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87. その白内障手術 急いだ方がいいです!

今回はその白内障手術急いだ方がいいですよという事に関してお話させて頂きます。白内障手術は基本は患者さんが手術を希望されるタイミングで手術をすることがほとんどです。

白内障手術は短時間で終わり視力回復の可能性が高い手術で、現在国内で年間150万件ほどされているような手術です。70歳前後の年齢で手術を受けられる方が最も多いですが、みなさん受けているからといって手術を受ける必要は必ずしもありません。白内障の進行の仕方はそれぞれで50代でもしっかり白内障があるようなケースもあるのですが、なかには80歳前後の方でも白内障がわずかであり積極的に手術を進めないような状態の方もみえます。

ですが、その中でもこの状態なら絶対手術を受けられた方がいいと考えるケースがありまして是非知って頂きたい白内障手術を積極的に考えた方がよい二つのケースに関してお話させて頂きます。

1つは緑内障を患っている場合です。緑内障の中でも閉塞隅角緑内障と診断されている方です。このタイプの緑内障は抗コリン薬といって緑内障の方は内服する前に眼科医に相談してくださいよと言われているタイプの緑内障です。

緑内障

には大きく分けて隅角という水の中の出口が正常に開いている開放隅角という緑内障と狭い閉塞隅角という緑内障の二つのタイプがあります。どちらも高めの眼圧が視神経に負担になり緑内障が発症しているという緑内障としての病態は同じなんですが、眼圧が上がるメカニズムは全く別でありそのため治療方法が全く異なります。この中の閉塞隅角緑内障

と診断されている方は白内障が原因でなってしまっている緑内障です。人の水晶体は年々大きくなっていき、加齢とともに大きく重くなっていく組織です。ある程度大きくなると

水晶体のすぐ前にある隅角という水の出口を塞いでしまうことがあります。眼科で隅角検査という検査を行うとすぐにわかってしまいます。このタイプの緑内障は元々眼のよい60歳以降の女性に多いのが特徴です。目がよい方は遠視の状態であることが多いです。遠視の状態の目

は眼球が小さいんですね。一方で近視の方は軸性近視といいまして眼球が大きいです。遠視の方は眼球の容積は小さいんですが、目の中の組織、水晶体まで小さくなるわけではありません。近視で目が大きい方も遠視で目が小さい方も水晶体の大きさは同じなんです。遠視の方は近視の方に比べるとあまりスペースにゆとりがありません。そのため水晶体

が大きくなることで隅角という出口を塞ぐ可能性が高くなります。遠視の方は目が良い方がほとんどですが、私は目がいいから眼の病気とは無縁と思っていると痛い目に合う可能性があります。閉塞隅角緑内障は日本人に多い正常眼圧緑内障と違い眼圧がやや高めでそれに加えて急性緑内障発作という一夜にして失明する可能性がある緑内障になる可能性があります。白内障手術
を行えば、人工の眼内レンズは人の水晶体よりはるかに薄く、手術を行う事で緑内障発作を起こす可能性を回避できるだけでなくそれだけで眼圧がかなり下がり緑内障の進行が止まるような事もあります。

そのようなこともあるので閉塞隅角緑内障の方に白内障手術が必要だとお話するのですが、やはり目の手術は怖い手術をなんとか避けたいと言われる事があるんですね。代わりにレーザー治療を行うこともあるんですが、最新の緑内障診療ガイドライン第5版にもあるように基本は白内障手術が第一選択なんです。

レーザー治療、白内障手術どちらもされたくないと言われた場合、今度来院されるまでに緑内障発作を起こしていたらどうしようとヒヤヒヤしながら待つことがあるんですね。閉塞隅角緑内障と言われている方はそのような危険性をもっていますので視力が良くて白内障の症状がほとんどなくても白内障手術を検討した方がいいと考えられています。

一方で正常眼圧緑内障のように日本人に多い隅角が開放している方でも白内障手術で眼圧が下がるのではないかと期待されている方もおられます。白内障手術で眼圧が下がるという報告もあるのですが、基本的には白内障手術だけで眼圧が下がり緑内障の治療に繋がるとは考えない方がいいです。正常眼圧緑内障

であったり原発開放隅角緑内障の場合、先程の閉塞隅角緑内障と異なり白内障が原因ではないからです。房水流出路といって隅角という水の出口以降の部分に問題があると考えられています。この部位の圧抵抗が強い事でお水の排出が

うまくできず眼圧が高くなり視神経に障害を与えているのではないかと考えられています。このような事から分かるように白内障手術をすることで眼圧が下がるとの報告も事実ありますが、効果は限定的と考えられています。

ただし緑内障の方が緑内障治療も兼ねて白内障手術とアイステントやトラベクロトミー、トラベクレクトミーといった緑内障手術も兼ねるのなら緑内障治療にも当然繋がります。ただ開放隅角の方は白内障手術単独では緑内障の治療には繋がらないと考えていただけたらと思います。

そして絶対にした方がいい白内障の2つ目

は成熟白内障と診断されている方です。成熟白内障は通常の白内障よりだいぶ進行している方です。眼鏡でしっかり矯正したとしても視力が0.1以下の視力で0.0いくつの視力の方です。多くの方はここまで放置せずに白内障手術をされるのですが、中には片目がみえていなくても反対の目がみえているからしたくないですというように手術をしたくない、または目の手術は怖いからしたくないと言われる方がおられます。白内障は進むと先程もお話した通り大きくなりどんどん重くなっていく組織なんですね。そのためレンズをささえている筋肉、チン小帯

というのがあるのですがその部位が断裂したり、最終的には水晶体自体が破裂して溶けていくことがあるんです。こうなると大変です。レンズを支えている筋肉が断裂すると、希望した眼内レンズが入らなくなる可能性があります。多くの眼内レンズはこの筋肉が断裂していると固定することが出来ないからなんですね。

また水晶体がとけると水晶体融解性ぶどう膜炎といいますが、目の中に強い炎症が起きて視覚的な障害を起こすことがあるんですね。このように閉塞隅角緑内障と診断されている方、成熟白内障と診断されている方は手術をせずに回避し続けるにはややリスクがあるので手術を検討されてはいかがでしょうか。今回のお話をまとめると

①閉塞隅角緑内障は白内障が原因でなる緑内障です。

②そのため白内障手術が有効な緑内障治療になります。

③正常眼圧緑内障のような隅角開放型の緑内障は白内障手術単独では緑内障の治療にはなりません。

④成熟白内障はそのまま放置するとレンズを支える筋肉が断裂したり、白内障がとけだすことがあります。

という4点です。冒頭でもお話した通り白内障手術は基本、患者さんが希望されるタイミングで行うものだと思っていますが、特にこの2つタイプの白内障と診断されている場合はしっかり検討されてよいと思います。成熟白内障の場合は視力低下として自覚されますので実際は重症化する前に病院受診される方が多いです。問題は閉塞隅角緑内障の方です。こちらは一般的に見逃されやすいタイプの緑内障だからです。目のいい方が多く、眼科は無縁と思われれている事が多いため重症化するまで気づきません。急性緑内障発作は眼科の緊急疾患のうちの1つであり、治療が遅れると一夜にして失明する可能性があります。まずは40歳以降緑内障がないか必ずチェックして頂き、その後も可能なら目の良い方も年に1度は眼科検診受けていただきたいと思います。今回は絶対早く白内障手術をした方がよい2つのケースに関してお話させて頂きました。


(2022.9.13)