって勉強すること、これもすべて同じ近業作業です。本を読むことや勉強する事が悪いことではもちろんないわけですが、目にとってはどれも同じ近業作業です。3っつの3と言われたりしていますが、30cm離して、連続した近業時間は30分まで、そして30秒間遠くをみるように心がけてください。勉強する場合はリビングがおススメです。目の前に壁があると常にどこか近いところにピントが合い続けるのでよくないです。リビングなら視界が抜けるので、少し目を離すと自然と遠く見れますよね。
ゲームをする場合は小さい画面よりテレビなどの大きな画面でするようにしてください。時間を決めて、長くても1日1時間までにしておくのがよいです。
近視は今まで大人になったら止まる、身長が止まれば止まるというように考えられてきましたが、成長が止まっても近視が進む方もみえます。はっきりと原因は分かっていませんが、近業作業が多い人ほど大人になっても近視が進むという報告
もされています。
20~25歳までの約50%の方が少なくともー0.75D近視が進行して、35-40歳になっても約25%の方が少なくともー0.75D近視が進行したとされています。
大人になってもどんどん目が悪くなっているという方は、長時間の近業作業に気を付けた方がよいかもしれません。連続した近業作業は頭痛や目の疲れの原因になるだけでなく、近視を引き起こす可能性があります。
このように近視は大人になっても進行する可能性があるので、子供のころから目の健康を維持するためにできることを色々取り組んでおくのがいいですね。
同じ近視であっても弱めの近視から強めの近視になると有病率は跳ね上がります。今だとアトロピンという目薬やナイトレンズという夜するコンタクトレンズ
など進行を抑える方法があります。近視であっても強度近視にならないようにするというのが大切です。
今回の話をまとめますと
- 近視の主な原因は軸性近視で、目の奥行が長くなっています。
- 長くなった分だけ組織も延ばされています。そのため近視の目は構造的に弱いです。
- 強くこすらないでください。目をぶつけないように気を付けましょう
- 50歳以降は網膜剥離の有病率高くなる事知っていてください
- 大人でも連続した近業時間が近視をすすめる可能性があります
という5点です
近視は一旦なると元に戻すことができません。子供のころの取り組みが全てです。近視には遺伝的な背景もありますが、最近の主な近視の原因は①近業時間の増加と➁外遊びの減少によるものとされています。屋外活動が充分にとれている人は近業時間が少し多くても打ち消す作用があるのではないかともいわれています。なので、ずっと家にいて何かやりつづけるのではなく、天気の良い日は外に行く時間を確保するようにしてください。
今回は強度近視なら絶対しっておいてほしいことに関してお話しいたしました。
(2024.3.28)