アレルギー性結膜炎に対する対策をNo17.18のブログでセルフケアとメディカルケアのお話をさせていただきました。
日本におけるスギ花粉症患者は年々増加しており、発症も低年齢化しております。東京都の検査では2000年代の調査では有病率は28.2%だったのですが、現在48.8%急激に増加していることが明らかになりました。花粉症では鼻症状と眼症状を生じますが、眼科では眼の痒みを主訴に受診されます。眼科医として指導することは二点今までお話させていただいて、一つ目はセルフケアと中心とした話でした。痒みを引き起こす原因が眼にくっついている限り症状はなかなかよくならないので、まずは不要の外出をさけ、どうしても外にでるときは花粉防御の眼鏡をする、その上つばつきの帽子もよいということが大切でした。人工涙液のようなもので眼を洗ってアレルギーを洗い流すのも効果的です。そのうえで目薬を使ったメディカルケアですね、痒みなどの症状が発症してから点眼を使用するよりも花粉情報をみて花粉飛散時期の2週間前から点眼を開始しましょうということでした。今回はアレルギー性結膜炎の根治の可能性がある免疫療法についてお話させていただきます。
アレルゲン免疫療法とは、アレルギー疾患の原因であるアレルゲンを濃度を薄めて身体に投与する治療法です。何度も抗原を身体にいれることで免疫寛容といいましてアレルギーに抵抗する身体の状態を作ることで、根治療法が期待できる治療法です。舌下免疫療法とは1日1回、舌の下に1~2分間保持した後に飲み込んで毎日少しずつ免疫をつくっていくアレルゲン免疫療法の一種です。この免疫療法というものは歴史的には100年ほどあるもので、当初は皮下免疫療法といって皮膚に注射を行う方法からはじまり有効性が確認されました。微量のアレルゲンを皮下に注射してアレルギーを克服する体質を作るというもので、日本で1960年から行われてきた方法です。ただ皮下免疫療法は注射ですので、毎回通院が必要であり何より痛みがあるという点があり中々継続困難であまりスタンダードな治療法とはなりませんでした。
ですが現在は舌下免疫療法といいまして、少量のアレルゲンを口に入れる小さいお子様でも治療できやすい方法が広がっています。もちろん注射と違いその都度クリニックに通ったり、痛みがでたりということはありません。現在スギ花粉症とダニのアレルギー症状を根本的に治すことができる唯一の治療法です。ですが、飲んですぐ治すといった速攻性のある治療法ではありません。治療期間が3~5年と根気のいる治療になります。臨床報告によるとおよそ80%の方に効果がありました。そのうちの20%の方は症状がでなくなり、残りの60%の方は症状が改善したという結果です。ただしやはり全員の方に効果があるというわけではなく残念ながら20%の方には効果がなかったという報告もされております。このスギ花粉とダニに対するアレルギーがある方のみに行える舌下免疫療法ですが、始める時期はスギ花粉の場合はスギ花粉の飛散が少ない6月から11月がスタート時期としていいです。スギ花粉が飛散して既にアレルギー症状が発症している場合に治療を行うと更にアレルギー症状が悪化する場合がありますので、飛散していないときに行う必要があります。毎年のスギ花粉やダニアレルギーで悩まれている方は花粉の時期に備えて考えられてもいいかもしれません。今後スギ花粉、ダニに以外のアレルギーの治療法が出来てきたらいいなと思っております。話は少し変わりますが、お酒は少しずつ飲んだらアルコールに慣れるということ聞いたことはないでしょうか?少量のアレルゲン源を内服してアレルギーを克服するという舌下免疫療法と何となく話が似ていますよね。ただお酒を毎日飲むとアルコールに強くなるということはありませんので注意してください。アルコールが強いかどうかは基本遺伝によって決まっています。お酒を飲んだら様々な酵素でアセトアルデヒドという物質に変わります。この物質がどのくらい体内に残るかで頭痛や吐き気などの症状を引き起こします。このアセトアルデヒドは酢酸という無害の物質に変わり最終的に体外に出ていくのですが、このアセトアルデヒドを酢酸に変換する酵素の強さは遺伝的に決まっています。すなわちアルコールを分解する力は遺伝的に決まっており、慣れで強くするものではありませんので注意してください。今回の舌下免疫療法は治療法として2014年より保険診療として行えるようになりました。速効性は期待できない治療法ですが、大きな副作用の心配が極めて少ないと言われている治療法であるのも特徴です。アレルギー症状が強く、点眼薬や内服薬での効果が少ない。治療薬がたくさんいるので、少しでも症状をよくするか、薬を減らしたい。もしくは眠気など、薬の副作用があり、勉強や仕事に支障となるので、少しでもよくしておきたい。と考えられてる方は検討してみて下さい。
(2021.5.15)