飛蚊症

2025.07.24 飛蚊症

飛蚊症(ひぶんしょう)とは?

目の前に小さな黒い点、糸くず、蚊のようなものが浮かんで見えることはありませんか?


これらの症状を「飛蚊症(ひぶんしょう)」と呼びます。視線を動かすと一緒に動く、明るい背景を見たときに目立つ、瞬きをしても消えない、などの特徴があります。
一見、ささいな症状に思えるかもしれませんが、場合によっては視力を失う恐れのある目の病気のサインであることもあります。


飛蚊症の見え方の例

・小さな黒い点や蚊のようなものが浮いて見える

・糸くず、輪っか、煙のようなものが漂っているように見える

・視線を動かすと、それらの影も一緒についてくる

・明るいところ、青空、白い壁を見ると特に目立つ

・瞬きをしても消えず、眼をこすっても変わらない

これらの“浮遊物”は、実際に目の外にあるのではなく、目の中の変化によって生じている「錯覚的な影」です。


飛蚊症の原因

飛蚊症の原因は大きく分けて以下の3つに分類されます。

生理的(加齢による変化)

人間の目の中には「硝子体(しょうしたい)」というゼリー状の透明な組織があります。
この硝子体は年齢とともに少しずつ縮んでいき、濁りやすくなります。この濁りが影を落とし、飛蚊症として見えるようになります。

特に40代以降で多くの方が経験しますが、これは加齢に伴う自然な変化で、視力に影響がなく、病的でない場合は治療の必要はありません。

後部硝子体剥離

加齢によって硝子体が縮むと、やがて網膜から自然に「はがれる」現象が起こります。これを後部硝子体剥離といいます。
この際に、網膜が一時的に引っ張られたり、刺激されたりすることで「光が走るような症状(光視症)」が出たり、飛蚊症が強くなることがあります。

後部硝子体剥離自体は多くの場合、自然な現象ですが、問題はこの過程で網膜に穴があいてしまうことがある点です(網膜裂孔)。

病的な異常による飛蚊症(緊急性あり)

以下のような病気が原因で飛蚊症が生じる場合は、早期治療が必要です。

網膜裂孔・網膜剥離

硝子体が網膜を強く引っ張ることで、網膜に裂け目(裂孔)ができたり、裂けた部分から網膜が剥がれてしまう状態です。
視野が欠ける、カーテンがかかったように見える、視力が急に落ちた、などの症状があれば緊急です。

硝子体出血

網膜や硝子体の血管が破れることで、目の中に出血が起こることがあります。糖尿病網膜症や高血圧性網膜症、網膜静脈閉塞などが原因となることもあります。
突然の黒いモヤ・視界全体がかすむなどの症状が出ます。

ぶどう膜炎

目の中に炎症が起きる病気です。感染症(ウイルス・細菌・真菌)、自己免疫疾患(ベーチェット病、サルコイドーシスなど)などが原因となることがあります。
飛蚊症だけでなく、視力低下やかすみ目、目の痛み、光に対するまぶしさ(羞明)などを伴います。


飛蚊症と関連する症状(重要なチェックポイント)

以下のような症状がある場合は、必ず早急に眼科を受診してください。


検査方法と診断

飛蚊症の原因検索として以下のような精密検査を行います。

・視力検査:視力の変化や片眼性かどうかを確認

・細隙灯顕微鏡検査:前眼部や硝子体の混濁の有無をチェック

・眼底検査(散瞳検査):網膜裂孔、出血、剥離の有無を確認

・眼底カメラ・OCT検査:網膜の断層を詳しく見る画像診断

・超音波検査(Bモード):出血や混濁が強くて眼底が見えない場合に有用


治療について

飛蚊症の治療は原因によって異なります。


よくある質問(Q&A)

Q1. 飛蚊症は治りますか?
A. 生理的飛蚊症は自然と慣れて気にならなくなる方が多いですが、完全に消えることはまれです。重度の場合や病的な原因がある場合は、治療で改善することがあります。

Q2. レーザーで飛蚊症を消す治療はありますか?
A. 一部の海外で「レーザー硝子体融解術(YAG vitreolysis)」という治療がありますが、効果や安全性に関して議論が多く、日本では一般的ではありません。

Q3. 手術で治す方法は?
A. 強い飛蚊症が長期間続き、日常生活に支障がある場合には「硝子体手術(硝子体切除術)」が検討されますが、感染や出血などのリスクもあるため慎重な判断が必要です。


まとめ:飛蚊症は軽視せず、まずは正確な診断を

飛蚊症の多くは心配のない現象ですが、なかには視力を失う原因となる病気が隠れていることがあります。
「年齢のせいかな」と自己判断せず、初めて飛蚊症を感じたとき、または症状に変化があったときは、できるだけ早く眼科を受診してください。

当院では、飛蚊症に対する正確な診断と、必要に応じた早期治療に力を入れています。