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79.緑内障•白内障手術の違い

今回は白内障手術と緑内障手術の違いに関してお話させていただきます。眼科の手術で白内障には白内障手術、緑内障には緑内障手術があるのですが圧倒的に多いのは白内障手術です。

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https://youtu.be/YVl6nCIlJSc

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60歳以降白内障手術を受ける患者さんがたくさんおられます。白内障手術は視機能を改善する手術ですので術後多くのかたは見え方がよくなりますからやってよかったという感想をもたれる方が多いです。手術を受けた方から凄くよくみえるようになったからあなたも早くやったほうがいいよと言われたことないでしょうか。そのようなことから緑内障手術も白内障手術と同じように視機能が改善することを期待して受診されるかたもおられます。白内障手術と緑内障手術、名前は白と緑の違いだけで名前が似ているのですが当然両者の手術は全く別物です。

今回は白内障手術と緑内障手術どう違うのかということに関してポイントを3つお話させていただきます。

白内障手術と緑内障手術の違いを分かって頂くためにこれらの病気の原因をまず理解していただくことが必要です。白内障はどのような病気かというと水晶体という目の中のレンズが濁っていき視力低下を引き起こす病気です。主な原因は加齢によるものです。その他にも糖尿病、アトピー、外傷性によるものなど原因は色々あります。水晶体の濁り方も核白内障とか皮質白内障、後嚢下白内障とか色々あるのですが、治療は同じで濁ったレンズを除去してきれいな人工レンズに変われば視力は改善します。このように白内障手術は病気の原因を治療できますので視機能が回復することが可能な手術です。

一方緑内障は視神経の病気です。主な原因は眼圧と考えられていましてその人にとって高い眼圧が視神経に負担になっていてそれが神経への障害を起こしていると考えられています。緑内障の手術は障害を受けた神経を治す手術ではありません。ここが白内障手術と根本的に違うところです。白内障手術の原因は混濁した水晶体を治療するので視力が回復するのですが、緑内障の場合は神経が原因であり神経をなおすことはできないんですね。これは眼科に限らないのですが、障害を受けた神経を回復することは現段階の医療ではやはり難しいと考えられています。

緑内障の治療は目薬やレーザーで眼圧を下げる治療を行っていくのですがそれだけでは眼圧の下がり方が不十分であると考えられる場合眼圧を更に下げるための手術を行います。すなわち緑内障手術は視神経をこれ以上悪くしないため行う手術であって視機能を回復する手術ではありません。緑内障手術は主に現状維持が目的であってこの点が白内障手術と決定的に違うところです。

緑内障は手術すれば回復することができるんですか?と聞かれることがありますが、緑内障は手術しても回復することはできないんですね。現状維持もしくは手術によって多少悪くなる可能性があるのですが、長い目でみてこれ以上の悪化を防ぐために行うのが緑内障手術です。治すことができるのが白内障手術、現状維持を目的に行うのが緑内障手術です。これが両者の手術の違いの1つ目のポイントです。

2つ目は術後の合併症です。白内障手術、緑内障手術どちらも合併症があります。共通の合併症は術後の感染症です。術後の感染症は失明の原因になるため避けなければならないのですが、どうしても一定の確率で起きてしまいます。白内障手術と緑内障手術の中の濾過手術と言われる線維柱帯切除術という緑内障に代表的な手術で比べますと白内障手術の感染症の頻度は国内では0,05%ほどと報告されています。一方緑内障手術の場合は1ー2%ほどありまして頻度が白内障手術と比べると高めなんですね。緑内障手術は白内障手術と違い切開する範囲が広めですし、濾過手術の場合は結膜の白目の部分に袋を作るのですが経過中に破れたりしますし、手術で縫合したところが避けたりします。そのためにどうしても術後の感染症の割合が白内障手術より大きくなってしまいます。

また緑内障手術の中でも濾過手術は感染症ともうひとつ注意しないといけない特徴的な合併症があります。眼圧の値がほどよく下がってくれればいいのですが、術後の眼圧が0とか1とかあまりに下がりすぎると低眼圧黄斑症という視覚的な障害を起こすこともあります。これは緑内障手術の線維柱帯切除術という代表的な手術の主な合併症なのですが、こちらも数%発症する可能性があります。あまりにも眼圧が下がりすぎてしまうと黄斑という部位がダメージを受けて視力低下に繋がることがあるんですね。

緑内障手術の主な合併症はこの感染症と低眼圧黄斑症というものがありまして頻度は他の手術より若干高めなんです。ほとんどの場合は低すぎる眼圧になることはなくしっかり眼圧が下がりまして経過がいい方が多いんです。感染症の可能性が高いといっても充血や目の痛みを自覚することが多いので早めに対応できれば問題ないことがほとんどです。ですが緑内障手術の中でも線維柱帯切除術にはこのような合併症が起きることがあるというのは知っておかなければなりません。

2つ目の違いはこのように感染症を引き起こす確率が違うということと緑内障手術の中の濾過手術には低眼圧黄斑症を発症することがあるということです。

そして最後の違いは手術を受けるタイミングです。昔の白内障手術は単焦点眼内レンズの一択でしたし、手術も大がかりで大変だったんですね。視力が0、1まで下がってもまだ0、1も見えているじゃないかといわれて手術をしてもらえないというような時代もあったそうです。今と真逆ですよね。今は手術する機械が進化して安心して手術を行えるだけでなく、レンズも進化して保険診療でも多焦点眼内レンズが選べますし、一部自己負担になりますが更にプレミアムなレンズを選ぶこともできます。このため白内障の症状が軽くても、例えば視力が1.0見えている状態でも老眼治療のためであったりだとか近視や乱視を治すために早めに手術をする場合があります。眼内レンズは一度いれたら生涯機能を損なうことはないので早めに手術を受けられる方がこのように多くなってきています。

一方で緑内障手術、特に濾過手術は一般的には緑内障が進行しているからといっても早めに手術が行われることありません。手術がどういうものかきちんとご理解していただいた上で受けていただくことが大切だからです。それはさきほどもお話した通りですが術後に視力が落ちてしまう可能性がありますし、術後感染症の可能性や低眼圧黄斑症という合併症のために見にくくなる可能性があるからなんです。緑内障が悪化しており進行をとめるためにはやはり手術が検討されるケースはあるのですが、緑内障手術は白内障手術のように見えるようにする手術ではなく見にくくなる可能性があるのでしっかり手術の内容を理解していただく必要があります。

そのため緑内障が進行していたとしても積極的に手術を進められない場合があるんですが、それはこのような理由なんですね。間違いなく緑内障は進行している、けど自覚的な変化がないのならすぐに手術決定せずに慎重に経過をみていきその中で判断するということもよくあります。

一方緑内障手術でもMIGSという低侵襲の緑内障手術は重症な合併症の頻度が少ないのでその点良いのですが、眼圧の下がり方は限界があるのですべての患者さんに適応になるわけではないんです。

以上白内障手術と緑内障手術の大きな違いを三点お話させていただきました。

今回の話しをまとめますと

①白内障手術は視覚的な回復を得られる手術ですが、緑内障手術は現状維持を目的とする手術です。

②術後の感染症の割合は緑内障手術(濾過手術)は白内障手術に比べて高いです。

③緑内障手術(濾過手術)に特徴的な合併症として低眼圧黄斑症があります。

④白内障手術は早い段階で手術する傾向ですが、緑内障手術(濾過手術)はすぐに決定することはあまりありません。

という4点です。どちらも同じ目に対する手術ですがこのような違いがあります。緑内障が回復する手術であればすぐにでも進めたいのですが、現状はこのように現状維持を目的とするのが緑内障手術です。緑内障手術が必要な状態にならないように早期発見がまず大切です。早めに緑内障とわかってしまえば手術にまで至ることはほとんどありません。40歳になったらまずは眼科の検診を受けて頂き年に一度は受診していただきたいと思います。また緑内障の家族歴がある方、近視が強い方、糖尿病など持病がある方は前倒しで受診されれることをおすすめいたします。今回は白内障手術と緑内障手術の違いに関してお話させて頂きました。