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49. 次世代型単焦点眼内レンズ

2021年秋より使用されるようになった保険診療でできる焦点深度拡張型の眼内レンズ、テクニスアイハンスに関してお話させて頂きます。
保険診療で白内障手術を受ける場合は今でも主流は単焦点眼内レンズですが、この2021年秋より次世代型単焦点眼内レンズが登場
しました。

単焦点眼内レンズはその名の通り単焦点でありピントが合う部分に関しては1つのポイントですが、そのポイントに関しては良好な視力を得ることができます。一方選定療養などで使用される多焦点眼内レンズは手元だいたい40cm以降の遠方は連続してピントが合うようになります。ただ多くの多焦点眼内レンズは回析型

というものが主流であるので目に入ってくる光を分散させて手元から遠方を見えるようにしています。例えば遠方40% 中間30% 手元30%のように力を分散させますので、見える力が分散された結果コントラスト感度が低下してしまいます。遠方から手元までだいたいはっきりみえるのですが、単焦点眼内レンズはこのような回折部分がないのでポイントは1箇所しかみえないのですが、光を分散させることはないので見たいところははっきりみえます。またハロー・グレアのようなリスクがほとんどないのも単焦点眼内レンズの特徴です。現在の多焦点眼内レンズは2007年に国内で承認を受けて以降改良されてとても良いレンズになったのは間違いないのですが、依然としてこのようなハロー・グレア、コントラスト感度の低下が問題になることがあるために必ずしもいいというわけではなくて、単焦点眼内レンズも充分によく現状はそれぞれのレンズの特徴を理解した上で手術を受けて頂くことになります。私自身としてはコントラスト感度の低下とハロー・グレアのリスクの点から単焦点眼内レンズを推奨しておりますが、最近になって明範囲を広げるタイプの眼内レンズが保険診療で発売されておりまして非常に注目しております。その一つがレンティスコンフォートという保険診療でできる多焦点眼内レンズです。これは焦点深度を拡張するタイプの多焦点眼内レンズです。
このレンズ何がいいかというと、コントラスト感度の低下やハロー・グレアの心配がほとんどなくその上で明範囲を広げることが可能であるということです。
手元距離に関してはやや不十分ではあるのですが、70cm以降の遠方距離に関してはっきりみえるようになります。3焦点眼内レンズほどの明範囲は獲得できませんが、このレンズの最大の特徴は単焦点眼内レンズの良さをそのまま引き継いでおりまして、従来の多焦点眼内レンズのリスク、コントラスト感度の低下やハローグレアをほとんど心配しなくていいレンズなんですね。
明範囲を広げていくのが単焦点眼内レンズの課題であったのですが、その部分を改善できている眼内レンズが誕生したということで眼科の中で今でもとても話題になっているレンズです。
私自身もとても気に入っているレンズで一部緑内障や網膜疾患がある方に対しては慎重適応であるものの多くの方に適応になると思います。
そして、やや遠回りなりましたがこの2021年秋よりテクニスアイハンスという眼内レンズが発売されました。国内で保険診療で行える明範囲を広げるタイプのレンズの第2段目が誕生しました。このレンズは多焦点眼内レンズではないんですね、単焦点眼内レンズなんです。単焦点眼内レンズであると言うことが大きなポイントです。単焦点眼内レンズで明範囲を広げるものですのでそのような意味ではレンティスコンフォートと違いますので新しいタイプの単焦点眼内レンズといえます。レンズの中央1mmの範囲に低加入の遠視用レンズを組み込み遠方から中間までみえるようになったレンズです。今まではこの明範囲を広げるために回折型というぐるぐるした部分が必要でした。ただ先程もお話したとおりこのぐるぐるした部分があるためにコントラスト感度の低下やハロー・グレアがあったのですが、このタイプのレンズは少し専門的な話になりますが、従来の回折型ではなく高次収差を用いる方法を利用して明範囲を広げる方法をとっています。この方法により中間距離から遠方に関して単焦点と同レベルの見え方の質を保ちながら明範囲を広げることが可能になりました。今までは保険診療でできる眼内レンズは単焦点眼内レンズ、乱視があればトーリック眼内レンズというものでしたが、2020年にレンティスコンフォートそして2021年にテクニスアイハンスという焦点深度拡張型眼内レンズがでてきました。ちなみ他社でも同じようなレンズが開発されつつありまして、他社の物はアメリカなどでは既に発売されて使用されているものもあります。実はこのテクニスアイハンスは2019年から海外で使用されているレンズで、この度国内でも認可されることになりました。今後数年以内に単焦点眼内レンズはすべてこの次世代のものに変わっていく可能性も大いにあるかと思います。
遠方合わせの場合は遠方から手元70cm前後までは良好な視力が出ております。多焦点眼内レンズではなく単焦点眼内レンズですからあらゆる使いかたが可能です。すなわち優位眼を遠方合わせ、非優位眼をやや手元重視にするモノビジョンを併用する事も可能ですし、中間、手元合わせにして両眼手元から中間合わせにすることも可能です。また単焦点眼内レンズですから緑内障や網膜疾患のある方に対しても使用する事が可能です。多焦点眼内レンズというポジションではなくあくまで単焦点眼内レンズですから次世代のものとして考えられております。
ここまでの話を聞いてこのような焦点深度拡張型眼内レンズは同じく選定療養で使用するテクニスシンフォニーのようなEDOF型眼内レンズがありどう違うのかという疑問やまたレンティスコンフォートと結局どっちがいいのかというのも思われるかもしれません。
まだ出たばかりの眼内レンズで今後違いが明らかになってくるかと思いますが、現状ははっきりした欠点が見当たらず素晴らしい眼内レンズと考えております。
今回の話をまとめますと
①明範囲が広がった単焦点眼内レンズ、テクニスアイハンスが登場しました。
②高次収差を用いる方法によりハローグレアやコントラスト感度低下のような心配がありません。
③単焦点眼内レンズであるため緑内障や網膜疾患のある方にも使用が可能です。
④モノビジョンを用いたり、手元重視にしたり様々な応用ができます。
という4点です。3焦点眼内レンズと違い明範囲は広がったといえど限られるのでやはり眼鏡が必要になる可能性はあるのですが、いままでの単焦点眼内レンズとは明らかに違うタイプの眼内レンズです。元々テクニスアイハンスを発売している会社の眼内レンズは独自のレンズ形状されているので後発白内障が非常に少なく個人的にとても気に入っているのですが、このレンズももちろんその形状を引き継がれております。思うとここ10年で眼内レンズは劇的に進化しており、まだまだ今後新たな進化がありそうです。実際他社からも同様のレンズは出ており今後このタイプのレンズが次世代型単焦点眼内レンズになっていくのではないかと思います。競合する事でますますいいレンズが出来てきますからとてもよい傾向なのではないでしょうか。よければご参考ください。

(2021.10.07)