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111. ICL レーシック 向いている人 向いていない人

今回はICL、レーシックに向いている人向いていない人に関してお話させて頂きます。近視で悩んでいる方は多いです。患者さんからレーシックやICLを考えているんですがどう思いますか?というようによく聞かれます。私自身も近視があって近視であることで不便を感じている人間ではありますが、結局屈折矯正手術を受けずに眼鏡やコンタクトレンズをして生活しています。だからと言って皆さんに私と同じように手術をせずにコンタクトや眼鏡の方がいいですよと説明しているわけではありません。

このような状態なら検討されてもどうでしょうかとお話することも実際あります。今回はレーシックやICLをこれから検討する方に知って頂きたいポイントに関してお話させて頂きます。

レーシック、ICLは手術方法が全く異なります。

レーシック

は眼の外側からアプローチする手術です。近視や乱視、遠視の度数に合わせて角膜の一部を削って屈折異常を矯正します。角膜の形状を変えることによって焦点が合わないピントがぼけた状態から、網膜にピントが合うようになって裸眼視力が回復します。

レーシックのメリットは①視力の回復が早い、②費用がICLに比べて安い、③眼内操作がないことです。デメリットは①角膜を削るのでドライアイのリスクがある、②削る量にも限界があるので適応は-6Dまでの近視であること。③近視の戻りが若干あることです。


一方でICL

は眼内操作です。角膜を一部切開して目の中にレンズを埋め込むという方法です。ICLのメリットは①強度近視の方も含めて適応範囲が広い。②ドライアイが悪化しにくい③合わなければ最悪取り出せる。④近視の戻りの心配がないということです

デメリットは①眼内操作のリスク(感染症、白内障や角膜内皮細胞の減少、眼圧上昇)がある②費用がレーシックに比べて高額である事です。

このように両者違いがありますが、レーシックとICLの大きな違いは主に2つです。

1つ目は「眼内操作があるかどうか」です。レーシックは角膜の表面を削るので目の中にメスをいれることがありません。一方でICLは眼内の操作です。角膜を一部切開して目の中にレンズを入れるので、①術後感染症、➁角膜内皮細胞という角膜の透明性を維持するための重要な細胞が減ったり、➂白内障の進行、④眼圧が上がるリスクがあります。

昔のICLは前房型といって虹彩という部分に引っ掻けて固定するものでした。そのためこれらの頻度が割りと高めでした。今はレンズの中央に小さな穴が空いているのでこのようなリスクがほとんどないと言われていますが、全くないわけではありません。そのため、レーシックは眼内操作がない点メリットがあります。

2つ目の違いは「元に戻せるかどうか」です。レーシックは角膜を削るのでやり直しが効きません。一方でICLは最悪合わなければ取り出してもとの状態に戻す事ができます。このようにそれぞれメリットデメリットがあってレーシックとICLは違いがあります。

更に細かな違いを言うと近視の戻りがあるかどうか、ドライアイにはどちらが向いているのかといった事もありますが、共通している事もあってそれはどちらの手術も「遠方視力を改善させる事」です。遠くも近くも見やすくするといった手術ではありません。「遠方視を改善させる」という事が屈折矯正手術の目的です。そのため遠方に合わせると40歳以降老眼が起きたとき手元が見にくくなる事も知っていないといけません。

その事を含めて私は合う人、合わない人を次の4つからよくお話しています。

1つ目は年齢、2つ目は生活スタイル、3つ目は近視の度数、4つ目に目の状態、本人の性格です。

屈折矯正手術をする上でまず知っておくことは一生遠くも近くもみえるようになるわけではないということです。それは何故かというと先ほどお話した通り40歳以降老眼が発症するからです。

私たちがものを見るときは水晶体というレンズの厚みを調節してピントを合わせています。水晶体には弾力性があって、周りにある毛様体筋

という筋肉が水晶体を引っ張ったり緩めたりして厚さを調節しています。遠くのものを見るときは、毛様体筋が緩んで水晶体が薄くなります。近くのものを見るときは毛様体筋が緊張して水晶体が分厚くなります。

ところが

若いうちは弾力性があった水晶体は年齢とともに弾力性が失われて硬くなっていきます。そうなると毛様体筋がいくら緊張しても硬くなってしまった水晶体が厚くなりません。そのため近くが見にくくなってしまいます。これが老眼ですが、レーシックやICLを受けても当然水晶体の老化現象は正常の方と同じように起きます。

調節力の低下は

20歳から既に始まっているんですが、若いうちはまだ充分調節力があるので調節力の低下を感じることはありません。しかし40歳以降手元の見にくさを感じるようになるので老眼鏡が必要になります。そのため手術を検討される場合若い方ほどメリットがあります。20歳や30歳で手術を受ければ老眼が起きるまで10年から20年近く眼鏡なしの生活を送る事ができます。40歳を過ぎてからレーシックやICLをすると遠方ははっきりみえますが、手術直後から手元は老眼鏡をかけないと見えないという状態になります。老眼用のレーシックとして意図的に左右の目の屈折に差をつけて幅広い見え方を獲得するモノビジョンレーシックであったり、少し低矯正に合わせたり、ICLも老眼用のものがありますが、老眼は年齢とともに進んでいきますし、今後は白内障も出てくるので長い期間メリットはないように思います。

このように手術をされるのなら30歳前後までが1つの目安になります

そして2つ目生活スタイルです。もし仕事が運転手であったりスポーツ選手のような遠方視が必要で眼鏡が不向きな方なら屈折矯正手術は向いていると思います。レーシックやICLは遠方に合わせる手術なので遠方視をされる方には向いています。ですが生活の大半がデスクワークなど近業作業が中心の方にはあまりおすすめしません。遠方合わせは遠方視の際に最もピントがあっているんですが、遠方

にしっかり合っている状態で手元を見続けるとピントを調節する毛様体筋が緊張して水晶体をぐっと膨らましている状態が続くことになります。すなわち遠方に最もピントが合っている状態は遠方視の際には適切な状態と言えますが、パソコンやスマホといった近業作業が中心の生活であればピントを調節する筋肉がずっと緊張するので、眼精疲労の原因になります。

せっかく手術をしたのに長時間パソコンを見るのが辛い、眼鏡をして調節をサポートした方が手元が見やすいという方が実際におられます。そのため生活の中心がほとんど家のなかであったり、デスクワークが中心であるという方なら考え直した方がいいかもしれません。

3つ目、近視の値です。ー3Dまでの弱めの近視を治すのは私はもったいないと思っています。なぜかというと老眼になった時に過ごしやすい近視の値だからです。ー2やー3Dというのは裸眼でパソコンや本を読むのに適している近視の度数です。いわゆる弱度近視をわざわざ遠方に合わせて遠くがみえるようになったとしても老眼がきたら手元がみえなくなります。将来的にどっちが有利なのかというとそれぞれの生活スタイルによりますが今の現代社会は手元を見ることが多いですし、わざわざ遠方に合わせなくてもよいのかなと思います。逆に言うとー4D以上の近視の方でしたらメリットはあると思います。

最後4つ目ドライアイがあってコンタクトレンズができない方や、コンタクトをつけたままよく寝るなどきちんとした管理が出来ない方です。ICLの方はドライアイがあってコンタクトができない方にはすすめやすいです。またあまり知られていませんが、コンタクトよりもレーシックやICLの方が感染症を起こす頻度が低い事が報告されています。これは考えて頂ければ当然ですが、コンタクトは日々の管理が必要ですが、屈折矯正手術は手術受けてしまえばその後の管理が要らなくなるからです。今まで何度もコンタクトでトラブルを起こしてきた方は日々のケアが不要になる点で思いきって手術を検討されてもいいかもしれないです。

今回の話をまとめますと

①削った分の角膜は再生しないのでレーシックは術後元の状態に戻せませんが、ICLは合わなければ取り出すことができます。

②ICLは眼内操作のため眼内感染症などのリスクがあります。

③屈折矯正手術は遠方に合わせた手術なので老眼になった場合近用眼鏡が必要です。若いうちに手術を受ければ長い間メリットがあります。

④生活スタイルがデスクワークの方には向いていません。

⑤ー3Dまでの弱度近視の場合将来老眼の事を考えると残した方が便利となる場合があります。

⑥ドライアイがあってコンタクトができない方やコンタクトの管理がきちんとできなくて何度もトラブルを起こしている方は手術を検討してもいいかもしれません。

という6点です。レーシックやICLは非常に満足度が高い手術です。若い方が手術を受けて直後に遠くも手元もよく見えて裸眼で視力が1.5出て快適だとそのような感想をいわれるのは僕らからすると当然な感想です。ですが長い目でみると元の近視を残しておいた方がよかったというような場合があります。よく検討されてから手術されるようにしてください。

今回はレーシック、ICL向いている人向いていない人に関してお話させて頂きました。


(2023.1.10)