緑内障という病気は視神経に障害を受けて視野障害がおきていく病気です。そのまま無治療でいると見える範囲がどんどん狭まっていき最終的には失明してしまう可能性があります。
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緑内障は中途失明率一位の眼科疾患であることから緑内障と診断されると失明してしまう病気になってしまったと思われてショックを受けられる方が多いです。ですが緑内障はすぐに失明してしまう病気ではもちろんありませんし、きちんと治療をすれば失明するようなことがほとんどありません。
緑内障の視野の変化の仕方にはある程度決まりがありまして、どのように変化していくのか分かるとまだまだ大丈夫なんだとわかりますし、逆に視野の進行の仕方が分かれば生活する上でどのようなことに気を付けなければならないかということが予想できます。またある検査を行うことでこの部位の視野は当分変化しないだろうということまで分かったりするんですね。
今回は緑内障の一般的な経過のたどり方を説明させていただきます。
緑内障で一番多い視野変化はどこから出てくるかご存じでしょうか?この視野
は緑内障の経過観察で最も行われる静的視野検査というものでその中のハンフリー30ー2の視野検査というものです。この視野は左眼です。黒い点はマリオット盲点といいまして視神経に該当する部位です。左眼
なら左にありますし、右眼なら右にあります。この部位は誰しも暗点がつきます。このような状態が視野欠損のない正常の視野です。
ではこの視野
からどのように見えない部位が広がっていくのでしょうか、上側から視野変化がでるんでしょうか?それとも下側から変化していくんでしょうか?それとも耳側から、もしくは鼻側からの変化なのでしょうか。または至るところにランダムに変化が起きるのでしょうか?最も多い
緑内障の視野変化は鼻側の視野からの変化が多いです。鼻側の上か下かどちらかからの変化が多いのですが、8割方鼻側の上側からの変化が多いです。これは視神経の障害を受ける部位と関係しているのですが、視神経は下側
にダメージを受けてその部位に相当した視野変化がでます。
下側に障害が起きるとなぜ上側に視野変化がでるのかというと、障害部位と実際に見える画像は反転するからなんですね。視神経の下側に障害うければ上側から視野障害が出現しますし、逆に
上側に障害をうければ下側から視野障害が出現します。
このようなルールがありまして、初期から中期の緑内障の場合視野のいたるところにまだらに暗点がでるのではなくて神経の障害を受けた部位に一致して視野変化がでるんです。
これが視野障害の出方の1つ目のルールです。
ではその神経線維の走行はどのようになっているかというとこのようになっています。
このように視神経を中心に弧を描くように走っているんですね。この中で視野障害が起きやすい場所は全ての神経線維ではなくてほとんどはこの(図8)上側か下側のどちらかもしくは両方です。同じ説明になりますが、下側(図9)に障害があれば上側に視野障害が出ますし上側(図10)に障害があれば下側に障害がでます。
視神経が障害を受けることでその先の神経線維が障害される、それが視野障害として反映されます。
逆にいうと障害されていない神経線維(図11)からは視野障害が出現しないんです。なので僕らはどの部位の神経線維が障害をうけているかを判断してその部位の変化が視野変化と一致しているのを確認しています。
神経に障害が受けていない部位は視野障害が出ない。これが2つ目のルールです。
繰り返しになりますが、一番多い障害を受けるパターンは視神経の下側(図9)から障害をうけます。そうなると下側から連なっている神経線維が弓状に障害を受けていくんですね。視野としてはどうなるかというと上側に弓状の変化がでます。
これは実際やられている視野を反転させて確認とると分かりやすいです。障害(図12)している視野を上下反転させますと、障害をうけている部位と一致しますよね。今度は逆に神経の上の方(図13)の視神経がやられているとします。そうなると上の視神経から連なっている神経線維が障害を受けていきます。視野はどうなるかというと下の方に変化がでるんです。このように眼の奥の所見をみて障害がある部位と視野への障害が一致しているのを確認して経過をみていくんですね。一番多い上側からできた視野変化は鼻上側から始まり、中心を避けるようにして視野が変化すすんでいきます。
典型的な緑内障の視野はこのように中心を避けるようにして外側から変化していきます。中心を避けるというのはとても大切で、中心が障害を受けると視力に影響を及ぼします。典型的な緑内障の視野は中心を残すようにして障害を受けることが多いので最後まで視力は残ることが多いというのも緑内障の視野障害の進み方のポイントになります。
3つ目のポイントは中心を避けて変化が進むことが多いので最後まで視力は残りやすい。というのが3つ目です。
このように緑内障の視野障害の仕方にはいわば決まりがあります。上側が多くて鼻側からの欠損が多い。その欠損は耳側に広がっていくのですが中心の視力には影響がでないようにくるっと障害がおきていくんです。
これを非常に分かりやすくしているのがOCTという検査です。OCTという機械を使えばこれらが即座にわかる場合があります。緑色(図14)の部分は神経の障害が起きていない部位です。逆に赤色なら神経の障害が起きている部位です。OCTは緑内障で神経の障害が起きている部位を把握することができます。下側に赤い部位がついているなら上側に視野変化がでるはずですし、逆に上側が緑なら下側には視野変化がでないというように判定できます。また上側(図15)が赤なのに下側に視野変化がないのなら今後は視野変化が出てくる可能性があるなと思っていないといけません。
昔はこのような機械がなかったのですが、今はこのような機械を使って色づけで説明できますので患者さんにもとても分かりやすく説明できます。OCTは近視が強い方だとエラーがでたりするので今日お話したことがすべての患者さんに当てはまるわけではないのですが、多くの場合は正確な判断ができます。今回のお話をまとめますと
①視野変化は障害を受けた神経線維が反映されています
②障害を受けていない部位は視野変化は起きません。
③多いのは鼻側からの欠損で耳側に広がっていきます
④中心を避けるようにして変化していくことが多いので視力は最後まで残りやすいです
⑤近視が強くない方ならOCTという機械である程度予想できます
という5点です。視野障害にはこのような特徴があります。見える範囲に対してランダムに視野変化が起きるわけではないんですね。神経線維に沿って視野障害が起きていきます。そのなかでも上の方に視野障害がでるよりも下の方の視野障害の方が日常生活に影響を及ぼしやすいといわれています。下に欠損があると本なども見辛いし、段差に気づきにくいため転倒のリスクになりやすいからです。緑内障というとすぐに失明と直結される方が多いのですが、多くの方はこのように段階を踏んでいきます。視野の進行の仕方を知ってもらうことでどのように緑内障の経過を知ってもらえたら幸いです。