ドライアイ

ドライアイは、涙の量や質が低下することで、目の表面(角膜や結膜)が乾燥し、様々な不快な症状を引き起こす病気です。パソコンやスマートフォンの長時間使用、エアコンの効いた室内、コンタクトレンズの使用など、現代の生活環境がドライアイの増加に大きく影響していると言われています。

単なる目の乾きと軽く見られがちですが、進行すると視力低下や目の表面に傷がつき、日常生活に支障をきたすこともあります。

なぜドライアイになるの?

涙は、単に目を潤すだけでなく、目の表面に酸素や栄養を供給したり、ゴミや異物を洗い流したり、細菌の侵入を防いだりする重要な役割を担っています。この涙の質や量が低下する原因は多岐にわたります。

1.涙の量の減少
涙腺の機能低下

加齢や、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患、甲状腺疾患など、特定の病気によって涙を作る涙腺の機能が低下することがあります。

薬の副作用

一部の薬(抗ヒスタミン薬、向精神薬、降圧剤など)の副作用として涙の分泌が減少することがあります。

外的要因

時間エアコンの効いた部屋にいる、乾燥した場所に住んでいるなど、環境要因で涙が蒸発しやすくなることがあります。

2.涙の質の変化(不安定化)

涙は、主に「油層」「水層」「ムチン層」の3つの層でできています。

油層の異常

まぶたの縁にあるマイボーム腺という分泌腺が詰まったり、機能が低下したりすると、涙の蒸発を防ぐ油の層が不足し、涙がすぐに蒸発してしまいます。(マイボーム腺機能不全:MGD)

ムチン層の異常

涙を目の表面に留める働きをするムチンという成分が不足すると、涙が目の表面に安定してとどまることができません。

3.まばたきの減少
VDT(Visual Display Terminals)作業

パソコンやスマートフォンの画面を集中して見つめることで、まばたきの回数が減少し、涙が目の表面に均一に供給されにくくなります。通常のまばたきは1分間に約20回程度ですが、VDT作業中は1/3~1/4に減少すると言われています。

読書や運転

集中する作業では、まばたきが減りがちです。

4.コンタクトレンズの使用

コンタクトレンズは涙を吸収するため、目の表面が乾燥しやすくなります。特にソフトコンタクトレンズは、涙を吸い込む力が強いため、ドライアイ症状が出やすい傾向にあります。

5.その他の要因
ストレス

ストレスは自律神経のバランスを崩し、涙の分泌に影響を与えることがあります。

喫煙

煙草の煙は目の刺激となり、ドライアイを悪化させることがあります。

アレルギー性結膜炎

目の炎症により涙の状態が不安定になることがあります。

まつげダニ

マイボーム腺にまつげダニが寄生することで、マイボーム腺機能不全を引き起こすことがあります。

こんな症状に心当たりはありませんか?~ドライアイのサイン~

ドライアイの症状は多岐にわたり、人によって感じ方も様々です。一つでも当てはまる症状があれば、ドライアイの可能性があります。

  1. 目の乾き

目が乾いてパサつく感じがする。

  1. ゴロゴロする

目の中に異物が入っているような、ゴロゴロする感覚がある。

  1. 目の疲れ

目が疲れやすい、重く感じる。

  1. 目の痛み

目がヒリヒリしたり、灼熱感があったりする。

  1. 充血

目が赤くなりやすい。

  1. かゆみ

目がかゆい。

  1. 光がまぶしい

光が以前よりまぶしく感じる。

  1. 目がかすむ

物がぼやけて見える、視界がスッキリしない。

  1. 涙が出る

意外に思われるかもしれませんが、ドライアイがひどくなると、刺激に対して反射的に大量の涙が出ることがあります。

  1. コンタクトレンズの不快感

コンタクトレンズが張り付くような感覚や、装着時の不快感が強い。

  1. 朝、目が開けにくい

朝起きた時に、目が乾燥して開けにくい。

これらの症状は、一時的なものと自己判断せず、適切な診断と治療を受けることが大切です。

ドライアイの検査と診断

ドライアイの診断には、自覚症状の問診と、目の状態を詳しく調べる検査が必要です。

問診

目の症状や、生活習慣、既往歴、内服薬などについて詳しくお伺いします。

涙液層破壊時間(BUT)検査

目の表面の涙の膜(涙液層)がどれくらいの時間で破壊されるかを調べます。涙液層が安定している時間は10秒以上が正常とされ、短ければ短いほどドライアイの可能性が高いです。

シルマー試験

涙の分泌量を測定する検査です。専用の試験紙を下まぶたの端に挟み、5分間に染み込む涙の量を測定します。

フルオレセイン染色検査

目の表面に傷があるかどうかを調べる検査です。特殊な染色液を目に点眼し、スリットランプという顕微鏡で観察します。傷があれば青く染まって見えます。

細隙灯顕微鏡検査(スリットランプ検査)

目の表面や涙の状態を詳しく観察します。マイボーム腺の状態なども確認します。

マイボーム腺機能不全(MGD)検査

目の表面に傷があるかどうかを調べる検査です。特殊な染色液を目に点眼し、スリットランプという顕微鏡で観察します。傷があれば青く染まって見えます。

眼表面の炎症マーカー検査(ラクリティ)

目の表面に傷があるかどうかを調べる検査です。特殊な染色液を目に点眼し、スリットランプという顕微鏡で観察します。傷があれば青く染まって見えます。

ドライアイの治療法

ドライアイの治療は、症状の原因や重症度に合わせて、様々な方法が組み合わされます。

1.点眼薬による治療

この段階から、黄斑に完全に穴が開いた状態になります。

人工涙液

目を潤す目的で、一時的に症状を和らげます。防腐剤フリーのものが推奨されます。

ヒアルロン酸点眼薬

涙の安定性を高め、目の表面を保護・潤滑する効果があります。

ムチン・水分の分泌を促進する点眼薬

目の細胞に働きかけ、涙の成分であるムチンや水分の分泌を促進する効果があります。

抗炎症点眼薬

目の表面の炎症を抑える点眼薬です。ステロイド点眼薬や免疫抑制点眼薬などがあります。

2.その他の治療法
涙点プラグ挿入術

涙の出口である「涙点」に栓(プラグ)をして、涙が排出されるのを防ぎ、目の表面に涙をためる方法です。シリコン製やコラーゲン製などがあります。

マイボーム腺機能不全(MGD)への治療

マイボーム腺の詰まり具合や、油の分泌状態を調べます。

眼表面の炎症マーカー検査(ラクリティ)

目の表面の炎症の程度を評価する検査です。

温罨法(おんあんほう)

まぶたを温めることで、マイボーム腺の油を溶かし、分泌を促進します。ホットタオルや市販の温めるアイマスクなどを使用します。

リッドハイジーン(眼瞼清拭)

まぶたの縁を清潔に保ち、マイボーム腺の出口の詰まりを改善します。

マイボーム腺圧迫(絞り出し)

詰まったマイボーム腺から油を直接押し出す処置です。

IPL(Intense Pulsed Light)治療

特殊な光を照射することで、マイボーム腺の機能改善や炎症の抑制が期待できる治療法です。

自己血清点眼

患者様自身の血液から作製した血清点眼薬を使用する治療法です。通常の点眼薬では効果が乏しい重症ドライアイに対して用いられます。

保護用眼鏡、保湿用眼鏡

涙の蒸発を防ぐために、特殊な眼鏡を使用することもあります。

日常生活での注意点と予防

ドライアイは、日々の生活習慣を見直すことで症状を軽減できることがあります。

DT作業時の工夫

1時間ごとに10~15分程度の休憩を挟み、遠くを見たり、目を休めたりしましょう。
意識的にまばたきの回数を増やしましょう。
モニターの位置を目の高さよりやや下げることで、目の露出面が減り、乾燥しにくくなります。
画面の明るさやコントラストを調整し、まぶしすぎないようにしましょう。

室内の環境改善

加湿器を使用して、室内の湿度を50~60%に保ちましょう。
エアコンや扇風機の風が直接目に当たらないようにしましょう。

コンタクトレンズの適切な使用

目の乾燥を感じたら、無理に装用を続けず、眼鏡を使用する日を作りましょう。
ワンデータイプなど、目の負担の少ないコンタクトレンズを検討しましょう。
医師の指示に従い、適切な洗浄・ケアを行いましょう。

目をいたわる生活習慣

十分な睡眠をとり、目を休ませましょう。
バランスの取れた食事を心がけ、特にビタミンAやオメガ3脂肪酸など、目の健康に良いとされる栄養素を意識して摂取しましょう。喫煙を避けましょう。花粉やハウスダストなど、目の刺激となるものから目を守りましょう。

目の温罨法

目の疲れを感じたら、温かいタオルなどでまぶたを温めるのも効果的です。

まとめ

ドライアイは、不快な症状を引き起こすだけでなく、放置すると目の表面に傷がつき、視力低下にもつながる可能性があります。「たかが目の乾き」と軽視せず、気になる症状がある場合は、早めに眼科を受診することが大切です。

当院では、丁寧な検査によってドライアイの原因を特定し、患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法をご提案いたします。快適な毎日を送るために、大切な目の健康を一緒に守っていきましょう。どうぞお気軽にご相談ください。

流涙

涙があふれこぼれる流涙の症状イメージ

流涙

涙があふれて目からこぼれる状態です。原因としては、涙の通り道(涙道)が詰まっていたり、アレルギーや結膜炎などで涙が増えたり、逆さまつげやドライアイで目が刺激されることなどがあります。
いつも涙目になると、目がかすんだり、目のまわりの皮膚が荒れたりすることもあります。治療は、原因に応じて点眼薬を使ったり、涙道の洗浄や手術を行うことがあります。

主な原因

  • 涙道閉塞症(涙の通路が詰まっている)
  • 目の表面の病気
    (結膜炎・アレルギーなど)
  • まつげの異常(逆さまつげ・睫毛乱生)
  • ドライアイ(涙の質に異常)
    

治療法

涙点閉塞が原因の場合

  1. 涙点プラグ:涙点をシリコンやコラーゲン製のプラグで塞ぎ、涙が鼻へ排出されるのを防ぎます。ドライアイが原因の流涙に有効です。
  2. 涙点閉鎖術:電気凝固や手術によって涙点を閉鎖します。涙点プラグで効果がない場合や、より永続的な効果を求める場合に検討されます。

涙道狭窄・閉塞が原因の場合

  1. 涙管ブジー:細い針金状の器具(ブジー)を涙道に通して、狭窄や閉塞を解除します。
  2. 涙管チューブ挿入術: シリコン製のチューブを涙道に一定期間留置し、涙道を拡張します。
  3. 涙嚢鼻腔吻合術: 涙嚢と鼻腔を直接つなぎ合わせる手術です。涙道の閉塞が高度な場合に検討されます。

眼瞼下垂・睫毛内反が原因の場合

  1. 手術: 眼瞼下垂や睫毛内反を矯正する手術を行います。

炎症が原因の場合

  1. 点眼薬: 炎症を抑えるための抗菌薬や抗炎症薬の点眼を使用します。
  2. 内服薬: 必要に応じて、抗菌薬や抗炎症薬の内服薬を使用します。

眼精疲労

長時間の作業で目の疲れ・頭痛・肩こりが続く眼精疲労のイメージ

眼精疲労

目を使う作業が多く、普通の人では疲れない作業量でも、目が疲れてしまったり、痛みがいつまでも続く状態のことです。
単なる目の疲れとは異なり、休んでも十分に回復しにくく、頭痛や肩こり、集中力の低下などの症状が現れることもあります。ドライアイ、眼鏡やコンタクトの度数不良、ストレスなどが原因となることがあり、原因に応じた対処や治療が必要です。

主な原因

  • 眼鏡やコンタクトレンズが
    合っていない
  • 遠視や老眼を放置している
  • ドライアイなど
    目の表面に疾患がある
  • 眼瞼下垂

老眼

40代以降に近くが見えづらくなる老眼の症状イメージ

老眼

40代前半から半ばくらいに起こりやすい目の老化現象で、近くにある物が見えづらくなる状態のことです。
夕方に目が疲れやすくなったり、近くを見るときのピント合わせに時間がかかるなどの症状が現れます。
そして、進行すると老眼鏡や遠近両用眼鏡を使用する必要があります。眼鏡・コンタクトの調整から多焦点眼内レンズのご相談まで、専門的な視点でサポートいたします。

主な原因

  • 水晶体の弾力性の低下
  • 加齢によるピント調節機能
    (毛様体筋)の低下
  • スマホなど近くを見る時間の増加
    (スマホ老眼)
  • 紫外線、喫煙などの生活習慣