白内障手術は、現在では非常に安全性が高く、満足度の高い手術です。多くの方が「明るく見えるようになった」「視力が回復した」と満足されています。
一方で、実際の診療現場では、
・手術自体は問題なく終わったのに、なんとなく見にくい
・手術前より手元が見にくくなった
・結果として、手術前の方が生活しやすかった気がする
といった「後悔の声」を耳にすることも少なくありません。
こうした後悔の多くは、手術そのものの失敗ではなく、手術前の準備段階やカウンセリング不足が原因です。
この記事では、白内障手術で後悔しないために、ぜひ知っておいていただきたい6つの重要なポイントについて、眼科専門医の立場から解説します。
「先生に全部お任せします」という言葉は、一見すると信頼しているように聞こえます。しかし、白内障手術においては、この姿勢が後悔につながることがあります。
手術そのものは信頼している医師に任せるべきですが、どんな見え方を望んでいるかまで任せてしまうと、ご自身の生活スタイルに合わない結果になる可能性があります。
というのも、眼内レンズの考え方は医師によって大きく異なるからです。
・多焦点レンズは扱わない方針の医師
・単焦点レンズは遠方合わせのみと考える医師
・EDOFレンズを単焦点と同じと捉える医師
どれが正解・不正解という話ではありませんが、医師ごとに考え方が違うという事実は知っておく必要があります。
私は、コントラストを最優先に考え、単焦点レンズやPureSeeのようなEDOFレンズを第一選択とし、その上で「どこにピントを合わせるか」を徹底的に話し合うことを大切にしています。
白内障手術は家づくりと似ています。どんなに評判の良い設計士でも、「すべてお任せします」とは言わず、間取りや使い勝手を何度も相談しますよね。目の手術も基本的に一生に一度。だからこそ、しっかり話し合うことが大切です。
白内障手術は技術的な失敗が起こることはほとんどありません。そのため、「見えなくなる」といった意味での失敗はまずないと言っていいでしょう。
しかし、カウンセリング不足による『期待とのズレ』は起こり得ます。
名医を探すことよりも、
・どの距離を裸眼で見たいのか
・近く重視なら何cmを重視するのか(70cm/50cm/40cm/30cm)
・左右差をつけるマイクロモノビジョンにするのか
・スマホやパソコンを見る距離はどのくらいか
こうした点を具体的にすり合わせることの方が、満足度に直結します。
カウンセリングが数分で終わる場合は注意が必要です。見え方のシミュレーションを行い、納得いくまで確認することが重要です。
単焦点レンズというと、「遠く(0D)か、近く(−3D)か」の二択と説明を受けるケースがありますが、これは誤解です。
実際には、0D〜−2.5Dの範囲で細かく調整することができます。
当院では−3D合わせを行うことはほとんどありません。そこまで近視を残さなくても、日常生活に必要な近見は十分に確保できることが多いからです。
パソコン中心、運転中心、読書中心など、生活スタイルに合わせて焦点距離を調整することで、単焦点レンズでも眼鏡に頼らない生活が可能になるケースは少なくありません。
単焦点レンズで眼鏡を減らしたい場合、乱視矯正は非常に重要です。乱視を放置すると、どんな高性能なレンズでも本来の性能を発揮できず、
・にじむ
・シャープさが出ない
・ダブって見える
といった症状が残ります。
ただし、乱視用(トーリック)レンズはコストや手技の問題から、積極的に扱わない施設もあります。その結果、「乱視は矯正しなくてよい」と説明されることもあります。
全ての乱視が矯正が必要というわけではありませんが、乱視が強く、眼鏡やコンタクトで矯正していた方は、手術前に『乱視用レンズは必要ですか?』と確認することが大切です。
白内障は誰にでも起こる病気ですが、すべての方が今すぐ手術をする必要があるわけではありません。特に注意が必要なのが、白内障が軽い段階で、老眼目的に回折型多焦点レンズを選択するケースです。
白内障が軽い状態では、手術後にコントラスト低下を感じやすく、「手術前より見にくい」と感じてしまうことがあります。
このような場合、無理に手術を進めるよりも、様子を見る選択肢も重要です。
最後のポイントは、短期間で両眼の手術を一気に決めてしまわないことです。特に回折型多焦点レンズでは、術後に「思ったほど見えない」「くっきりしない」と感じることがあります。その状態で、すぐに反対眼の手術日が迫っているケースも少なくありません。
この場合、焦らず延期する勇気が大切です。
多焦点レンズには脳の順応が必要な側面もありますが、時間をかけても慣れないケースも実際に存在します。
私は、単焦点・多焦点いずれの場合でも、基本は片眼ずつ、特に回折型の多焦点レンズでは必ず片眼ずつ行うことをおすすめしています。
まずは効き目でない方の目から手術を行い、見え方を確認する。必要であれば、効き目の方を単焦点やEDOFレンズに変更するなど、調整できる余地を残すことが後悔を防ぎます。
白内障手術で後悔しないためのポイントは以下の6つです。
白内障手術は、名医だから、大きな病院だから安心というものではありません。
レンズの選択、手術のタイミング、見え方の希望をどれだけ共有できるかで、結果は大きく変わります。
最新機器よりも、一見アナログに見える、時間と手間のかかる丁寧な過程こそが、満足度を左右します。家づくりと同じです。
これから白内障手術を検討される方の参考になれば幸いです。