― ビビティと何が違う?向いている人・向いていない人を眼科医が解説 ―
こんにちは。
真鍋眼科の真鍋です。
今回は、比較的新しく登場した眼内レンズ
「テクニス ピュアシー(TECNIS PureSee)」
について、眼科医の立場から詳しく解説します。
「ピュアシーってどんなレンズ?」
「ビビティと何が違うの?」
「自分に向いているのか知りたい」
こういった疑問をお持ちの方に、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。
白内障手術で使われる多焦点眼内レンズは、大きく分けて次の2つに分類されます。
・回折型多焦点レンズ(パンオプティクス・テクニスオデッセイ・ジェメトリックなど)
・焦点深度拡張型レンズ(EDOF)(ビビティ・ピュアシー)
テクニス ピュアシーは、このうち
👉 焦点深度拡張型レンズ に分類されます。
・単焦点に近い自然な見え方
・コントラストが高い
・ハロー・グレア(光のにじみ)が少ない

このタイプの代表的なレンズとして、
アルコン社の ビビティ(Vivity) がよく知られています。
ビビティは登場からすでに数年が経ち、
当院でも非常に多く使用している、完成度の高いレンズです。
・遠くはとても自然に見える
・中間距離(約50cm)まで対応
・近見は老眼鏡が必要になるとされているが、実際は老眼鏡なしで生活できている方も多い
こうした実績があるため、ピュアシーが発売された当初は正直なところ、
「ビビティとあまり変わらないのでは?」
「二番煎じにならないだろうか?」
と感じていました。
しかし、臨床データが増え、論文を読み、実際に当院で使用して術後経過を見ていく中で
考えが変わりました。
「これは意外といいレンズだ」
「ビビティにはない良さがある」
そう感じるようになった最大の理由が、
ピュアシーの“なだらかな焦点深度”です。
ピュアシーは、ビビティと同様に
おおよそ50cm程度までが見やすいレンズですが、
👉 視力1.0が保たれる範囲が広い
・ピュアシー:約 −0.75D 程度まで視力1.0を維持しやすい

(参考:ビビティや単焦点が1.0の視力を維持できるのは約 −0.5D 程度まで)
一見すると「たった −0.25D の違い」に見えるかもしれません。しかし、臨床ではこの差は決して小さくありません。
白内障手術では、ほとんどの場合狙い通りの度数に入りますが、少し遠くにズレたり近くにズレたりごくわずかに屈折誤差が生じることがあります。
このとき、ビビティの場合−0.5Dを超えると
・遠方のスッキリ感が低下
・ハロー・グレアが目立つことがある
といったことがあります。一方、ピュアシーの場合
・−0.5Dを少し超えても
👉 見え方が大きく破綻しにくい
この「わずかな余裕」が、術後の安心感につながります。
この屈折誤差耐性の高さは、
マイクロモノビジョンとの相性の良さにも直結します。
左右の目に−0.5D前後の軽い度数差をつける方法です。
・優位眼:やや遠く寄り
・非優位眼:やや近く寄り
👉 両眼で見ることで、遠く〜近くまでの見える範囲を広げる考え方です。
・基本設定:0Dではありますが、
・日常生活重視なら:−0.25D程度の軽い近視残し【おすすめ】
・さらに手元を楽にしたい場合:非優位眼 −0.5D程度
少し近視側に設定しても遠方視力が保たれやすいため、マイクロモノビジョンとの相性が非常に良いと感じています。
もちろん、ビビティでもマイクロモノビジョンは可能です。
当院でも実際に行っています。ただし注意点があります。
・ビビティで −0.5D を超える設定
・屈折誤差が加わる
この条件が重なると、遠方視力低下やハロー・グレアが出やすくなる方がいます。
そのため、ビビティで −0.5D 前後を狙う場合は、屈折誤差が起こりにくいと判断できる方に限定する
という考え方が安全だと思います。
白内障手術後の目は、一生まったく同じ状態が続くわけではありません。
・加齢による角膜形状の変化
・乱視の増加
こうした変化が起こることがあります。ピュアシーは、こうした将来的な屈折変化の影響を受けにくい設計になっている点も魅力です。
次のような方には、ピュアシーは非常に良い選択肢になります。
・ハロー・グレアはできるだけ避けたい
・単焦点に近い見え方がよい
・遠くも大切
・できれば手元も少し楽にしたい
・左右差を小さく
・違和感を最小限にしたい
・見え方が破綻しにくい安心感
一方で、次のような方には
別の選択肢の方が合う場合もあります。
・読書や細かい作業を裸眼でしたい
👉 三焦点レンズの方が向くことがあります。
・硝子体注射などで治療中の黄斑疾患がある方、緑内障で広範囲に中心視野に障害がある方
👉 単焦点レンズの方が安定することがあります。
・運転を職業とする方
・美術・デザインなど精密な視覚が必要な方
👉 単焦点レンズが適する場合があります。
単焦点に近い自然な見え方と高コントラスト
−0.75D程度まで視力1.0を維持しやすい屈折誤差耐性
マイクロモノビジョンとの相性が非常に良い
最初から軽い近視残しという選択肢がとれる
将来の屈折変化にも比較的強い設計
テクニス ピュアシーは、決してビビティの二番煎じではありません。「コントラストが凄くよい」
「意外と手元も楽に見える」と感動される方が多い印象です。
度数展開も広く、強度近視の方にも選択肢になりやすいレンズです。
眼内レンズ選びの参考になれば幸いです。