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72. 緑内障が更に悪くなる時

今回は緑内障に別の緑内障が加わってしまって悪くなってしまうことがあるということに関してお話させて頂きます。日本人に多い緑内障は正常眼圧緑内障という緑内障が多いです。このタイプの緑内障は進行が非常にゆっくりであることが特徴です。早めに分かれば生涯失明にまで至ることがほとんどありません。このように正常眼圧緑内障は深刻な状態にまでなりにくいタイプの緑内障ではありますが、ある時をきっかけに正常眼圧緑内障に別の緑内障が加わってしまい視野の状態が悪化してしまうことがあります。

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このページの解説は以下のYouTubeでもしています

https://youtu.be/vRWmF0pyqXE

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今回は今の緑内障に別の緑内障が加わって悪化の原因になるとはどういうことなのかという事に関してお話させて頂きます。

日本人の緑内障の7割は正常眼圧緑内障と言われています。昔はこのタイプの緑内障はあまり問題になることはありませんでした。それは今ほど日本人の平均余命が長くなかったからです。40歳で正常眼圧緑内障になったとしても深刻になる前に寿命を終えていたからあまり問題になることはなかったと言われています。そのため緑内障という病気自体非常に稀な病気でした。ただ今は日本人の余命は長くなり、無治療のまま放置しておくと視覚障害が発症する可能性があるので治療する必要があります。このように正常眼圧緑内障は進行は非常にゆっくりであることはいいことではありますが、経過中に緑内障の進行が早まってしまうことが実はあります。その原因の1つとして経過の中に新たな緑内障が追加で発症してしまうことがあるからなんです。緑内障は正常眼圧緑内障だけでなく加齢による落屑緑内障とか、水晶体というレンズが原因の閉塞隅角緑内障とか、糖尿病などによる血管新生緑内障とか色々種類があります。このような緑内障が正常眼圧緑内障に追加されて悪化することがあるんです。

例えばもともと正常眼圧緑内障として治療をしていたという方がおられたとします。眼圧は薬を使ってだいたい12〜15ぐらいで長期間安定していた経過でした。しかし数年後急に眼圧が24,5と20を超えるような眼圧になってしまいました。薬をどんだけ追加しても下がらないので受診となった。という方です。

正常眼圧緑内障は眼圧が21を越えない正常の眼圧が問題になるタイプの緑内障なんですが、このように経過の中で眼圧が正常値を越えて上昇してしまうことがあります。患者さんとしても今まで正常値を超えるような眼圧になったことはないんです。何故か最近になり眼圧がどんどん上昇してきて薬を使っても眼圧が下がらず今は眼圧を下げる飲み薬を飲むように言われて飲んでいます。と話されたりします。飲み薬とはダイアモックスという飲み薬です。かなり眼圧は下がるのですが、諸刃の剣で身体への影響もある薬です。ふらつき、しびれの様な症状がほとんどの方で起こりますし、長期間飲み続けると尿路結石のようなリスクもあります。

内服薬はこのようなリスクがあるので通常の治療として使用することはありません。一般的には手術までのつなぎで使用するタイプの薬です。

このように正常眼圧緑内障と診断されていたのに内服薬を使うまでしないと眼圧がコントロールできないぐらい高くなってしまった。という事があるんです。

何故このような事がおきるのでしょうか。

よく経験するのは他の緑内障が合併してしまったというパターンです。

年齢と共に合併しやすくなる緑内障として落屑緑内障という緑内障があります。落屑緑内障は正常眼圧緑内障とは全く別物です。身体の中で老化現象がおきると、目の中にふけみたいなものができます。それが目の中の隅角という水の出口に詰まってしまって眼圧が急激に上昇することがあるタイプの緑内障です。70代以降に発症しやすくなることで知られています。70歳以下ではほどんどありません。そのため50−60代は眼圧は正常値だったけど70代になったらこのように急に眼圧が上昇するような事がありうるんです。これが冒頭でもお話したもと緑内障に他の緑内障が合併してしまった状態なんですね。すなわちこの場合は正常眼圧緑内障+落屑緑内障の合併と診断名が変わってきます。落屑緑内障は眼圧が目薬などではコントロールできなくなるほど高くなることがあります。30近くまで上昇することもあります。そのため進行スピードが早いです。もともと正常眼圧緑内障の方は正常値の眼圧でも負担になっているので、このように眼圧が急に上昇すると一気に視野が進行する場合がありますので注意が必要です。

その他にも良く経験するのは閉塞隅角緑内障の合併です。同じように正常眼圧緑内障として治療していました。それなのに60歳以降眼圧が30付近まで上昇し目薬でも眼圧が下がらなくなってしまったという事があります。今までずっと眼圧が正常値だったのに急に眼圧が上がり下がらなくなったという先ほどと同じような経過です。閉塞隅角緑内障の原因は白内障です。白内障は視力低下を起こす目の病気として知られていますが、このように緑内障の原因になることがあります。

白内障は水晶体という部位が混濁していく事が原因なのですが、水晶体は単に濁るだけでなくどんどん大きくなっていく組織なんです。水晶体が大きくなると、水晶体のすぐ前にある隅角という水の出口を塞いで眼圧が上昇してしまう原因になります。閉塞隅角緑内障はもともと目の良い女性の方に多いのが特徴です。水晶体が原因ですので、この場合白内障手術が有効な治療になります。白内障手術が緑内障手術に有効であるタイプの緑内障なんですね。

このように経過の中で今までの緑内障にプラスして他の緑内障が合併してしまうことがあります。


今まで正常眼圧緑内障だと思っていたけど途中で状況が変わることがこのようにあるんです。私は正常眼圧緑内障だから他の緑内障は関係がないというわけではないんです。正常眼圧緑内障と診断がついたらその後に加齢による落屑緑内障の合併であったり、同じく加齢により閉塞隅角緑内障が合併するということがあります。

眼圧は30前後あたりまで上昇しても自覚症状も全くありません。緑内障は悪くなるサイン、乳頭出血というのもありますし、このように眼圧も急に上昇することがありますから落ち着いている方でも定期的な経過観察が必要と考えられています。

今回の話をまとめますと

①正常眼圧緑内障の経過中に他の緑内障が追加される場合があります。

②加齢による落屑緑内障、閉塞隅角緑内障などがあります。

③正常眼圧緑内障の方がこのような緑内障が加わると悪化の原因になる場合があります。

④経過中に緑内障は状況が変わることがあり注意が必要です。

という4点です。

緑内障はこのように経過の中で違う緑内障が加わってしまうことがあります。多くは年齢による事が原因ですが、糖尿病や高血圧がもともとの緑内障の状態を悪化させる原因になることがあります。糖尿病で網膜症になり、非常に深刻な状態にまで悪くなると血管新生緑内障という非常に難治性の緑内障になってしまうことがあります。この緑内障は全ての緑内障の中でも非常に治療が難しいタイプになります。血管新生緑内障は糖尿病だけでなく網膜中心静脈閉塞症という高血圧が原因でなる病気にも起こりやすいことが知られています。加齢によるものは自分ではコントロールできませんが、糖尿病や高血圧は緑内障を悪くさせないためにきちんと内科的な治療を継続されるようにしてください。今回は緑内障に違うタイプの緑内障が加わって悪くなる場合があるということに関してお話しさせていただきました。

(2022.8.12)