新しい緑内障点眼

2025.09.02 緑内障ブログ・症例実績

参天製薬が新しい緑内障治療薬を申請

緑内障は「サイレントキラー」と呼ばれる目の病気です。自覚症状が乏しいまま進行し、気づいたときには視野が欠けていることも少なくありません。失った視野は元に戻らないため、早期発見と眼圧を下げる治療がとても大切です。

このたび眼科領域に特化した参天製薬が、緑内障治療に向けた新しい点眼薬を2種類、日本で承認申請しました。従来とは異なる作用機序を持つ薬で、将来の治療に新しい可能性をもたらすと期待されています。


ネタルスジルメシル酸塩

・申請日:2025年7月30日

・特徴
ネタルスジルは「Rhoキナーゼ阻害剤」という新しいタイプの薬です。眼の中の房水の排出口(線維柱帯)を広げ、眼圧を下げる働きがあります。

・投与回数:1日1回の点眼で効果が期待でき、患者さんの負担が軽いのも利点です。

・追加の作用:Rhoキナーゼ阻害に加え「ノルエピネフリン輸送体阻害作用」も持ち、房水の流れや産生に幅広く働きかけるとされています。

・グラナテックとの違いは?
「グラナテック(リパスジル)」も同じRhoキナーゼ阻害薬なので「新しいグラナテック?」と思われる方もいるかもしれません。
違いとして、

✅グラナテックは1日2回必要

✅ネタルスジルは1日1回で効果が期待できる

✅ネタルスジルは追加の作用を持つ
という点で「発展型の薬」といえます。

・副作用の可能性
グラナテックと同様に主に結膜充血が比較的多く報告されています。


セペタプロスト

・申請日:2024年9月26日

・特徴
セペタプロストは「FP受容体」と「EP3受容体」という2種類に作用する新しいタイプのプロスタグランジン点眼薬です。
従来のPG点眼薬(ラタノプロストやタフルプロスト)はFP受容体だけに働きますが、セペタプロストは二重作用を持つため、より強力で持続的な眼圧下降が期待されています。

・既存薬との位置づけ
プロスタグランジン系には、FP受容体作動薬のほかに**EP2受容体作動薬であるエイベリス®(オミデネパグ イソプロピル)**があります。
エイベリスはFP受容体には作用せず、EP2受容体だけに選択的に働き、線維柱帯からの房水流出を改善します。そのため、まつ毛の伸びや虹彩色素沈着などFP系特有の副作用が少ないのが特徴です。
セペタプロストはこのどちらとも異なり、FP+EP3受容体に同時に働くことで新しい眼圧下降効果が期待される薬といえます。

・副作用の可能性
従来のPG点眼薬と同じく、結膜充血・眼のかゆみ・虹彩の色素沈着・まつ毛の伸びなどが出る可能性があります。臨床試験では局所の違和感や軽度の炎症が報告されています。


今後の展望

どちらの薬も現時点では「承認申請中」であり、まだ実際の診療では使えません。承認されれば、緑内障治療の幅は大きく広がり、より多くの患者さんに適した薬を選べるようになるでしょう。

緑内障は長期にわたる治療が必要です。点眼回数が少ない薬、副作用が少ない薬、より強力に眼圧を下げられる薬は、患者さんにとって大きな助けになります。


まとめ

・緑内障は「サイレントキラー」と呼ばれる自覚症状の少ない病気。

・参天製薬が2種類の新薬を国内承認申請中。

✅ネタルスジルメシル酸塩:グラナテックの発展型、1日1回投与、複合作用あり。副作用は結膜充血、まれに角膜混濁。

✅セペタプロスト:FP+EP3受容体に作用する新しいPG誘導体。副作用は結膜充血、色素沈着やまつ毛の変化など。

既存薬の位置づけ:

・従来PG:FP受容体作用

・エイベリス:EP2受容体作用のみ(FPには作用しない)

・セペタプロスト:FP+EP3作用という新しい組み合わせ

実用化されれば、治療の幅と選択肢が大きく広がる見込み。