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101. 近視 網膜剥離にならない生活

今回は近視の方が網膜剥離にならないための生活習慣に関してお話させて頂きます。近視であることで近視がない方よりなりやすい目の病気が色々あります。例えば網膜剥離の場合、海外の報告だと近視であることで20倍発症しやすくなると言われています。それも近視の程度が強くなるほど発症率も高くなります。私も近視があって色々目の病気には気をつけないといけないなというように思っているんですが、網膜剥離にならないために注意している事があります。今回は近視による合併症で特に多い網膜剥離にならないために気を付けていただきたい生活習慣に関してお話させて頂きます。

ポイントは4つあって、①定期検査をする ②好発年齢を知っておく、③セルフチェックをする ④振動、外傷を避けるという4点です。それぞれお話させていただきます。

まず知っていただきたいことの1つ目、特にー6Dを越えるような強度近視の方に知って頂きたいことです。無症状でも一度早めに眼科の診察を受けるようにしてください。これはなぜかというと網膜剥離の前段階に網膜裂孔、網膜円孔というのがありますが、

無症状でもそのような穴が網膜に開いている場合があるからです。

網膜に穴ができるとき飛蚊症といって自分にしか見えない浮遊物を自覚する事があるんですが、そのような症状がない事もあります。たまたま眼科に行って近視が強いし一度詳しく検査してみましょうと言われて網膜に穴が見つかるということがよくあります。穴がないとしても網膜が薄く弱くなっている部分がみつかる事があります。

治療の対象となる場合とならない場合があるんですが、今の自分の目がどのようになっているか1度知っておくということが大切です。

網膜が剥がれてしまうと治療法は手術しかありません。早めに穴が開いていることがわければレーザー治療で網膜剥離にならずに済む可能性が高いです。特に強度近視の方は30代と若くてもこのような可能性があるので早めに一度眼科受診して自分の目をチェックされておくのがよいと思います。

2つ目、網膜剥離はどの年齢でも同じように起きるわけではありません。起きやすい年齢があります。50-60台です。何故この時期に起きやすいかというと「後部硝子体剥離」という加齢現象がこの時期に起きるからです。目の中

には硝子体というゼリー状の物質があって若い内は網膜と接着しています。しかし

このゼリー状の物質は年齢とともに少しずつ収縮して網膜から離れていきます。これを後部硝子体剥離といいます。通常硝子体と網膜の接着は強くないので綺麗に剥がれて行くんですが、接着が強い部分があってそこで問題になることがあります。問題になりやすい部分

は眼球の前側、網膜の周辺部という場所です。この部分

は硝子体との接着が強い上に網膜も薄い部分です。網膜はすべて同じ厚みではなくて、端になるほど薄いんです。近視の方は更に薄くなります。剥がれる時に強く引っ張ってしまってこの端の部分で網膜に穴を開ける事があります。これを網膜裂孔といいますが、網膜剥離の原因となる穴です。この穴から硝子体に含まれていたお水がどんどん流れていって網膜が剥がれていきます。

これが網膜剥離でもっとも多い裂孔原性網膜剥離のパターンです。50ー60台の年齢の方が好発年齢になるのはこの後部硝子体剥離の発症と関係しているからです。後部硝子体剥離は終わるまでに数年かかります。光視症や飛蚊症を自覚している間はその時眼科に行って問題ないと言われても継続的に眼科での診察が必要です。

そしてポイントの3つ目、セルフチェックをしていただくことです。

網膜裂孔ができるときは飛蚊症や光視症の症状が通常でますが、症状の出方は様々です。明らかに自覚するときもありますし、先程もお話した通りほとんど自覚症状がない時もあります。また見えている方の目が障害が起きている方の目の症状をカバーして気づきにくくしていることもあります。そのため簡単にセルフチェックをする方法として、片目ずつ閉じて見え方に差がないかをチェックする癖をつけるようにしてください。飛蚊症の場合暗い部屋だと分かりにくいのでチェックするときは明るいところや白い壁を見て片目ずつ目を閉じて確認されるようにしてください。

今回の話から少しずれますが、近視が強い方はできたらアムスラーチャート

を月に一回セルフチェックでしてみるのもおすすめしております。アムスラーチャートは視力の要となる黄斑部をチェックすることに適しています。アムスラーチャートとは格子状の表のことでこれ1つで色々な黄斑部の病気が発覚することがあります。近視であることで網膜剥離も起きやすいんですが、近視であることで網膜前膜や黄斑円孔、近視性の黄斑症といった黄斑部の病気になりやすいことも知られています。このような病気になるとアムスラチャートの格子状の線が真っ直ぐ見えずに歪んで見えたりまたは欠けてみえたりします。黄斑部の病気は程度が軽いと自覚症状が全くない場合がありますが、このような検査をすることで軽い異常に気づける事があります。黄斑部の異常を放置して手術のタイミングを逃すと歪みや部分的な視野欠損が後遺症として残ってしまうことがあります。そのためやはりセルフチェックをして目の異常がないかをチェックすることが大切です。アムスラーチャートはネットなどで調べるとすぐに出てきます。

明るい場所で片目ずつチェックする、アムスラーチャートを活用してみるということを1ヶ月に1度してみることをおすすめします。

最後4つ目のポイントは近視の目は網膜が薄いので衝撃や振動に弱いということです。網膜剥離になりやすいスポーツというと強い衝撃を受けるボクシングを思い浮かべる方が多いと思いますが、目を擦るとった事にも注意しなくてはなりません。アトピー性皮膚炎の方も網膜剥離になりやすい事が知られていますが、これは頻回に目をこするからです。そのため目に衝撃や振動が加わる動作はできるだけ避けていただきたいです。

毎年花粉症の時期に結膜炎の症状が出るかたは早めに目薬をする事や、かゆみが強いときは冷たいタオルでまぶたを冷やす事も有効です。


また強度近視の方は白内障手術後も注意するようにしてください。白内障手術後にまれに網膜剥離になる事があります。全体でみると0.1%前後の割合になりますが、強度近視の方に限定すると1%前後術後網膜剥離が起きることが知られています。これは白内障手術を行って水晶体を除去することで硝子体の成分が変化して後部硝子体剥離がおきやすくなるからと考えられています。手術直後になる方もおられますし、術後しばらく3ヶ月、半年と経ってからなられる方もみえます。そのため強度近視の方は手術前に瞳を広げて網膜に弱い部分がないか、あればレーザー治療を術前にするような場合がありますし、術後も新たに孔ができていないか必ず定期チェックが必要です。白内障術後に飛蚊症や視野欠損などの症状が出ることがあれば次の受診を待たずにすぐに受診されるようにしてください。

今回の話をまとめますと

①ー6Dを越えるような強度近視の方は症状がなくても一度眼科受診して自分の網膜の状態をまず確認するようにしてください。

②網膜剥離は50ー60代に起きることが多いです。

③特にこの時期は片眼ずつつぶって見え方に差がないか確認して下さい。その際アムスラーチャートも使うとよいです。

④目を擦ったり、ぶつけたりしないでください。

⑤強度近視の方は白内障手術後網膜剥離になることがあるので経過観察が必要です。

という5点です。網膜剥離になってしまうと治療は手術しかありません。仕事も休まないといけませんし、寝るときもうつむきが必要になったり、術後ガスをいれる関係でガスが無くなるまで飛行機に乗れなくなったり色んな制限があります。そのため網膜剥離になる前に治療するということが非常に重要になります。前段階の状態でレーザー治療すればゼロではないんですが網膜剥離になる可能性を限りなく減らすことができるからです。事前に自分の眼の状態を知っておいたり起きやすい年齢であったり、どのような時に孔ができやすいかということを知っていただいて網膜剥離にならないように気をつけて頂けたらと思います。

今回は網膜剥離にならない生活習慣に関してお話させていただきました。


(2022.11.1)