今回は白内障手術後悔する人、しない人に関してお話いたします。白内障手術は現在国内で年間150万件ほど行なわれています。白内障手術を受ける方の中央値は70歳前後なので、60歳を過ぎるとちらほら周りのお友達にも手術を受けられた方が出てくると思います。白内障手術は年々新しい技術やレンズの種類が出てきているので、安全に行うことはもちろん、術直後から良好な視力を獲得できるようになりました。そのため白内障手術で多くの方が満足されんですが、その一方で、手術をする前と比べてあまり変わらなかった、変わらなかったどころか不便になったという方もみえます。
白内障手術をうけて世界が変わったという友達がいるので、私も決心して手術を受けたんですが、世界が変わるどころか不便になったんですよ。と言われる方も事実みえるぐらいです。何故白内障手術を受ける人でこれほど感想に差がでるのでしょうか。今回は白内障手術を受けるうえで後悔しないために必ず押さえておきたいポイントに関してお話いたします。
白内障とは目の中の水晶体というレンズが濁る事によります。生きていれば誰しも発症するいわば加齢現象の1つです。50歳以降
50%、80歳になるとほぼ全員白内障になります。
80歳になったら全員白内障になるんだ、それなら遅くとも80歳になるまでに白内障手術を受けないといけないのかなと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
何故なら白内障になったとしても白内障の程度は80歳になったとしても人それぞれ違うからです。白内障は進行具合、グレードがあります。例えば白内障の固さは六段階
あるわけですが、ひどいのも軽いのもすべて白内障です。80歳になっても全然白内障が進行していない方もみえますし、ある程度進んでいたとしても生活するうえで全く困っていない方も見えます。極端な事をいうと0.5前後でみえてなくても生活に不便を感じていない方もみえます。
白内障手術は視覚的に困ったらうけるべき手術で、まだ見え方に不自由がないなら、年齢などに関係なくもともとの生まれ持った自分のレンズを出来るだけ長く大切にした方がよいです。
そのため
後悔するポイント一つ目は、まだ困っていないのに年齢や友人からの勧めなどを理由に安易に白内障手術を受けられる方です。
世界が変わったというように言われる方がいたら手術を受けたくなると思うんですが、凄くよかったという友達がいたらぜひ聞いてほしい事があります。それは、どこで受けたの?と聞くのではなく手術前どんな感じだったの?というように聞いてみて下さい。そのお友達が手術前は眼鏡しても視力が0.1、0.2で全然みえていなかったとか、元々-10Dを超える強度近視の状態だったとか、このように白内障手術前の視覚機能がよくない方は当たり前ですが術後の満足度が非常に高いです。0.1から1.0になれば驚くほど見えるようになりますし、強度近視の方は近視が軽くなると家の中ではほとんど眼鏡が不要になる事が多いです。術後の満足度はどこで手術を受けたかということより基本術前の状態に依存します。手術を受ける前に、手術前はどんな見え方だったのか聞いてもらって、当てはまる事が多いなと思ったら自分も術後同じような結果になる可能性が高いなと考えてもらえたらいいと思います。白内障がほとんどないのに安易に手術を受けると大して変わらなかった、むしろ今まで見えていたところが見えなくなってしまったということもあるんですね。それが後悔するポイントの二つ目
に繋がるんですが、レンズを安易に遠方に合わせことによって手元が見えなくなってしまったということです。これも多いです。白内障手術の結果は基本どこで手術を受けるかというより、①入れるレンズと
遠くに合わせるのか近くに合わすのか場合によってはパソコンぐらいの中間距離に合わせるのかという➁裸眼でどこにピントを合わせるのかという2点で決まります。多くの方は単焦点眼内レンズを選択されるケースが多いので、単焦点眼内レンズに関して説明します。私達のレンズと人工のレンズの決定的な違いは何かというと調節力がない事です。もともと若い頃のレンズは伸びたり、縮んだりしてピントを調節する非常に優秀なオートフォーカス機能をもっています。若いころは見たい部分に即座に反応してピントがあうんですが、人工のレンズは伸びたり、縮んだりできません。そのため調節力がないので、見える範囲が限られています。遠方に合わすと、
1m以降遠方は裸眼ではっきりみえますが、手元を見るときは老眼鏡が必要になります。逆に手元に合わせると、30-70cmのところで裸眼でピントがあいますが、遠くは眼鏡が必要になります。近視の方は特に多いんですが、遠方視にあこがれを持つ方が多いので、遠くをはっきり見えるようにしたいという方多いです。その場合かなり注意が必要で、特にー2D、―3Dと軽い近眼の方は良好な近見視力をもっています。自分の近視の値が分からなければコンタクトレンズの値
をみてください。このような方が安易に遠方に合わせると今までは裸眼で近くが見えていたのに今度は近くを見るときは老眼鏡が必要になります。確かに
遠くは見えるようになったけど、今まで裸眼でスマホがみえていたのに、術後は見えないと不便になることがあります。遠くを見えるようにするということは近くの見え方は諦めるという事をしっかり理解しておく必要があります。現代社会はスマホ、パソコン、タブレットなどの中間から手元を見ることが多いですよね。パソコンやスマホを使う事が多い方が遠方に合わせると、今度はその距離を見るのに眼鏡が必要になります。
もちろん近視の方が全員手元に合わすべきかというと決してそうではありません。近視の方でも遠くに合わせた方がよいかたもいます。例えば①運転手やスポーツなど遠方視が生活の中心である方 ➁普段からコンタクトレンズで遠方に合わせて、その上で老眼鏡で手元をみるのに慣れている方 ➂スマホや本を読むといった事をほとんどしない、テレビをとにかく楽しみたい方です。このような方はむしろ手元に合わせる方がよくないので、遠方合わせの方がよいです。私自身としては近くが裸眼で見えない方がストレスなので、手元に合わせかなと思っています。
3つ目 保険で受ける場合でもレンズの種類を知っておこうというのが3点目です。保険のレンズというと選択の余地がないと思ってらっしゃる方もみえますが、保険のレンズでも選択肢があります。
通常の単焦点眼内レンズから、単焦点眼内レンズに少し見える範囲が広がったテクニスアイハンス、保険で使用できる唯一の多焦点眼内レンズ、レンティスコンフォートというレンズ 主に3パターンあります。手術後に知らなかったという事がないように、すべて説明するようにしています。無難な選択肢は通常の単焦点眼内レンズです。眼鏡の使用を理解したうえでとにかくくっきりはっきり見たいという方、例えばデザイン関係の仕事だったり、細かな仕事をする方、白内障以外に目の病気があってとにかくコントラストを優先する方には単焦点眼内レンズおススメです。単焦点眼内レンズより少し鮮明さは落ちますが、見える範囲を少しでも広げたいという方はテクニスアイハンスもよいです。軽い眼疾患がある方でも適応になります。最近はこのタイプ他社からも発売されています。HOYA
という会社のimpressやNIDEKという会社のNSP-3というレンズです。まだ出たばかりなので国内ではあまり臨床データはありませんが、impress
の方はアイハンスと同等の焦点深度が海外で報告もされています。
レンティスコンフォートは多焦点眼内レンズなので、眼疾患がない方が適応になりますし、ハローやグレアが若干出るので夜間運転される方は注意ですが、運転を基本しないとか、ハローグレアを理解されている方にはよい適応かなと思います。パンオプティクスほどの焦点深度はありませんが、できるだけ眼鏡の装用を減らしたいという方にはよいかなと思います。ちなみにレンティスコンフォートは手元合わせにも使用できるので、通常の単焦点と違って遠方視力を維持しながら手元に寄せることも可能です。
4つ目白内障手術を受けた後の見え方を知っておきましょう。例えば術前に気づいていなかった飛蚊症、黒いものが飛んでいることに術後気づくことがあります。飛蚊症の原因
は目の中の硝子体という部分の濁りで、多くは加齢とともに発症するものです。白内障手術前
からこの濁りはあるわけですが、術後視界がクリアになることで今まであった飛蚊症に気づくようになることがあります。
視界がクリアになることで、分かるのは飛蚊症だけではありません。加齢黄斑変性症や緑内障の状態がはっきりわかる事があります。黄斑変性症があれば白内障術後歪みや暗点がよりはっきりわかるようになりますし、緑内障
があれば視野が欠けている部分と欠けていない部分がよりはっきり分かるようになります。
中には白内障があったときの方がぼやけて誤魔化せていた分楽だったという方もいるぐらいです。病気の程度にももちろんよりますが、白内障以外に病気がある方は術後の見え方はすっきりしない場合がある事も知っておいた方がよいかもしれません。
5つ目、白内障手術後の異常光視症です。異常光視症というと多焦点眼内レンズでみられるハローグレアのような症状を思い浮かべる方がいると思いますが、単焦点眼内レンズでもハローや、グレア、光の滲みを感じる場合があります。出る方出ない方がいますが、電球などをみると全て光に筋があるようにみえる事があります。
手術後1カ月程度で落ち着くことが多いんですが、状況によっては後嚢といってレンズを入れる袋が影響している場合があるので、それに関してはレーザー治療で症状が消える場合もあります。また術後耳側
に三日月状の影ができる場合があります。これは
光が見える症状に対して陰なので、ネガティブディスフォトプシアと呼ばれますが、レンズ
の端が影響して影となって映る現象です。瞳の大きさにも影響されやすく、感じる方と感じない方があります。
こちらに関しても術後しばらくたつと安定していくことが多いですが、改善しないとやや大きいサイズのレンズに交換することが有効となる場合があります。
このように白内障手術後、あれ思ったほどよくならなかった、よくならなかったどころか受けるんじゃなかったと後悔する場合があります。このような事を防ぐためにたった一つ大切なことは、術前のカウンセリングになるわけですが、コメント欄をみるとそんなレンズの話など説明を受けたことがありません、質問すると嫌な顔されます。というようなコメントをみるのでなかなか難しいかなと思っていますが、今はネットなど調べる方法はたくさんあるので色々調べて納得して手術をうけていただくことが大切です。
それは、白内障手術は基本やり直しがきかない手術だからです。最悪レンズの入れ替えのような場合もあるわけですが、レンズを支える組織にストレスがかかるので入れ替えはできるだけ避けなければなりません。後悔のないように色々リサーチしてもらえたらと思います。今回の話をまとめますと
- まだ見え方に困っていないに、友達にすすめられたからという何となく受けたという事がないようにしましょう
- 遠方に合わすか手元に合わすか、自分の生活スタイルを考えたうえで決めてください。
- 保険のレンズでも選択肢があります。
- 術後飛蚊症を自覚したり、目に病気がある方はその症状が術後更にはっきりするかもしれません。
- 慣れることが多いですが、異常光視症を自覚することがあります。
という5点です。このように白内障手術を受けるうえで必ず押さえておきたいポイントがあります。人の身体で唯一人工のものに置き換えることができる部分が水晶体です。現状は保険外のレンズも含めて若いときの水晶体と同じように機能するレンズはありません。産まれ持った水晶体がどんなレンズより最も機能が優れています。白内障は加齢現象で誰しも発症する目の病気ではありますが、紫外線から目を守ったり、糖尿病に気を付けたりして生れ持ったレンズを長く大切にしてもらえたらと思います。
今回は白内障手術後悔する人 しない人に関してお話いたしました。
(2024.3.28)