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109. 緑内障 危険なサイン

今回は緑内障の検査で知っておきたい大切な検査に関してお話させて頂きます。緑内障に大切な検査は色々あります。主に眼圧検査、隅角検査、眼底検査、OCT検査、視野検査などです。それぞれ大切です。緑内障の唯一エビデンスが確立されている治療は眼圧を下げる事です。無治療の眼圧を測定して、どの程度眼圧を下げる必要があるのか目標眼圧を設定して薬物治療が開始します。目安としてもとの眼圧より30%下げることが大切だと考えられています。必ず毎回眼圧をチェックをしますよね。隅角検査は隅角という水の出口の部分の検査です。開放型といって隅角が開いている人と閉塞型といって狭くなっている人では同じ緑内障でも病態が全く違います。開放型なら薬物治療がメインになりますし、閉塞型なら白内障手術やレーザー治療が検討されます。治療方針が全く異なってきますので隅角の検査は必須です。

緑内障は眼圧によって視神経に障害を受ける事によって発症します。乳頭陥凹や視神経線維層欠損といった形態的な特徴もありますし、また正常眼圧緑内障に特徴的な所見に乳頭出血というものがありますのでその有無を毎回目の奥を診てチェックしないといけません。OCTは緑内障の特に初期から中期において進行の有無を評価するのに優れています。緑内障の進行状態だけでなく前視野緑内障といいますが、視野欠損を起こす前の非常に早い状態を発見することができます。

そして視野検査です。視野検査が最も大切な検査であるのは充分ご存知な方が多いと思いますが、実は視野検査は場合によって2つする事があります。2種類しないと緑内障の重症な状態を見逃すことがあるんです。今回は視野検査で特に大切な中心の視野検査に関してお話させて頂きます。

緑内障の経過観察でよく行われるのは緑内障に特化した視野検査、静的視野検査というものです。ピっと光ったらボタンを押して反応する検査です。これ実は広い範囲の視野検査30−2と24−2というものと、範囲の狭い10−2というものと2つあるんです。30−2


の測定点は76点、24−2は54点なんですが、30−2の測定点の鼻側2点以外の周辺部をぐるっと除いたものが24−2の視野検査です。昔は30−2という視野検査がメインだったのですが、周辺部はあまり評価の対象にならない事が多いので今では測定点が少ない分だけ検査時間が短縮された24−2の視野検査でされているところが多いと思います。

通常このどちらかの視野検査がメインで行われます。緑内障の全体的な進行程度をみるのにとても分かりやすい検査です。ですが、この検査を定期的におこなっていても中心の評価が適切に行えていないと問題になることがあります。緑内障

の視野検査はどの部分に障害が起きると視力低下が起きやすいんでしょうか。この範囲の上の方でしょうか、下の方でしょうか、それとも耳側?または鼻側?でしょうか。

答えは

中心部です。なぜかというと中心部が黄斑部に対応する部分だからです。黄斑部は視力にとても大切な部分です。視野

の周辺に異常があるのか、それとも中心付近に障害があるかで重症度が違ってきます。周辺部に障害が起きても視力には大きな影響を与えないんですが、中心部に大きく障害が起きると視力への影響が出てきます。緑内障

の視野検査でVFIという値があります。この値は緑内障の障害の程度を表しているものです。中心に近いほど比重が大きくなっています。このことから分かるように中心の視野障害が大きいほど緑内障としては重症度が高いんですね。ところが

この30−2や24−2の視野検査で黄斑部を表しているのは全測定点のうち4点しかありません。この測定点の間隔は6°であって数字だけ聞くとぱっとしない思いますが、やや粗いんですね。黄斑部という大切な部分を4点だけで評価するのはなかなか難しいんです。そのためこの中心部分

に特化したプログラムがありまして、それが10−2という検査です。中心を2°ずつに配置した測定点が68点あって、細かく黄斑部の状態を評価することができます。中心の部分の評価をきちんとしていないと全体の視野

ではわずかな暗点だったとしても中心部分はかなり障害があったなんてこともあります。

緑内障は周辺からの障害が圧倒的に多くて周辺部の障害だけでは自覚症状が基本ありません。ただし中心付近の変化がわずかに出るだけで見にくさを感じる事があります。

そのため中心の視野障害が疑われている方は10−2の検査、中心の視野検査は大切です。

これを何故お話するかというと患者さんから視野検査、何故2種類の検査が必要なんですか、私の友達は緑内障だけど2つも視野検査をしていません。とお話頂くことがあるからです。緑内障の状態によって両方やった方がいい人もいますし、全体の視野検査だけでいい人もおられます。

通常緑内障の変化の多くは周辺からの変化が多いんですが、中には中心の障害から始まる方もおられます。

また中期以降になると周辺から始まっていた視野欠損が次第に中心に向ってくるので最初は全体の視野検査だけで良かったけど、進行していくにつれて全体と中心の視野検査を交互にする事が必要になる場合もあります。このような事があるので中心の視野検査は大切です。

ただでさえ視野検査をしたくないのに2つもあるのかと思うと嫌になるかもしれません。視野検査は何も説明を受けずに検査すると退屈な検査かもしれませんが、視野検査を上手くするために知っていただきたいポイントがあります。

1つ目は全ての光に気づいてはいけないということです。

全ての光に気づかないといけないと思われて、目を動かして一生懸命光を探される方もおられます。視野検査は実はただランダムに光って全ての光に気づいて下さいという検査ではありません。正確に視野検査が出来た場合、マリオット盲点という暗点がつきます。マリオット盲点とは視神経に該当する部位です。

この部位は光を感知することができないので光っていることに気づく事ができません。そのため正確に検査できると暗点がつきます。右目

なら右、左目なら左につきます。ですが、目がキョロキョロしているとこの暗点を刺激している光も気づいてしまうんですね。その結果、

盲点がつかない真っ白な視野になってしまいます。全ての光に気づく必要がないと思っていてください。

2つ目は器械音につられてテンポよくボタンを押さないようにしてください。器械音が鳴っても光ってはいない場合があります。器械音に反応しすぎると偽陽性率という部分に☓☓という表記が出てしまいます。偽陽性率が高い人は絶対視野検査を悪い結果にしたくないという心理的な背景があるといわれています。器械音がなっても光っていない事があるので注意してください。

最後3つ目は視野検査中に疲れたら渡されたスティックのボタンを長押しすると一時中断することができるということです。集中力が途切れそうになったり、眠くなりそうだったたボタンを長押しして休憩できることも知っておくとよいと思います。

視野検査にはこのようなポイントがあることも知っていただいて次からの検査にいかして頂けたらと思います。

今回の話をまとめますと

①視野検査には緑内障全体を評価する30-2、24-2の視野検査と黄斑部を評価する10-2という視野検査があります。

②全ての光に気づいてはいけません。気づいてはいけない光があります。

③器械音が鳴っても光っていない時があります。

④ボタンを長押しすることで休憩できます。

という4点です。

このように緑内障の視野検査は全体の視野検査と中心の視野検査、2つする場合があったり、検査を受ける上で色々ポイントがあります。視野検査は時間がかかる上に集中力もいるので嫌な検査ではあるんですが、視野検査に変わる検査がありません。もう視野検査をしたくないですと言われる方もおられますが、現状はできるだけ検査にご協力いただけたらと思います。今回は緑内障検査における重要な視野検査に関してお話させて頂きました。


(2022.12.26)