2026年注目の多焦点眼内レンズ

2026.01.29 白内障ブログ・症例実績

今回は2026年注目の多焦点眼内レンズについてお話しいたします。

白内障手術で多焦点眼内レンズを検討されている方から、「最近レンズの種類が多すぎて違いがよく分からない」とか「将来のことまで考えるとどんなレンズを選んだらいいのか」というような相談を受けることが増えてきました。

多焦点眼内レンズに限った話ではありませんが、手術直後の見ええ方をどの程度維持できるか」「生活スタイルの変化によってどのような見え方が適しているのか」という視点もとても重要になっています。

今回は、そういった点も踏まえながら今年注目の多焦点眼内レンズについてお話しいたします。

まず最初に、眼内レンズについて簡単に確認します。

現在、保険診療で使用されている眼内レンズは、主に単焦点レンズです。
単焦点レンズは、その名前の通りピントが合う範囲が限定されるレンズです。

例えば、

遠くにピントを合わせると、手元を見るためには老眼鏡が必要になります。
逆に、手元にピントを合わせると、遠くを見るときには眼鏡が必要になります。

そのため術後は眼鏡が必要になりますが、その代わりにコントラストはどのレンズより高くて、非常にクリアな見え方が得られるという大きなメリットがあります。

それでも「できるだけ眼鏡を使いたくない」という方のためにあるのが、多焦点眼内レンズです。

大きく分けて2つのタイプがあって、回折型と焦点深度拡張型というものです。

回折型レンズは、

レンズの中心部に同心円状のグルグルとした構造があって、光を遠方・中間・近方と振り分ける仕組みになっています。遠くから近くまで幅広く見える一方で、光を振り分ける影響のため
・コントラストの低下
・ハロー・グレア(夜間の光のにじみ)
といった症状が出やすいという特徴があります。

一方、焦点深度拡張型レンズは、

このような回折構造を持ちません。
光を振り分けずにピントの合う範囲をなだらかに広げる設計になっています。

回折型と違って、

・コントラストが非常に良好
・ハロー・グレアがほとんど出ない
・見え方がとても自然

という大きなメリットがあります。
ただし、回折型レンズと比べると、近くの見え方はやや弱いという唯一の欠点があります。

「自然な見え方を重視したい」「近くは老眼鏡を使っても構わない」という方にとっては、非常に良いレンズです。

テクニス ピュアシー

最近、焦点深度拡張型眼内レンズの中で、当院でも特に人気が高いのが「テクニス ピュアシー」です。

テクニス ピュアシーは、2025年6月にジョンソン・エンド・ジョンソン社から発売された眼内レンズです。
一般的な単焦点レンズでは、遠方にピントを合わせて0Dを狙った場合、実用的にピントが合う範囲はおおよそ前後1D程度とされています。
これを距離に換算すると、明瞭に見える範囲はせいぜい約1m程度までになります。

一方、テクニス ピュアシーでは、おおよそ2D程度の焦点深度が得られるとされています。
これは距離に換算すると、約50cm付近まで視認性が保たれることを意味します。

そのため運転やテレビといった遠方視だけでなく、パソコン作業、料理や家事といった中間距離まで

幅広い生活の場面で通常の単焦点レンズよりも眼鏡の依存が少なくなるというメリットがあります。

一方で、40cm前後でのスマホや細かい文字の読書といった近見作業については、老眼鏡が必要になることもあります。
ただ、実際ピュアシーで手術された患者さんからの話を聞いていると、40cm程度まで距離を取れば見える方が多くて、多少見えにくさを感じても、フォントを大きくすることで日常には支障が出ない方が多い印象です。

テクニス ピュアシーの最大の特徴は、

屈折誤差耐性が非常に高い点です。

屈折誤差とは、本来狙った度数からわずかにずれてしまうことをいいます。
たとえば、0Dを狙ったにもかかわらず、−0.5Dにずれて入ってしまう、といったケースです。

現在は白内障手術の計算式や機械が非常に進歩しているので、通常は大きくずれることはほとんどありません。
ですが、例えば過去にレーシック手術を受けている方などでは、まれに屈折誤差がでることがあります。

そのような場合でも、ピュアシーはピントが合う範囲の山がなだらかに広がる設計になっているので、度数が多少ずれても見え方が急激に悪化しにくいという特徴があります。

これは手術を行う医師側にとってのメリットじゃないかと言われてしまうかもしれませんが、患者さんにとっても非常に大きなメリットがあります。
2つあって

1つ目は年齢による変化への対応力です。

人の目は、白内障手術後の状態が一生続くわけではありません。
加齢とともに角膜の形は少しずつ変化して、その結果として、乱視が増えることがあります。

ピュアシーは屈折誤差に強い設計になっているので、こうした加齢による屈折の変化や乱視の増加に対しても比較的影響を受けにくいという特徴があります。
「今だけでなく、将来も安定した見え方を維持しやすいレンズ」と言うことができます。

2つ目のメリットはマイクロモノビジョンとの相性の良さです。

左右にごくわずかな度数差をつけて、見える範囲を広げる方法をマイクロモノビジョンといいます。ピュアシーは焦点深度がなだらかに広がる設計なので、
ピントを少し手元側に寄せても、遠方視力を大きく低下させることなく、近見視力を改善しやすいという特徴があります。具体的には、優位眼をしっかり遠方に合わせ、近くが少し見にくいと感じる場合に、非優位眼、効き目でないほうの目をわずかに手元寄りに設定することで、両眼で見える距離の幅を広げるという戦略が立てやすくなります。

また、同社から発売されているテクニスオデッセイなどの回折型レンズとミックス&マッチといって片目ずつ違うレンズをいれるという選択肢もありますので、様々な選択が可能です。

ビビティ

もう1つの焦点深度拡張型レンズは、多くの方ご存知だと思いますが、ビビティです。 ビビティは、アルコン社の眼内レンズで2023年から発売されています。まだまだ今年も人気だと思います。ピュアシーと同じく、遠方から中間距離までなだらかで自然な見え方が維持されるよう設計されています。こちらも焦点深度は約2Dおおよそ50cmまで焦点が合う設計になっています。ピュアシーとの違いは何かという点が気になるかたも多いと思います。ビビティの方が近見が出やすいという話をよく聞きますが、私の実臨床の感覚では、ほぼ変わらないなという印象があります。実際、

最近のピュアシーとビビティの比較論文がでたのですが、それをみると両者近見も遠見もほぼ互角です。

近見に関してはピュアシーの方がよいという結果がでています。どちらも甲乙つけがたい素晴らしいレンズだと思います。

テクニス オデッセイ

次に、回折型の眼内レンズについてお話しします。わりと最近登場した新しい回折型レンズの代表例が、テクニス オデッセイです。

テクニス オデッセイは、以前高い人気があったテクニス シナジーの後継レンズにあたります。
シナジーは約33cm程度まで見える強い近方視が得られる一方で、近方を重視した分ハローやグレアが強く、夜の運転にはやや不向きという欠点がありました。

オデッセイはこの点を改良して、回折構造の段差を低くし、形状をよりなめらかにすることで、ハロー・グレアを大きく軽減しています。
近方視はシナジーほど強くはなくて40cm程度までとされていますが、日常生活における実用性は十分だと思います。

オデッセイは、ピュアシーと同様に屈折誤差への耐性が比較的高い眼内レンズです。
そのため、先ほどと同じように加齢に伴って角膜が変化して乱視がでてきた場合でも、見え方が大きく崩れにくい設計と考えられます。

ただし、屈折誤差耐性があるからといって、回折型レンズがモノビジョンに適しているというわけではありません。
回折型レンズでは、単焦点レンズやピュアシーやビビティといったレンズと違って左右に度数差をつけるモノビジョンは推奨されません。

一方で、先にご紹介したピュアシーとのミックス&マッチは、よい組み合わせです。
ピュアシーで遠方の見え方を確保して、オデッセイで近方視を補助することで、両者のメリットをバランスよく活かすことができます。

ハロー・グレアについては、オデッセイはハローが多少出やすいので、まずは利き目ではない方の目から手術されるのがおすすめです。
術後に夜の見え方があまり気にならなければ、利き目にも同じオデッセイを選択するといいと思います。

一方で、もし見え方に違和感や辛さを感じるようであれば、利き目にピュアシーを選択することで、両眼で見た際のハロー・グレアがかなり軽減されることが期待できます。これが逆の組み合わせだとあまり効果は期待できないので、まずは効き目でないほうの目から手術するというのが私としてはおすすめです。このようなレンズは基本は両眼同日でしないということもポイントになります。

利き目にどのレンズを選択するかは、術後の満足度に大きく影響します。特に多焦点の場合は効き目でない目からの手術がよいです。
眼内レンズの選択は、左右の目の役割まで含めて検討することが重要です。

パンオプティクス プロ

そしてまさに今年度、

注目されている新しいレンズがパンオプティクスプロです。パンオプティクス プロは、従来のパンオプティクスを光学的に改良した次世代の三焦点眼内レンズです。オデッセイと同じく回折型のレンズの新しいモデルです。
従来型には ENLIGHTEN® technology が採用されていて、回折によってできる光を効率的に再配分することで、中間距離(約60cm)の見え方を高める工夫がされています。

多くの回折型の多焦点眼内レンズでは、中間距離のピークが約80cm前後に設定されていることが一般的ですが、パンオプティクスでは日常生活で使用頻度の高い約60cmを中間距離としています。この点を海外では評価されていて医学・薬学分野のノーベル賞とも称される「プリガリアン賞(Prix Galien)」を受賞しています。日本人の生活スタイルにより適した距離設定である点が大きな特徴です。

ただし、

・光の利用効率は 約88%

・残り12%は散乱して「にじみ」や「まぶしさ」の原因になる

という課題がありました。

パンオプティクス プロには ENLIGHTEN® NXT という改良型の設計が導入されています。レンズ表面の「リング」の高さや配置が見直され、光の配分がより精密になっています。

その結果:

・光利用効率が 94%に向上

・散乱光が 約半分(6%)に減少

・夜のハロー・グレア(光の輪やまぶしさ)が軽減

・コントラスト感度(物の輪郭のはっきりさ)が約16%改善

つまり「光の無駄を最小限にし、より自然で快適な見え方」を実現したのがパンオプティクスプロです。

三焦点眼内レンズの中でも、光利用効率が比較的高いことが大きな特徴です。

従来の三焦点眼内レンズでは、光利用率は一般的に90%弱のものが多いのですが
パンオプティクスプロはおおよそ94%程度の光利用率を実現しています。
これは実はかなり高いです。インテンシティのような自費の眼内レンズと同等レベルで、三焦点レンズの中では大きな進歩と言えます。

光利用率が低いということは、本来目の中に入るはずの光が十分に利用されていないということを意味します。
利用されなかった光は、反射や散乱によってハロー・グレアの原因となったり、
コントラストの低下につながります。

さらに重要なのは、長期的な影響です。
目は加齢とともに瞳孔は小さくなって、光を受け取けとる力も低下していきます。

そのため、光利用率の低いレンズは、術後すぐは満足できても、高齢になる見え方の不満が出やすくなる可能性があります。

そういった点からも、今回新しく出てくるパンオプティクスプロは将来的にも良い視機能を維持しやすいレンズといえます。

ギャラクシー

そして最後にご紹介したいのがギャラクシーです。ギャラクシーは、これまでの多焦点眼内レンズとは設計が大きく異なる次世代の眼内レンズです。
従来の多くの多焦点眼内レンズが同心円状の回折構造を採用しているのに対して、ギャラクシーではスパイラル構造になっていて、さらにAIを用いて光の配分が最適化されています。

この設計により、焦点の移行が非常になめらかになり、従来の多焦点レンズで問題となりやすかった夜間のまぶしさやハロー・グレアがほとんどない点が特徴です。

近方は、

約40cm程度まで、遠方からスマホやパソコンまで幅広い見え方が可能です。
近方の見え方については、パンオプティクスプロやテクニスオデッセイといった三焦点レンズほどではありませんが、ビビティやピュアシーよりは近くが見やすいという位置づけのレンズと考えると分かりやすいかと思います。

自費診療の眼内レンズにはなりますが、見え方の質や自然さを大事にしていてできるだけ手元までしっかり見たいと考えている方にとって、非常に魅力的な選択肢のひとつと言えるレンズになります。

眼内レンズ選びで是非考えてほしいことは、「今どれだけ見えるか」だけではありません。加齢による目の変化、仕事されている方であれば退職されたのちの生活の変化も含めて、「生涯快適に使い続けられるか」という視点が重要です。

レンズの選択に絶対的な正解はありませんが、レンズの特徴を正しく知ることで、後悔の少ない選択ができます。レンズの特徴をしっかり知って頂いて選んでいただけたらとおもいます。今回の話をまとめますと

・多焦点眼内レンズ選びは、「今の見え方」だけでなく「将来も快適か」が重要
・光利用率が、夜間の見え方やハロー・グレアに影響します。
・ピュアシー・ビビティといった焦点深度拡張型は見え方が自然で、やや近方にずらすことも可能です。3焦点とのミックス&マッチもよい選択です。
・三焦点(パンオプティクス プロ・オデッセイ)は眼鏡を減らしたい方向けですが、効き目でない目から手術して見え方を確認しましょう。
・ギャラクシーは自然さと実用性のバランスが取れた次世代型レンズです。

という5点です。

多焦点眼内レンズは年々新しいレンズが登場してきています。究極をいうと、遠くから近くまでコントラストもよくハローグレアもないレンズとなりますが、そういったレンズは現状ないです。なので、どのレンズを選ぶか特徴を知って選択することになります。今回は多焦点の話を中心にしましたが、もちろん単焦点レンズの検討も忘れないでください。

今回は2026年に注目したい多焦点眼内レンズについてお話しいたしました。