今回は目にもよいチョコレートの効果に関してお話いたします。
チョコレートというと一般的に甘いお菓子を思い浮かべる方が多いと思いますが、今回お話ししたいチョコレートはそのような甘い、ミルクチョコレートやホワイトチョコレートとは違って、ダークチョコレートの話です。
チョコレートの栄養は原材料であるカカオ豆
にあります。カカオ豆には、植物由来の抗酸化物質、カカオポリフェノールが大量に含まれていますし、鉄、銅、マグネシウム、亜鉛、セレンといったミネラルや食物繊維も豊富に含まれています。
特に注目されているのはチョコレートに含まれている「カカオポリフェノール」です。栄養価が高くスーパーフードの1つとして知られています。特に血管に関してよい報告が多いです。
カカオ含有率が高い食事を摂っている人ほど高血圧の改善効果がみられたり、中性脂肪やコレステロールの値を下げて動脈硬化を抑制する作用が報告されています。心臓発作
や脳卒中のリスクを減らして、死亡率の低下にも関与しているというような報告もされています。
その他にも気分を落ち着かせるとか、インスリンという血糖値を下げるホルモンがあるのですがインスリンの感受性を高める効果によって糖尿病の予防、ダイエットにも良いといったような報告もされていますし、目にもいくつかメリットがあります。今回はチョコレートを食べると目にどのような健康効果が期待できるのかということに関してお話いたします。
自然界には5000種類のポリフェノールが存在すると言われています。ポリフェノールには強い抗酸化作用、抗炎症作用、抗糖化作用があって様々な健康上のメリットがあるので、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルに次ぐ第六の栄養素とも呼ばれています。赤ワインやコーヒー、緑茶、ブルーベリー、玉ねぎ、大豆などにもふくまれています。
その中で
チョコレートに注目されているのは含まれるポリフェノールの量が植物性食品の中でも圧倒的に多いからです。目にもよい食材の一つとしてよくチョコレートはあげれていますが、
まず白内障の抑制効果
が期待されています。白内障は水晶体とよばれる透明のレンズが濁る病気です。白内障
の進行には主に光刺激による酸化ストレスが関与していると考えられています。
通常酸化ストレス
は水晶体に含まれている抗酸化酵素、グルタチオンやカタラーゼとかそういった酸化と戦う酵素によって守られているんですが、残念
ながら年齢とともにこのような酵素の機能が低下して抗酸化力が衰えていきます。酸化と抗酸化のバランスが崩れてこれが、レンズの混濁、白内障の進行に関与しています。
ポリフェノールは強い抗酸化作用があるので水晶体の酸化的損傷を軽減する力があるのではないかと報告されています。
このような酸化に対して糖化も白内障の原因になります。過剰な糖はタンパク質と結合して終末糖化産物 AGEsといいますが、強い毒性をもった物質に変化して、水晶体を混濁させます。ポリフェノールには抗糖化作用があります。糖尿病性白内障
を遅らせる事ができたと報告が動物実験でされています。
チョコレートではありませんが、赤ワインに含まれるレスベラトロールというポリフェノールにも白内障の抑制効果が報告されています。
このようにポリフェノールが多い食事は白内障の進行を抑えることが期待されています。
2つ目は、視神経のよいエネルギー源になります。ダークチョコレートはポリフェノールも含んでいますが、ミネラルを多く含んでいるのも特徴で必須ミネラルの1つの銅を補充することができます。
眼科的には銅欠乏症
はミトコンドリアの機能不全や酸化ストレスを引き起こして、目を含んだ全身の神経の損傷を引き起こす可能性があることで知られています。銅は大切なミネラルの1つで視神経の損傷から守る作用があります。通常の食事をとっていれば余程不足することはありませんが、胃の手術をしたり、栄養状態が不良の方には発症しやすくて重症化してしまう場合があります。
その銅ですがカカオ70%のダークチョコレート100gあたり一日推奨摂取量90%摂ることができます。ちなみにダークチョコレートを100gとってくださいというわけではありません。実際は20-30g、5切れ程度摂れば他の食事からの摂取もあるので充分ですが、チョコレートにはこのような必要なミネラルが多く含まれています。
現代人は慢性的なミネラル不足といわれていますが、必須ミネラルは体内で合成されることはありません。
ミネラルを摂取するには、食事やサプリメントから摂取しなければなりません。チョコレートやかき、ナッツ、レバーには多くのミネラルが含まれています。
ダークチョコレートはその他にリン、亜鉛、セレニウム、カリウムなどの微量栄養素も含んでいます。
目は今お話した銅以外に亜鉛も大切であることが知られています。亜鉛は目の奥の網膜の機能維持のために重要な役割があります。網膜は水晶体と同じで常に光刺激による酸化ストレスを受けています。
亜鉛は活性酸素と戦うための抗酸化酵素が正常に機能するための重要な補因子です。酵素が正常に働くために欠かせないミネラルです。実際亜鉛欠乏による抗酸化能力の低下は、加齢黄斑変性症を含むヒトの網膜疾患に関連していると考えられています。
そのため加齢黄斑変性症の予防にもよいです。加齢黄斑変性症は一般的にご高齢の方に多く見られ、網膜の劣化によって引き起こされます。加齢黄斑変性症は視力に深刻な影響を与える可能性があり、60歳以上の成人の視力低下の主な原因になっています。国内での中途失明原因は第4位ですが、アメリカでは一位の失明疾患とされています。今後日本でも増えていくとされている眼疾患です。
加齢黄斑変性症の予防にはルテインやゼアキサンチンといったカロテノイドの摂取が重要であることが知られていますが、亜鉛の摂取も大切です。
アメリカ
の大規模な疫学研究ではルテインなどに加えて亜鉛も摂取することが眼病予防のために推奨されています。
亜鉛の推奨量は10mg程度とされていますが、ダークチョコレートには100gあたり5mg程度含まれていて結構多く含まれています。亜鉛を効率よく摂取してもらう方法として、チョコレートおすすめです。
3つ目は、 緑内障にもよい可能性があります。緑内障は視神経が損傷する目の病気で、治療しないと視野が狭くなる神経変性疾患です。
チョコレートには神経栄養因子というものを増やすとされています。
神経栄養因子とは神経細胞の再生や機能維持に必要とされるものです。
2019年の報告
によると20人の健康な人に30日間70%のダークチョコレートをとってもらいました。違うグループにはホワイトチョコレートを食べてもらって比較したところ、ダークチョコレートを食べたグループは優位にNGFという神経栄養因子が増えたという研究結果がされています。
高カカオチョコレートに含まれるカカオポリフェノールによる影響と考えられています。緑内障は視神経に損傷を受ける病気なので、このような神経栄養因子を増やすことが有効な手段のひとつになるのではないかと考えらています。
同じく神経変性疾患である認知症にもダークチョコレート摂取した人の方が認知機能が改善したというような報告もされています。ただし、一般的なミルクチョコレートやホワイトチョコレートではこれらの効果が見られなかったとのことなので、あくまでもダークチョコレートのみの効果です。このように神経栄養因子を増やす効果が期待されます。
4つ目は、 短期的ではありますが、コントラスト感度がよくなるという報告もされています。コントラスト感度とは、色の薄い文字がどの濃さまで見えるかという視機能を評価する検査の1つで、簡単にいうとはっきりと見る力のことを言います。JAMA Opharmology
に掲載された研究では 、30名の健康な成人男女を2つのグループにランダムに分けて、カカオを多く含むダークチョコレートと、カカオの含有量が低いミルクチョコレートを食べてもらいました。その結果、約 2 時間後にはダークチョコレートを食べた成人にのみ視力が良くなったことが報告されました。これもカカオポリフェノールの1種であるフラボノイドによって引き起こされる血流の増加によるものと考えられています。
この研究は小規模の研究ではありますが、目だけでなく、心臓、脳の血流を改善することも他の研究で報告されているので、血管のためにもよい食材です。
このようにダークチョコレートが長期的な目の健康を維持し、加齢に伴う目の症状を予防するのに役立つことがいくつかの研究で示されています。
おススメはカカオの比率が70%以上のものでオーガニックのチョコレートです。普通のチョコレートによく使われる、砂糖や乳化剤や香料などの添加物を含まないものがよいかなと思います。原材料を見て、植物性油脂や乳化剤といった添加物が入っていないことを確認するようにしてください。
注意点としては、ダークチョコレートを食べることは全身の健康と目の健康に良いですが、脂肪分が多く高カロリー食品なので食べ過ぎないようにしてください。適度に摂取しないと、他の健康上の問題になります。
また、ダークチョコレートには、カフェインが含まれているので、寝る前の摂取や、カフェイン摂取による不安症状が現れやすい人は、食べるのを避けたほうがいいかもしれません。片頭痛やアレルギー反応を引き起こすこともあるので、ダークチョコレートを一度も食べたことがない人は、少量から食べてみてください。
今回の話をまとめますと
- ダークチョコレートにはポリフェノールや銅や亜鉛といった微量ミネラルが多く含まれています。
- 強い抗酸化作用、抗糖化作用のため白内障の抑制に期待されています
- 銅や亜鉛といったミネラルは視神経や網膜の大切な栄養素です。
- 神経栄養因子を増やすとされています。緑内障に対して期待されています
- 短期的にコントラストがよくなると報告されています。
という5点です。
ダークチョコレートはおいしいおやつで、全身的にも目にも健康上のメリットが期待できます。ですが、ダークチョコレートを大量に食べることが目にも体に良いという意味ではありません。バランスの取れた食事に沿って少量を食べることがポイントです。
目によい食べ物には魚、卵、ナッツ、ブロッコリー、鶏肉などがあります。目に良い食べ物は色々動画であげていますのでよければそちらも見て頂ければと思います。食事に加えて運動と適切な睡眠を実践することも大切です。
今回はチョコレートの目への健康効果に関してお話しいたしました。
(2024.3.19)