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123. 白内障手術 後悔する人の特徴

今回は白内障手術術後に後悔する人の特徴に関してお話させて頂きます。

現在白内障手術は年間で150万人ほどされている手術です。片目でだいたい10分〜15分ぐらいで終わります。本当にやってよかった、世界が変わったと言われる方が多いです。

ですが中には「いやー友達が白内障手術したら世界が変わったと言うんで私も受けたんですけど、世界が変わるどころかかえって不便になったんですよ」

と言われる方もおられます。白内障手術は満足される方が多い一方でこのように不満をもたれる方が中にはおられます。白内障手術は人生で一度きりの手術です。後悔しないために白内障手術を受ける前に知っておきたいポイントがあります。今回は白内障手術後に後悔する人にはどのような方が多いのかということ関してお話させて頂きます。

白内障手術で後悔される方の多くは手術で失敗して見にくくなったということより、レンズの度数の設定にあることが多いです。多くの方が単焦点眼内レンズで手術されると思います。私自身も見え方がもっともクリアなレンズが単焦点眼内レンズであることから単焦点眼内レンズをすすめています。乱視があれば乱視用のトーリック眼内レンズを使うと見え方がすっきりする方が多いです。保険のレンズは見え方の鮮明さがもっともよい一方でみえる範囲が制限されます。例えば遠方に合わせた場合、裸眼で1、2m以降の遠くは見えますが、手元は老眼鏡が必要になります。一方で手元に合わせると手元は裸眼で見えますが、遠くは眼鏡が必要になります。このように焦点があった距離の鮮明さは一番いいのですが、見える距離に制限があるという特徴があります。

まず後悔する人の特徴の1つ目は自分の生活スタイルを無視した見え方を希望される方です。例えば本を読んだりパソコンをしたり手元中心の生活が多いのに、なんとなく遠くが見えた方が便利かなと思って遠方合わせを選択するといった感じです。これ結構多いです。特に近視の方は遠方視に憧れがある方が多いので、デスクワークが中心であるにも関わらず遠くを見えるようにしてほしいと言われることがあります。

遠方に合わせた場合、本を読んだり、スマホを触ったりするとき近距離用の眼鏡をしなければピントが合いません。

このことから遠方に合わせると確かに遠方視の視力は上がったけど手元がみえなくて不便になったなと後悔する原因になります。

逆もありえます。トラックの運転手のように遠方を見ることが中心の方は近方に合わせるよりも遠方に合わせた方がメリットがあるかもしれません。

ただ実際は裸眼で遠くが見えなくて困るということより、裸眼で手元が見えなくなったから困るという方の方が圧倒的に多いです。スマホをみたり、細かい字が見れなくなった事が不便だと言われる方が多い印象あります。目の事は良くわからないから先生に任せますではなくて、裸眼で遠くを見るのがよいのか、または手元をみるのがよいのか手術前にきちんと話されるのがよいと思います。


2つめは元々目がよくてまだあまり見え方に困っていないのに、友達に勧められるがまま早めに手術をする方です。目がよい方は家の中ぐらいだと眼鏡しなくても過ごされる方が多いです。例えば生活の中心がほとんど家の中という方であれば遠方の視力が0.5,0.6ぐらいしかみえないとしても近くは裸眼である程度みえていて、運転免許も返納している。

というような場合、急いで手術をせずに自分の元々のレンズを大事にした方がいいかもしれません。目がよい方は遠方合わせにすることが多いんですが、遠方に合わせると遠方視は裸眼で1.0近くみえるようになると思います。ですが、手元は老眼鏡を使わないと見えなくなります。今まで老眼鏡を使わなくてもある程度家の中では過ごせたのに今度は眼鏡をしないと手元が見えません。先生からは遠方の視力が手術前よりあがったでしょといわれるけど、前の方が便利だったんです。というように他のクリニックで手術された方からお話頂く事があります。屈折の値が-1.5D以内の軽い近視の方は注意が必要になります。この値は白内障がそれなりに進んでもある程度裸眼で過ごせる状態であることが多いからです。

現代社会はスマホ、パソコンのような近方を見ることが多いです。

すでに老眼鏡を使うことに慣れていて、術後の状態をきちんと理解できている方ならいいんですが、すすめられるがまま手術を受ける方は注意が必要です。

3つ目はとりあえず片目だけ手術される場合です。これは色々なケースが考えられますが、多いのは強度近視をそのまま残してしまうことが後悔する原因になることがあります。例えば

両眼とも-8D程度の強度近視で、片目は眼鏡したら1.0見えているけど、もう片目は白内障が強くて0.4ぐらいしかみえていない。というように視力に差が出ている場合です。手術する場合は基本両眼同じ程度の屈折の値に揃えます。

この場合、

もし片目だけ手術するとなると両眼とも-8.0Dの強度近視が残る事になります。思い切って

両眼手術して近視を弱めるのか、または少し待ってから両眼手術するのか、それとも強度近視が残る事を理解した上で片目のみ手術するのか相談して決めることになると思いますが、強度近視の方は安易に片方の目だけ手術すると今後生涯強度近視のままになるので注意してください。

白内障手術は屈折の値を変えることができる一生に一度のチャンスです。きちんと相談されて決めるようにしてください。


4つ目は強度近視の方で多焦点眼内レンズをされる方です。

手術直後は遠くも近くも見えて満足される方が多いと思いますが、何年か経ったあとに後悔する原因になることがあります。

それは強度近視の方は将来緑内障や網膜剥離、黄斑疾患などの眼疾患を患う可能性が目がよい方に比べて高いからです。強度近視の方が全員なるわけではもちろんありませんが、人生100年時代において手術したその時は何ともなくても今後どんな目の病気にかかるか分かりません。

多焦点眼内レンズをいれると遠方から手元まで見えるようになるんですが、光を遠方から手元まで分光するのでコントラストが単焦点眼内レンズより劣ります。焦点が合った部分の見え方の鮮明さは単焦点眼内レンズが一番良いです。

そのため多焦点眼内レンズは原則として白内障以外の眼疾患がない方が適応になります。

これも実際患者さんをみていて、その時は問題なかったけど術後しばらく経ってから緑内障が発症したということや黄斑変性になってしまった方が実際おられます。多焦点眼内レンズで少しコントラストが落ちている状態に眼疾患で更に見にくくなっている可能性があります。

強度近視の方は多焦点眼内レンズまで入れなくても、単焦点眼内レンズで近視の度数を弱めるだけでも十分見え方が改善します。家の中ぐらいでしたら眼鏡が不要になる事が多いです。

眼内レンズ自体は100年以上の耐久性が確認されていますが、網膜などの目の機能は100年以上耐久性があるわけではありません。年とともに耳の機能が落ちて聞こえにくくなるように、正常な方でも網膜などの神経系の感度は落ちていきます。

そういう事もあってこれだけ多焦点眼内レンズの種類が出てきた中で未だにという言い方も変ですが、特に近視の強い方は単焦点眼内レンズを推奨しています。

とにかく絶対眼鏡をしたくないということであれば多焦点眼内レンズしか選択肢がありませんが、眼鏡に抵抗がない方でしたら単焦点眼内レンズでも充分よいと思います。よければ参考にしてください。

今回の話をまとめると

①白内障手術で後悔する原因は手術の失敗より度数の設定の仕方に問題があることがほとんどです。

➁裸眼で遠くを見ることが多いのか、それとも手元をみることが多いのかで度数の設定が違ってきます。

➂ある程度まだ遠くも近く見えていて生活に不自由していないのなら手術をしない方がよいかもしれません。

④特に強度近視の方は片目だけの手術に注意しましょう。

⑤強度近視の方は安易に多焦点眼内レンズを選ばない方がよいかもしれません。近視を弱めるだけでだいぶ過ごしやすくなります。

という5点です。白内障手術をしてよかったという方は手術前に色々勉強されている方に多いです。当院にも、このレンズで近方合わせにしてくださいとか、この多焦点眼内レンズは副作用が気になるので嫌ですとかこちらが聞いてびっくりするほど知っている方もおられます。ですが、このようにきちんとリサーチされている方は満足される結果になる事が多いです。目の事は分からないのでと言われる方多いんですが、医者任せにせずに希望している見え方をしっかり伝えて話を聞いてくれるクリニックを選ぶのが成功するための重要なポイントだと思います。

今回は白内障手術を後悔する人の特徴に関してお話させて頂きました。


(2023.2.10)