2025.11.01 緑内障ブログ・症例実績

緑内障治療を続けるうえで注意したい10の生活習慣

こんにちは、真鍋眼科の真鍋です。
今回は「緑内障治療を続けるうえで注意したい10の生活習慣」についてお話しします。

緑内障の治療で最も大切なのは眼圧を下げて進行を抑えることです。
しかし、眼圧だけを見ていれば安心というわけではありません。
近年の研究では、日常生活の習慣や姿勢・食事・環境などが、進行スピードや薬の効果に影響することが分かってきています。

「きちんと点眼しているのに進行してしまう…」という方も、
生活習慣を見直すことで進行を抑えられる可能性があります。


注意したい10の生活習慣(一覧)

  1. 点眼を自己判断で中断しない

  2. 眼圧の数値に一喜一憂しない

  3. 姿勢に注意する

  4. 夜間の低血圧に注意する

  5. 水分を一気に飲まない

  6. 息を止めて力まない

  7. 食生活に気をつける

  8. カフェインはほどほどに

  9. ネクタイや首まわりを締めすぎない

  10. PM2.5が高い日は外出を控える


① 点眼を自己判断で中断しない

当たり前のようですが、非常に多いのが「途中で点眼をやめてしまう」ケースです。
国内の調査では、治療開始3カ月後で約30%、1年後には40%が治療を中断してしまい、
2年後には半分の方しか継続していないという結果があります。

緑内障の進行は視野検査のMD値(Mean Deviation)で評価します。
MD値が −0〜−6dBなら初期、−6〜−12dBで中期、−12dB以降は末期とされ、
−30dB前後になると失明に近い状態です。

さらに重要なのがMDスロープ(年あたりの進行度)です。

・−0.3dB/年以内 → 良好

・−0.5dB/年前後 → やや進行

・−1.0dB/年以上 → 進行が速い

アメリカの大規模研究(Ophthalmology誌)では、週に2〜3回点眼を忘れる人は、毎日きちんと続けている人に比べて約2倍、週の半分以上忘れる人では3〜4倍速く視野が悪化していました。

つまり「週に数回の忘れ」でも、数年後に見え方の差が出る可能性があるのです。


② 眼圧の数値に一喜一憂しない

緑内障では眼圧が大切ですが、「下げること自体」が目的ではありません。
本来の目的は視野を守ることです。

目標眼圧は個人によって異なります。
20〜30%下げれば進行を止められる方もいれば、
それでも進む方もいます。

眼圧は1日の中でも変動するため、診察のたびに数値が上下するのは自然なことです。
大切なのは、「視野が安定しているか」を継続的に見ていくことです。


③ 姿勢に注意する

意外かもしれませんが、うつ伏せ・横向き・下向き姿勢では眼圧が上がります。

・うつ伏せ寝:仰向けより平均6〜8mmHg上昇

・横向き寝:下側の眼が2〜4mmHg上昇

また、スマホや読書でうつむいた姿勢を続けると眼圧が上がることも分かっています。
明るい部屋で+1.8mmHg、暗い部屋では+3mmHg以上の上昇が確認されています。

ただし、顔を上げて数分休むだけで元に戻ります。
スマホやデスクワークの合間に、15〜20分ごとに一度顔を上げる習慣をつけましょう。


④ 夜間の低血圧に注意する

就寝中に血圧が下がりすぎると、視神経への血流が不足します。
アメリカの研究では、夜間の平均血圧が日中より20%以上低い方は、
視野の進行リスクが約2.5倍になると報告されています。

特に正常眼圧緑内障の方では、血流の低下が進行要因になることも。
就寝前と起床時の血圧を測り、夜の値が20%以上低ければ要注意です。
降圧薬を使用している方は、薬の効きすぎによる夜間低血圧にも注意が必要です。


⑤ 水分を一気に飲まない

水分補給は大切ですが、一度に大量に飲むと眼圧が上がることがあります。
10分以内に1L飲むと5〜8mmHg上昇するという報告もあります。

特に入浴後や運動後、喉が渇いた状態での「がぶ飲み」は避け、
1回200ml程度をこまめに摂るようにしてください。


⑥ 息を止めて力まない

重い荷物を持ち上げたり、筋トレで息を止めると「バルサルバ効果」で眼圧が急上昇します。
これは胸やお腹の圧が高まり、静脈の血流が滞ることで起こります。

重量挙げでは眼圧が10mmHg以上上昇することもあります。
運動そのものは非常に良い習慣です。
呼吸を意識し、「力を入れるときこそ息を吐く」ことを意識しましょう。


⑦ 食生活に気をつける

葉物野菜を多く摂る人ほど緑内障になりにくく、
加工食品を多く摂る人ではリスクが約1.8倍に上がると報告されています。

ほうれん草・ケール・小松菜などの硝酸塩を含む野菜は、
体内で一酸化窒素に変わり、血管を拡げて視神経の血流を改善します。
また、ルテインも豊富で他の眼病予防にも役立ちます。

一方でスナック菓子や菓子パンなどの超加工食品は、炎症や酸化ストレスを起こし、視神経を弱らせる原因になります。


⑧ カフェインはほどほどに

日本の「長浜スタディ」では、コーヒー摂取量が多い人で眼圧がやや低い傾向がありました。
しかしイギリスの大規模研究では、家族に緑内障がある人で1日3杯以上飲むと、
発症リスクが約3.9倍高くなるという結果も出ています。

つまり、カフェインは1日3杯程度が目安です。
家族歴のある方は摂りすぎに注意してください。


⑨ ネクタイを締めすぎない

ネクタイを3分間きつく締めるだけで、眼圧が2〜3mmHg上昇するという研究があります。
これは首の静脈が圧迫され、血液の戻りが悪くなるためです。
ネクタイやマフラー、ハイネックなども少しゆとりをもって着用しましょう。


⑩ PM2.5が高い日は外出を控える

PM2.5は呼吸器だけでなく、目にも影響を与えることが分かっています。
UK Biobank研究では、PM2.5濃度の高い地域で緑内障の有病率が高く、
2021年の報告では隅角の炎症や酸化ストレスを通じて眼圧上昇を起こす可能性も指摘されています。

日本では冬から春にかけて(特に2〜4月)PM2.5濃度が高くなります。
高濃度の日は、マスクと眼鏡で目を保護しましょう。


まとめ

・点眼を自己中断しない

・眼圧の数値に一喜一憂しない

・姿勢に注意(うつ伏せ・下向き姿勢に注意)

・夜間低血圧に注意

・一気飲みをしない

・力むときは息を止めない

・葉物野菜を増やし、加工食品を減らす

・カフェインは1日3杯以内

・ネクタイや首元を締めすぎない

・PM2.5が高い日は外出を控える


緑内障は「薬や手術だけで治す病気」ではなく、
生活全体で守っていく病気です。
日々のちょっとした習慣を意識することで、
視神経を守り、見える力を長く保つことができます。

今後も真鍋眼科では、最新の研究データをもとに、
目の健康を守る情報を発信していきます。
ご覧いただきありがとうございました。