〜読書に強いのはどっち?〜
こんにちは、真鍋眼科の真鍋です。
今回は、白内障手術で使う眼内レンズの度数設定について、多くの方からご質問をいただくテーマ、
「アイハンスは0.5D程度の焦点深度がありますよね。それなら単焦点レンズで−2.0Dと、アイハンスで−1.5Dは、近くの見え方が同じですか?」
という疑問について、医学的な視点から分かりやすく解説していきます。
これは、眼内レンズでどこにピントを合わせるかを示す焦点距離の指標です。
・−2.0D → 焦点はおよそ 50cm
・−1.5D → 焦点はおよそ 66cm
つまり、数値が大きい(−2.0など)ほど、より近くにピントが合うことになります。
アイハンス(IOL)は、通常の単焦点レンズに比べて、
・中心部分に特殊な設計がされており
・遠方に合わせた場合、中間距離(50〜80cm)が見えやすい【通常単焦点の遠方合わせ(0D)は1mぐらいまで】
・いわゆる焦点深度が広い
という特徴があります。
よく「+0.5D分くらい広がって見える」と表現されますが、これはピントが合う距離が0.5D分手前まで広がるという意味ではないので注意が必要です。
▶ 結論から言うと…
同じにはなりません。単焦点−2.0Dの方が、近くが明確に見えます。
▶ なぜか?
・単焦点−2.0Dは焦点が約50cmなので、30〜40cmの読書距離でもピントが合います。
・一方、アイハンス−1.5Dは、焦点が約66cmで、焦点深度の広がりを加えても40cmが限界ライン。
・30〜40cmを見るには、ピントが手前に足りないのです。
・「−2.0D」と「−1.5D」は焦点距離が違うため、近点(最も近くピントが合う距離)も異なります。
・アイハンスには焦点深度を広げる効果がありますが、それでも読書距離をしっかりカバーするには物足りないことがあります。
・近方を重視するなら単焦点−2.0D、中間距離重視ならアイハンス−1.5Dが適しています。
アイハンスは非常に良いレンズです。
中間距離の見え方が改善され、日常生活での快適さを高めてくれる素晴らしい選択肢です。
ですが一方で、「加入度数がある=手元まで見える」というわけではないという点には注意が必要です。
焦点が広がる設計とはいえ、近点そのものが単焦点と同じように近づくわけではありません。
そのため、「読書を裸眼でしたいのか」「スマホを見たいのか」「パソコンを快適にしたいのか」など、どの距離を優先したいのかを明確にしておくことが、後悔しないレンズ選びにつながります。気になる方はぜひご相談くださいね。