今回は、よくあるご質問で「スマホや読書(約40cm)を裸眼で快適に見たい」という希望を叶えるには、
・Vivity(ビビティ)で軽い近視にずらす方法
・単焦点レンズで40cmにピントを合わせる方法
どちらが向いているのか?そして、眼科医の立場からVivityを近視にする設計はすすめられるのか?個人的見解を踏まえて詳しくわかりやすく解説します。
Vivityは、アルコン(Alcon)社が製造するEDOF(Extended Depth of Focus:拡張焦点)型の眼内レンズです。
2021年から日本でも保険診療で使用可能となり、多焦点と単焦点の“いいとこどり”を目指した設計が注目されています。
・焦点が1点ではなく連続的に伸びている設計
・遠く〜中間距離まで、自然な見え方
・コントラスト感が良く、夜間のグレア・ハローが少ない
・多焦点にありがちな「にじみ」や「わずらわしさ」が少ない
📏 見えやすい距離の目安
単焦点レンズは「ピントが合う範囲が限られた」シンプルなレンズです。
術前にどこにピントを合わせるかを決めることができるため、たとえば**スマホ距離(40cm)**に合わせると…
・40cm前後、スマホや新聞は裸眼でくっきり
・その代わり、遠くやパソコンはぼやけて眼鏡が必要
本来Vivityは正視(±0.0D)を目指す設計が一般的ですが、
あえて術後屈折を−0.25D〜−0.5D程度の軽い近視に設定することで、
見える距離を少し手前に寄せることが可能です。
・焦点の中心が45cm前後に近づき、スマホが裸眼でもある程度読める可能性
・老眼鏡を使う頻度が減る
・Vivity本来の滑らかな見え方を保ちつつ、手元も少しカバーできる
⚠ 注意点
・遠方視力が少し落ちる(特に夜間運転時)可能性
・40cmを「くっきり」は難しい。見えるようになる可能性がある程度
・あまり近視を強くすると、Vivityの特性(コントラストや遠方の見え方)が損なわれる
スマホを見ることを重視するなら、単焦点でピンポイントに40cmを狙うのがもっとも確実。
ただし、バランス重視ならVivityで軽い近視にするのも実践的な選択肢です。
Vivityは単なる「遠くが見えるレンズ」ではなく、焦点距離のアレンジによって日常生活の快適さを調整できる柔軟性のあるレンズでもあります。
自分に合ったレンズ選びのためには、FEST法などによる片目術後のシミュレーションや、医師との丁寧な相談がとても大切です。納得のいく選択で、手術後の快適な見え方を手に入れましょう。