白内障手術では、濁った水晶体を取りのぞき、代わりに「眼内レンズ」を入れます。
近年は「多焦点眼内レンズ」といって、遠くも近くも見やすくなるタイプを選ぶ方が増えています。
その中で、2025年に海外ですでに登場している最新モデルが 「パンオプティクス プロ(Clareon PanOptix Pro)」 です。
これは従来の「パンオプティクス」を改良した、次世代の多焦点レンズです。
・三焦点レンズ
遠く(運転・景色)、中間(パソコン・料理)、近く(読書・スマホ)の3つの距離にピントを合わせられるよう設計。
・回折型レンズ
レンズの表面に「同心円状のリング」が刻まれており、この仕組みで光を3つの距離に分けています。
従来のPanOptixには、ENLIGHTEN® technology という光学設計が使われていました。
これは「光の余り」を上手に振り分けて、中間距離(60cm)を見やすくする工夫です。
ただし、
・光の利用効率は 約88%
・残り12%は散乱して「にじみ」や「まぶしさ」の原因になる
という課題がありました。
パンオプティクス プロには ENLIGHTEN® NXT という改良型の設計が導入されました。
レンズ表面の「リング(回折ステップ)」の高さや配置が見直され、光の配分がより精密になっています。
その結果:
・光利用効率が 94%に向上
・散乱光が 約半分(6%)に減少
・暗い場所でも明るくクリアに見える
・夜のハロー・グレア(光の輪やまぶしさ)が軽減
・コントラスト感度(物の輪郭のはっきりさ)が約16%改善
つまり「光の無駄を最小限にし、より自然で快適な見え方」を実現したのがProです。
アメリカやヨーロッパでは臨床試験が行われています。
・比較試験(約160人)
従来のPanOptixと比べ、Proの方が夜間視力やコントラストで優れている結果が出ています。
・大規模試験(320人、進行中)
Pro、従来PanOptix、さらにPro+Vivity(別のレンズ)の組み合わせを比較する研究も進んでいます。
→ 2026年に結果がまとまる予定です。
・夜の運転がしやすくなる
光のにじみやまぶしさが減り、ライトが見やすい。
・パソコン作業が快適に
中間距離の見え方が改善され、長時間でも疲れにくい。
・読書やスマホも自然に
近方のピントが安定し、老眼鏡に頼らなくても済む場合が増える。
・ハローやグレアは完全にゼロではありません。
・網膜や視神経に病気がある方では、効果が十分に出ないことがあります。
・新しいレンズのため、10年単位の長期成績はこれからです。
アメリカでは2025年5月から販売開始。
日本では 未定です。
パンオプティクス プロは、従来の課題だった「光のロス」や「夜間のにじみ」を大きく改善した、次世代の多焦点眼内レンズです。
・眼鏡に頼らず生活したい
・夜間運転やパソコン作業を快適にしたい
という方にとって、有力な新しい選択肢となるでしょう。
ただし万能ではありませんので、手術前にしっかり医師と相談し、ご自身の目に合ったレンズを選ぶことが大切です。