白内障手術の説明を受けると、
「あなたは近視だから −3D になりますね」
「当院では 0D(正視合わせ) のみです」
そんなふうに、0Dか−3Dかの“二択”を迫られるような説明を受けたという方もいらっしゃいます。
でも、眼内レンズ(IOL)の度数って、本当にその二択しかないのでしょうか?
今回は、白内障手術で非常によく聞かれるこのテーマ
「度数は0Dと−3Dしか選べないのか?」
について、わかりやすく解説していきます。
まずは基本から確認しておきましょう。
・0D(±0.00D)とは、遠く(5m以上)にピントが合う状態。多くの人にとって「よく見える目」の代表。
・-3D(−3.00D)とは、近く(30〜40cm程度)にピントが合う状態。いわゆる近視の目です。
白内障手術では、眼内レンズの度数をどう設定するかで、手術後の見え方が大きく変わります。
そして実際の診療現場では、「0Dで遠くを狙うか、-3Dで近くを狙うか」という“二択のような説明”を受けることが多いのが現実です。
結論から言うと――いいえ、そんなことはありません。
実際には、-1.0D、-1.5D、-2.0D、-2.5D…など、中間の度数も自由に設定可能です。
例えば-2.0Dを選べば、ピントはおよそ50cm。
パソコン作業や日常の手作業など、「近すぎず遠すぎず」の快適なゾーンです。
中間を狙うことで得られること
・読書やスマホが快適
・料理や家事が裸眼でこなせる
・メガネなしで過ごす時間が増える
「遠くも近くも完璧」というわけにはいきませんが、「裸眼でできることが意外と多い」バランスの良い度数です。
医療側の事情としては、以下のような背景があります。
・説明がシンプルで伝えやすい
・合わなかったときのリスクが比較的少ない
・患者さんの理解を得やすい
そのため、「遠くを見るか、近くを見るか」という形で提示されることが多いのです。
ですが、生活スタイルは人それぞれ。「二択」で割り切れるほど単純ではありません。
特に注意したいのは近視の方です。弱度近視から中等度の近視(たとえば-3.0D〜-6.0D程度)の方は、
「今まで近くが裸眼で見えていた」ことが、生活の快適さの一部になっているケースが多いです。
もし、いきなり0Dにしてしまえば、すべての近く作業が「老眼鏡ありき」になり、「なんか不便になった…」という印象を持たれることもあります。
以下のように、自分がどんな距離を重視するかで度数を決めていくのが理想です。
「全部を裸眼で完璧に見たい」というのは難しいですが、
“どこを裸眼で見たいか”を明確にすることで、納得のいく度数を選べます。
白内障手術は、一生に一度の大切な手術。
見え方は、術後の生活の質に直結します。
だからこそ、「0Dか-3Dか」という単純な二択ではなく、もっと自分らしい距離を見つけるべきです。
「メガネなしで、どの距離が一番見えたら嬉しいか?」
まずは、そこから考えてみましょう。
ご自身の生活スタイルに合わせた度数選びに不安がある方は、お気軽にご相談ください。当院では様々な方法で術前シミュレーションも行っております。