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36. もし眼科医の私が白内障手術を受けるならこのレンズを選びます

現在白内障手術で受けるレンズはたくさんあります。この中で選択していくのは中々難しいですよね。過去のブログで白内障手術に関して色々お話しさせていただきましたが、もし私が今すぐ治療が必要になり眼内レンズを選ばなくてはならないのならこのレンズを選びますということに関してお話しさせていただきます。
結論から先に言いますと、もし眼科医の私が眼内レンズを選ぶなら単焦点眼内レンズ、近方合わせの眼内レンズという選択肢をとります。
自由診療のレンズを含めて様々なレンズをみてきた結果現時点、現時点というと令和3年7月時点ですがこの時点では多焦点眼内レンズでもなく、自由診療で受けれる高いレンズでもなく保険診療の単焦点眼内レンズにします。今からその理由をお話しします。
白内障手術で入れる眼内レンズには現在3つの方法があります。1つは保険診療で受ける眼内レンズを入れる場合です。こちらはピントが遠方か近方かどちらかにしかピントを合わすことが出来ない単焦点眼内レンズになります。2つ目に選定医療で受ける多焦点眼科レンズを入れる方法です。3つ目は自由診療で多焦点眼内レンズを入れる方法です。保険診療と選定医療で受けれる眼内レンズは国内で承認を受けているレンズです。自由診療は国の承認を受けていないけど、海外の眼内レンズをクリニックが独自に輸入して使用する場合ですね。
多焦点眼内レンズは色々な種類があるんです。例えば最近ですと多焦点眼内レンズは従来の遠方、近方の2焦点眼内レンズから遠方、中間、近方の3焦点眼内レンズもしくは2焦点+EDOF眼内レンズというものが主流ですが、国内だとパンオプティクスもしくはテクニクスシナジーというレンズになります。ただ海外では様々なレンズがあり例えばインテンシティという5焦点眼内レンズというのがあります。イスラエルで作られたレンズで国内の3焦点に加えて更に2焦点距離が合うというものです。その他にも様々なものがあります。個人的には自由診療で受ける眼内レンズは注意が必要と思ってます。新しく出た海外品が必ずしもいいいとは限らないからです。5焦点と聞くとそんなレンズ凄いなと思うかもしれませんが、国内未承認のレンズがいつの間にか品質の問題で問題発覚後製造中止になるってことよくあるんです。長期データが出ておらず、本当にそのレンズが今後保証されていくかは分かりません。日本国内で承認を受けているレンズは徹底して検証されておりますので、多焦点眼内レンズを受ける場合は選定医療で受けれる眼内レンズを選ぶべきだと思います。自由診療の眼内レンズは少しギャンブル的な要素がありますので私ならまず選びません。
なので残りの選択肢は単焦点眼内レンズか選定医療で受ける多焦点眼内レンズになります。多焦点眼内レンズは2007年~国内で承認を受けたレンズであり当初は2焦点眼内レンズ、遠、近が裸眼で見えるレンズから現在は先程もお話ししましたが3焦点眼内レンズもしくは2焦点+EDOF眼内レンズがあります。どちらもとてもいいレンズです。最近の報告だと満足度はなんと95%以上の方であったとデータが出てます。このようなレンズで完全に眼鏡無しになる人が80%もいるみたいで、選んでまず失敗しないレンズじゃないのかなと思ってます。ただし、気になるのがその報告のなかでハローグレアという光がにじんで見える現象が40%くらいの人が自覚し手元の見え方に不満がある方も40%近くいます。高い満足度があるにも関わらず一定の見え方の不自由を訴えるかたもおられるようで、満足度の結果からするとほぼ多焦点眼内レンズのハローグレアとかそういったものが解消されているんだろうなと思いましたが、そうではないようです。実際現状の最新の選定医療で受けれる眼内レンズであってもハローグレアやコントラスト感度の低下があります。このような事をあらかじめ説明を受け想定範囲内だったから高い満足度があるのかなと思いますが、私自身はハローグレアもコントラスト感度も落としたくないです。そして眼鏡は別に術後しても全然いいと思ってます。そういうことでハローグレアやコントラスト感度の低下がない単焦点眼内レンズを選びます。単焦点眼内レンズは遠方合わせ、近方合わせがありますが私は元から近眼で手元は裸眼、遠くは眼鏡もしくはコンタクトという見え方に慣れてますのでその見え方に自然な近方合わせを選択します。手元をみる生活って私のなかでは重要なことだと考えてまして、裸眼でスマホみれたり、本読んだり出来たら十分だと思ってます。そして運転するときなど遠方を見ることが必要なら今まで通りコンタクトや眼鏡をすればいいと思ってます。その他に私が単焦点眼内レンズを選ぶ大きな理由があります。それは将来自分の目が網膜剥離や緑内障、黄斑症になってしまった場合にも備えておきたいからです。そのような目の疾患になってしまえば目の視覚機能は落ちます。その状態で多焦点眼内レンズが入ってしまった場合、ただでさえコントラスト感度が落ちる眼内レンズにも関わらず先程言った目の病気のために更に視覚機能が落ちてしまいます。こういった目の病気はどんな目のいい人でもならないとは限りません。そういった病気になってももし単焦点眼内レンズならその疾患によって視機能は落ちるかもしれませんが、少なくともレンズのせいで視機能が落ちる可能性は考えなくていいからです。
私は特に近視ですしもしかしたら将来どのような眼疾患にかかるか分かりませんしそのような将来予測不能な眼疾患の可能性も考えて単焦点眼内レンズを選びます。患者さんを見ていると多焦点眼内レンズをいれていて網膜剥離になった、緑内障が発症したという方は実際多くいらっしゃるんです。多焦点眼内レンズはそもそもこういった眼疾患の方には不適応ですが、白内障手術のときはなんともなかったという方多いんですよね。
以上が私が単焦点眼内レンズ、近方合わせを選ぶ理由です。
色々お話ししましたがまとめますと、
①コントラスト感度やハローグレアのない多焦点眼内レンズはないので、それらのリスクがない単焦点眼内レンズを選びます。
②元々近眼ということもありますが、手元の生活が大事だと思っているので手元合わせのレンズにして遠方は眼鏡ないしはコンタクトで合わせます。
③将来の眼疾患に備える意味でも単焦点眼内レンズを選びます。
という理由になります。あくまで個人的な意見ですので、最適なレンズはそれぞれ皆さん違うと思います、良ければ参考にしてください。

(2021.7.28)