黄斑前膜の治療は、基本的に手術です。
ただし、膜があるからといって、必ずしもすぐに手術が必要なわけではありません。
膜が薄く、症状がほとんどない場合や、視力低下が軽度で日常生活に支障がない場合は、定期的に経過を観察します。網膜前膜の進行は比較的ゆっくりであることが多いため、焦らず様子を見ることも重要です。
一方で、膜が厚くなり、変視症が強い、視力が低下して日常生活に支障が出ているなど、症状が進行している場合には、手術を検討します。
OCTで黄斑前膜の有無や程度がわかりますが、
Stage.1
正常な黄斑形態(黄斑前膜はあるが視覚的な影響が出ていない段階)Stage.2
中心のへこみがなくなる(中心窩陥凹の消失し、歪みなどの症状が出てくる)Stage.3
中心に本来ない網膜の層が出て厚みが増してくるStage.4
最後は形態が破壊されてくる(網膜の層構造が消失している)と分類されており、Stage3以上だと視力予後がよくありません。
手術は「硝子体手術(しょうしたいしゅじゅつ)」という方法で行われます。
これは、目の奥の硝子体を除去し、網膜の表面にできた薄い膜を、非常に細いピンセットのような器具を使って丁寧に剥がし取る手術です。膜を剥がした後、目の状態によっては、空気やガスを注入して網膜を安定させることもあります。
手術の主な目的は、網膜の歪みを改善し、それによって視力低下や変視症の進行を食い止めること、あるいは改善させることです。特に変視症の改善は、手術によって大きく期待できます。
手術後の視力回復には個人差があり、時間がかかることもあります。膜が網膜を引っ張っていた期間が長かったり、黄斑のダメージが大きかったりした場合には、完全な視力回復が難しいこともあります。しかし、症状の悪化を防ぎ、より良い状態を保つためには、有効な治療法です。
「ものが歪んで見える」「線が曲がって見える」といった症状は、網膜前膜以外の目の病気(黄斑変性症や黄斑円孔など)でも起こることがあります。歪みなどを自覚することがあれば早めに眼科を受診し、正確な診断と適切な治療方針について医師と相談することが大切です。