緑内障の目薬の効果を倍増させる方法

2025.09.24 緑内障ブログ・症例実績

緑内障の目薬の効果を倍増させる方法

今回は「緑内障の点眼薬を正しく使い、効果を最大限に高める方法」について解説します。

緑内障治療では、毎日の点眼がとても重要です。しかし、内服薬と違って「ただ飲めば効く」というものではなく、点眼薬は使い方によって効果が大きく変わるという特徴があります。

実際、点眼していても「眼圧があまり下がらない」「思ったより効果が出ない」というケースは少なくありません。その理由は「薬が目にとどまらず、流れ出てしまっている」からです。

今回は、研究や論文のデータも交えながら、点眼薬の効果を最大限に引き出すための工夫をお伝えします。


緑内障と眼圧の関係

緑内障は、目と脳をつなぐ「視神経」が徐々に傷み、視野が狭くなる病気です。失われた視野は元に戻らないため、病気の進行を止めることが治療の目的となります。

その中心となるのが「眼圧を下げる治療」です。眼圧とは目の中の圧力のこと。この圧が高いと視神経への負担が増し、ダメージが進みやすくなります。

治療方法には、

・点眼薬

・レーザー治療

・手術
がありますが、最初に行うのは点眼薬による治療です。

ただし、点眼薬は「さえすれば必ず効く」というものではありません。正しい点眼方法を知らなければ、薬の効果は半分以下になることもあります。


点眼薬はなぜ効果が出にくいのか?

実は、点眼薬の有効成分が角膜や結膜から吸収される割合は、たった数%程度にすぎません。

多くの薬液は涙と一緒に流れて、目頭にある涙点から鼻へ抜け、最終的に体内へと吸収されてしまいます。つまり「せっかくの薬のほとんどが必要な場所に届かず流れ出ている」というのが現実です。

だからこそ、薬をいかに目にとどめるかが大切になります。


点眼効果を倍増させる5つの方法

1. 点眼は1滴だけ

「たくさん点した方が効きそう」と思う方も多いですが、それは誤解です。人の目は1滴分の半分程度しか保持できません。2滴以上入れるとすぐにあふれ出し、効果は高まりません。

むしろ薬液がまぶたの皮膚につくと、色素沈着や皮膚炎を起こすこともあるため逆効果です。

2. 点眼後は目を閉じる(閉眼)

点眼後にすぐに瞬きをすると、薬は涙と一緒に流れ出してしまいます。
研究では、点眼直後に10回以上瞬きをすると、薬の効果がほとんど出ないと報告されています。

目薬を点したら最低1分間は目をやさしく閉じること。強く力を入れる必要はなく、軽く閉じるだけで十分です。

3. 涙点を押さえる(涙点閉鎖)

さらに効果を高める方法が「涙点閉鎖」です。目頭を指で1分間押さえることで、薬が鼻へ流れるのを防ぎます。

米国眼科学会(AAO)も推奨しており、Zimmermanら(1984年)の研究では、

・閉眼だけで眼圧下降効果が 20〜35%増加

・閉眼+涙点閉鎖で 65%増加
することが報告されています。

また、涙点閉鎖を行うことで全身への薬の移行が減り、心臓や呼吸への副作用も軽減できるという利点もあります。

4. 複数の点眼は5分以上あける

複数の点眼薬を併用している方は多いですが、間隔をあけずに続けて点すと、後の薬が前の薬を洗い流してしまいます。

最低でも5分以上あけることが必要です。一般的には「水っぽい薬から、粘度の高い薬へ」の順番が推奨されています。

5. 生活習慣も大切

点眼だけが治療ではありません。生活習慣も眼圧や血流に影響します。

・睡眠不足 → 自律神経が乱れ、眼圧が上がりやすい

・ストレス → 血管が収縮し、目の血流低下につながる

・運動 → ウォーキングやジョギングは血流改善・眼圧低下に有効(ただし逆立ちはNG)

・食生活 → バランスの取れた食事が重要

緑内障は「眼圧」だけでなく「血流」や「自律神経」など全身の要因が関与しているため、生活の工夫も治療効果を安定させる土台となります。


今日からできる実践ポイントまとめ

・目薬は 1滴だけ

・点眼後は 1分間閉眼

・目頭を押さえて 涙点閉鎖

・複数点眼は 5分以上間隔をあける

・睡眠・運動・食生活も意識する


まとめ

今回の内容を一言でまとめると、

「目薬は“目にとどめてナンボ”」

点眼後のたった1分の工夫で、薬の効果は2倍、3倍に変わる可能性があります。これは、緑内障の進行を食い止め、視野を守るために患者さんご自身ができる最も強力な方法です。

緑内障は医師に任せきりにするのではなく、患者さん自身が正しい知識を持ち、日常生活に活かしていくことが大切です。