緑内障の治療は基本的に「目薬で眼圧を下げること」が中心になりますが、眼圧だけでは説明できないことがあるため、病気の進行にはいろいろな要因が関わっていると考えられています。
たとえば「目の血流の状態」であったり、酸化ストレスといいますが「体の中で起きるサビ」、さらには「神経がエネルギー不足になること」といったことも、病気の進み方に影響しているとされています。
そのため、適度な運動や食生活の工夫といった日常の習慣も大切なんですが、今回ご紹介するのが、「カレー」です。色々食事がある中で、なぜカレーなのかというと実はスパイスや野菜、豆、鶏肉といった素材が、最新の研究で注目されている“神経の保護や血流サポート”につながる可能性が報告されているからです。今回は緑内障にお勧めのカレーについてお話しいたします。
緑内障の予防や進行をゆるやかにするためには、健康的な食事も大切なポイントのひとつになります。なかでもカレーは好きな方が多い料理ですが、皆さんは普段どんな食材を入れていますか?
実はカレーに使われるスパイスや野菜、豆、魚、鶏肉などには、緑内障の進行を抑える可能性がある栄養素がたっぷり含まれています。
まず注目したいのは ターメリックです。

「ターメリックって何?」と思われる方もいるかもしれませんが、

実はカレーのあの黄色こそがターメリックの色です。パッケージの原材料欄に「ウコン」と書かれているのがターメリックです。
ターメリックには クルクミン というポリフェノールが含まれていて、これがカレーのあの鮮やかな黄色の正体です。クルクミンは強い抗酸化作用や抗炎症作用など様々な効能をもつ天然素材とされています。そのため、カレーといったらインドだと思いますが、インドでは古くから「万能薬」として料理や伝統医学に広く利用されてきました。
目に関しては

基礎研究が中心ではありますが、報告からはターメリックに含まれる「クルクミン」には抗酸化、抗炎症作用により、神経を守る働きがあるとされていて、緑内障の進行を和らげる可能性を報告しています。
このターメリックは、カレー粉やルーにすでに基本スパイスとして含まれているので、特別に意識しなくても普段カレーを食べるだけで自然に取り入れることができます。ただし、クルクミンはそのままでは体に吸収されにくいことが知られています。
一方で、

黒胡椒に含まれる「ピペリン」と一緒に摂ると吸収率が20倍以上に高まるという報告があります。ですので、カレーを食べるときは黒胡椒を少し効かせることが、組み合わせとしてのポイントです。
入れすぎると味が分からなくなるので、最初は少なめにして味見をしながら調整するのがおすすめです。
最近は、このような“天然の抗酸化成分”を含む食品が、緑内障の進行に影響する可能性を示す研究が増えてきています。たとえば、大規模な疫学研究【図5】では、食事全体の抗酸化バランスが高い人ほど緑内障のリスクが低かったとされています。つまり、ターメリックに限らず、さまざまな食材をバランスよく組み合わせることが大切ということになります。
カレーに追加する具材でおすすめは何かというとまずほうれん草、小松菜といった葉物野菜です。
①緑葉野菜(ほうれん草・小松菜・ケール)
葉物野菜を

たくさん食べていた人は、あまり食べなかった人に比べて、緑内障になるリスクが20〜30%も低かったという報告がされています。特に、視野の中心部分に影響が出やすいタイプの緑内障では、このリスクがさらに顕著に低かったとされています。
なぜ緑葉野菜がこれほど目の健康に役立つのかというと、そこには硝酸塩という成分が関係していると考えられています。硝酸塩は体のなかで一酸化窒素に変化して、目の血管を広げて血流を良くしてくれる作用があります。血流がスムーズになると、目に十分な酸素や栄養が届いて、緑内障の発症や進行を抑える手助けになるのではないかと期待されています。
さらに、葉物野菜には「ルテイン」も豊富に含まれています。ルテインは黄斑部に多く含まれている栄養素で、目の健康に欠かせない成分です。ルテインは脂溶性といって脂と一緒にとると吸収率が高まるので、カレーとの相性もいいといえます。
ほうれん草、小松菜、モロヘイヤなど、身近な野菜ではないでしょうか。
②鶏むね肉
次におすすめな具材は鶏肉や魚です。これらも、カレーに取り入れたい優秀な食材です。
鶏むね肉は、脂肪が少なくて高たんぱくな食材なので、体づくりにぴったりの食材です。ただそれでけではなくビタミンB群が豊富で、とくにビタミンB3を多く含みます。近年の研究では、このビタミンB3、緑内障に対する研究で注目されています。ビタミンB3のナイアシンはミトコンドリアの働きを助けて、神経の機能をサポートすることで、視野の改善に関わる可能性があると報告されているからです。
このナイアシンに

関する研究は現在も世界各地で進められていて、いまも複数の国で臨床試験が行われています。これらの試験結果が出てくれば、「ナイアシンの補給が実際に緑内障に有効かどうか」がよりはっきりしてくると思います。サプリなどで試されているかたもいるかもしれませんね。
一方で、サバやイワシ、サンマといった青魚には「EPA」や「DHA」と呼ばれる体に良い脂がたっぷり含まれています。これらは動物の油と違って、血液をサラサラに保って、血管の炎症を抑える働きがあります。そのため心臓や脳の血流を守る効果が期待されていて、眼の奥の細い血管にも良い影響を与えると考えられています。
特にEPAは「抗炎症作用」が強くて、血管の詰まりを防ぐ役割が注目されていますし、DHAは脳や網膜に多く含まれる成分で、神経の働きを助ける重要な栄養素です。
緑内障に関係するといわれる血流の問題や慢性的な炎症をサポートしてくれる可能性があります。
③玉ねぎ(ケルセチン)
次に玉ねぎです。カレーに入れる方も多いのではないでしょうか。玉ねぎには「ケルセチン」と呼ばれるポリフェノールが含まれています。ケルセチンには、体をサビつきから守ったり、血管を元気に保つ働きがあります。実際、

緑内障の動物モデルでは、ケルセチンが網膜の神経細胞を守り、酸化ストレスや炎症をやわらげる作用が報告されています。加熱しても効果が残りやすいのも魅力です。
④ひよこ豆(植物性たんぱく・食物繊維)
次に豆類です。ひよこ豆やレンズ豆、大豆などには、ビタミンB群やマグネシウムといった体に大切な栄養がたっぷり含まれています。
先ほどお話しした ビタミンB3(ナイアシン) も豊富に含まれています。
豆を食べることで、血糖値が安定しやすくなったり、腸内環境が整ったり、血管の健康を守ることにもつながります。豆は目のためだけでなく、体全体の健康にも良い影響を与えてくれる食材です。
⑤キノコ類
次にキノコ類も、目の健康を考えるうえで見逃せない食材です。マッシュルームやしいたけ、エリンギ、舞茸などには、ビタミンB群やビタミンD、さらに体をサビから守る抗酸化成分が含まれています。中でも

舞茸にはナイアシンが多く含まれていて、ナイアシンのよい供給源となります。
⑥トマト(リコピン)
トマトもおすすめです。トマトには「リコピン」という強力な抗酸化作用を持つカロテノイドが含まれています。酸化ストレスは

緑内障の視神経障害に深く関わるとされていますが、この酸化ダメージを抑えるリコピンは神経保護の観点から注目されています。
リコピンは脂溶性で油と一緒に摂ることで吸収率が高まります。同じくカレーと相性がよい食材となります。
⑦サフラン(クロシン)
おまけ程度にサフランを加えるのもおすすめです。サフランに含まれる「クロシン」には

抗酸化作用や血流改善作用があって、実際の臨床試験でも眼圧下降や視神経機能の改善が指摘されているからです。開放隅角緑内障の患者さんに対して、クロシン1日あたり15 mgを4か月投与した試験で、クロシン投与群で眼圧下降傾向および進行抑制の可能性があると報告されています。もちろん、カレーに入れるのはほんのひとつまみ程度ですが、それだけでも香りや彩り(いろどり)が増すだけでなく、目にもやさしいスパイスを取り入れる工夫になります。
「そこで今回おすすめするカレーのレシピはこちらです。」
・鶏むね肉 200g(ナイアシン豊富)
・玉ねぎ 1個(ケルセチンで抗酸化)
・ほうれん草 200g(硝酸塩で血流サポート)
・ひよこ豆 50g(植物性タンパク・食物繊維)
・マッシュルーム 100g(B群ビタミン)
・トマト缶 1/2缶(リコピン)
・カレー粉(ターメリック)+黒胡椒(クルクミンの吸収アップ)
・サフラン少量(クロシン)
・ご飯は雑穀米
作り方はとてもシンプルです。まず玉ねぎをしっかり炒める。次にトマトを加えて、その後に鶏肉・豆・キノコなどの具材を加えて煮込んで終わりです。最後に黒胡椒とサフランを少し加えてください。ご飯は玄米や雑穀米がおすすめです。食物繊維が多いので血糖値の上昇がゆるやかになります。
注意点としては、カレーがいいといってもじゃがいもや白米だけといった炭水化物に偏ったカレーや、揚げ物のトッピングには気をつけたいところです。特にカツや唐揚げなどをのせたカレーは、どうしても酸化した油を多く摂ることにつながります。
もちろん、時々楽しむ程度なら問題はありませんが、酸化した油は血管や神経にダメージを与えて、視神経への酸化ストレスを強める可能性があるとされています。
また、当たり前ではありますが「毎日カレーを食べましょう」と言っているわけではありません。市販のカレーのルーには塩分や油が多いので、毎日食べると健康面でデメリットになりかねません。あくまで「カレーを食べるときに、このような食材の工夫を少し意識するといいですよ」ということになります。
ルーを選ぶときにも「減塩タイプ」や「油分控え」のものを使ったり、スパイスがあらかじめブレンドされたカレー粉を使うと、より健康的に取り入れることができます。
あくまで補助的な工夫として、日々の食事に無理なく加えていただければと思います。
【まとめ】
スパイスの力
・ターメリックの「クルクミン」には神経保護作用が期待されていて、黒胡椒の「ピペリン」と一緒に摂ると吸収率が大幅にアップします。
・緑葉野菜で血流サポート
ほうれん草・小松菜・ちんげんさいなどに含まれる硝酸塩が体内でNOに変換されて血管が広がって 視神経の血流改善に期待されています。ルテインも豊富で、カレーの油と一緒に摂ると吸収の効率が上がります。
・良質なたんぱく源
鶏むね肉はビタミンB3のナイアシンが豊富で神経の働きを助ける作用が考えられています。青魚(サバ・イワシ・サンマ)に含まれるオメガ3脂肪酸は血流改善・抗炎症効果に有効的です。
・抗酸化を支える食材
玉ねぎ(ケルセチン)、トマト(リコピン)、ひよこ豆(B群・食物繊維)、マッシュルーム(ビタミンB群・D)が酸化ストレスの軽減や神経保護のサポートに役立ちます。サフラン(クロシン)を少し加えるのも有用です。
・注意点と取り入れ方
「毎日カレー」ではなく、食べるときに食材を意識することが大切です。市販のルーは塩分・油が多いので、減塩タイプ・油控えめのものを選ぶと安心です。
という5点です。
「緑内障は“眼圧”だけの病気ではなく、血流・酸化ストレス・神経の代謝などが深く関係しています。そのため、日々の食事も大切で“目にやさしい工夫”を取り入れることが、進行抑制につながる可能性があります。
今回はカレーを例にご紹介しましたが、ここで取り上げたスパイス・野菜・豆・魚や鶏肉などは、カレー以外の料理でも意識して取り入れることができます。無理なく、日々の食卓に少しずつ加えていただければと思います。今回は緑内障の方にお勧めのカレーについてお話しいたしました。