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46. 保険診療で行う多焦点眼内レンズ

保険診療でできる多焦点眼内レンズに関してお話させて頂きます。
多焦点眼内レンズというと今までは高額医療に分類されてきたものであり、希望があっても高いお金を払わないといけなかったという経済的な欠点があったのですが、保険診療でもできる多焦点眼内レンズが2020年より出てきています。

今までの保険診療での白内障手術は単焦点眼内レンズしか選択肢がなく、ピントが遠方・中間・手元のどこかにピントを合わせるものでした。

基本は眼が元々いい人は遠方合わせ、術後は老眼鏡、逆に元々近眼の方は近方合わせ、遠方は眼鏡という合わせ方が一番多い使われ方です。もしくは乱視が強ければトーリック眼内レンズを用いたりすることで乱視を矯正できたりします。その見え方で多くの方は満足される方がほとんどですが、中には眼鏡が煩わしいと考えられて多焦点眼内レンズを考えられる方もおられます。

ただ多焦点眼内レンズはどんどん新しいものが出てきておりますので種類が多すぎて迷われている方も多いようです。

従来の選定療養、自由診療で使われてきた多焦点眼内レンズに加えて、2020年から新しく出てきた保険診療で使われる多焦点眼内レンズの登場のため更に選択肢が広がり結局自分に合う多焦点眼内レンズってどれなんだ?と思われている方が多いようでこれに関しては色々な方から相談を受けます。

最近も多焦点眼内レンズ色々あってよく分からんけど、お金には困っていないからとにかくいい一番高いレンズを入れてくれとお話頂いた事がありました。最近だと保険診療でできるとてもいい多焦点眼内レンズができたので、そちらの事をお話すると、そんな保険診療でできるおまけのような多焦点レンズよりも高いプレミアムなレンズの方が良いんじゃないのか。一生の事だしけちけちするような事はしたくないんですよ。とお話されました。やはり高いものだと費用はかかりますがなんとなく高いものを入れたという安心感があるようですし、何も知らなければそのような感想を持たれるのは致し方ないと思っております。

ただこの保険診療で用いる多焦点眼内レンズは個人的には通常の多焦点眼内レンズに引けを取らない素晴らしい眼内レンズだと考えてます。今からその保険診療での多焦点眼内レンズの特徴に関してお話します。この保険診療で使われる多焦点眼内レンズ、低加入分節眼内レンズのコンセプトは遠方をみる部分に加えて+1.5Dという低加入の遠視レンズを付加させることによって遠方〜手元70cmほどの距離が見えるようになるレンズです。なのでいわゆる中間距離〜遠方をこのレンズを入れることによって見ることが可能になります。先程もお話しましたが、今までの単焦点眼内レンズは遠方、中間、手元のどこかにしかピントを合わす事ができなかったのですが、この保険診療で行う多焦点眼内レンズは遠方から中間の間が見えるようになったんです。遠近タイプの2焦点眼内レンズの場合は中間距離に見え方の落ち込みがあるといった欠点があったのですが、このレンズは遠方から中間までの距離に関しては見え方の落ち込みがなく見えることができます。両眼に入れた場合は両眼視で遠方から近方50cmまで見ることができるような結果にもなっており、眼鏡フリーで生活できる方が半分近くいるというようなデータも出ております。ただやはり遠方から中間距離で設定しているレンズですので手元に関してはやはり眼鏡が必要になると考えておかなければなりません。

それを言うと多焦点眼内レンズは遠方、中間、手元の3焦点タイプが主流であるにも関わらず結局手元がみえないのか、なんか多焦点眼内レンズといっても中途半端なレンズだなと思われるかもしれません。ですが私自身この多焦点レンズの一番いいと思っているのはハロー・グレアの発生が単焦点眼内レンズと同じレベルで少ない事、そしてコントラスト感度といいまして見え方の質のレベルが単焦点眼内レンズと同じレベルで保てていることです。すなわち単焦点眼内レンズの良さをほぼ同じレベルで引き継ぎながら見える範囲が広がっているレンズなんですね。術後眼鏡が必要になる可能性は考えて置かなければならないのですが、いわゆる見え方の質を落とさず見える範囲が広がるレンズで私自身としては以前動画でもお話しましたが、3焦点眼内レンズで眼鏡フリーになるよりは見え方の質を第一優先としています。このレンズは遠方〜中間距離がコンセプトではあるのですが、手元重視にしたい場合はこのレンズを応用というわけではないのですが、実は手元合わせにして老眼矯正することも可能です。すなわち少しだけ度数を落として遠方+中間という組み合わせではなく、中間+手元という組み合わせで1mぐらいから手元30cmまで見えるようにすることも可能です。その場合はやはり遠方を見るときは眼鏡が必要になりますが、とはいっても多くの方が以前より遠方視力の改善を自覚できると思いますし、手元から中間距離が裸眼でみえるようになり老眼への対策にもなります。

このレンズは現在乱視矯正のタイプもありますので、様々な眼に対して対応できるようになっております。このようにとてもいいレンズではあるのですが、やはり多焦点眼内レンズの部類に入るレンズですので基本的には緑内障、黄斑疾患、糖尿病網膜症のような眼疾患がない方に対しての適応となります。

今回は保険診療で用いる多焦点眼内レンズに関してお話しました。今回の話をまとめますと

①低加入分節眼内レンズという保険診療で行える多焦点眼内レンズが発売されております。

②このレンズは単焦点眼内レンズの良さをそのまま引き継いだ多焦点眼内レンズです。

③術後は眼鏡が必要ですが、遠方+中間もしくは中間+手元のようにして生活スタイルに合わせターゲットを設定できます。

④ただし分類としては多焦点眼内レンズなので眼疾患がない方が適応になります

という4点です。選定療養で用いる多焦点眼内レンズと比べると術後眼鏡が必要になる可能性はどうしても高く、いい方によっては中途半端な多焦点眼内レンズと思われがちなのですが、見え方の質を落とさずに見える範囲が広がることはとても大きなメリットだと思います。選定療養で使用する多焦点眼内レンズも満足度はとても高くて良いレンズだと思うのですがやはりハロー・グレアだとかコントラスト感度の点で不満に言われる方もおられるのでその点このレンズはあまり心配せずに使用できると思います。高いレンズが必ずしも最適解ではありません、保険診療の眼内レンズもとてもいいものがあり私自身はこのようにリスクが少なく見える範囲が広がったレンズはとてもいいレンズだと考えております。考え方はそれぞれだと思いますが良ければご参考ください。


(2021.8.28)