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47. 白内障手術におけるモノビジョン法とは

白内障手術におけるモノビジョンという方法に関してお話します。今までに白内障のレンズのお話を主にさせて頂きましたが、レンズに加えてこのモノビジョンと言う方法を使うことによって老眼治療において有効な対策になる可能性があります。

まずモノビジョンとはなにかと言うことからお話しします。モノビジョン法とは意図的に左右の眼の屈折に差をつけて右と左で異なる見え方をさせる方法です。

例えば片方の眼を遠方合わせにしもう片方の眼を近方に合わせるといった方法

です。そうすることで例えば遠くをみるときは右眼で、近くを見るときは左眼でみるようにして両眼でみても遠近感を保ちながら見ることができます。

このモノビジョンという方法は白内障手術の時だけでなく、老眼治療の対策としてレーシックとかコントタクトレンズを使用する場合にも行うことがあり様々な場合に使用される方法です。

左右の屈折の値に差をつける事に違和感を持たれるかもしれませんが、世界的に行われている老眼治療の1つの手段なんですね。

今回はモノビジョン法を用いた白内障手術においての話を中心にさせていただきます。

白内障手術において老眼治療も兼ねて手術を行うことをご希望された場合、一番の候補は両眼に選定療養や自由診療で用いる多焦点眼内レンズ、今は主流が3焦点眼内レンズなのでそちらを両眼に挿入することになります。

老眼という状態は手元が見にくくなるだけでなく、ピント調節能力が低下することにより遠くから手元までの見える範囲がどんどん狭くなっていきます。現在国内で承認を受けた3焦点眼内レンズは1つしかないのですが、その3焦点タイプのものは5m以降の遠方、60cm、40cmの3焦点に距離があいますので、40cm以降に関してはピントが合うようになります。

そうすることで遠方から手元までだいたい見えるようになり、老眼治療となって眼鏡フリーになる可能性は高いのですが、ハロー・グレアやコントラスト感度の低下といった多焦点眼内レンズ特有の症状が少なからずあります。

そのような見え方の質を落とさずに老眼治療となると、最近発売された保険診療のレンズでの多焦点眼内レンズを用いてモノビジョンという方法を行う事があります。このレンズは選定療養や自由診療で用いる多焦点眼内レンズと異なり、単焦点眼内レンズの良さ、すなわちコントラスト感度の低下やハロー・グレアの発生をほとんど気にしなくていいレンズです。ただし、3焦点眼内レンズのように遠方、中間、近方とすべての範囲を補えるわけではありません。

明範囲といって見える範囲は遠方、中間、近方のうち2ヶ所、遠中もしくは、中近のような距離を選んで見えるようになります。このレンズを両眼同じ度数で設定すれば両眼、遠中、もしくは中近の距離がみえるようになるわけですが、遠中なら近方の距離に関しては少し見え方に関しては不十分ですし、中近に合わせると遠方の見え方に関しては同じように不十分です。ですがモノビジョンという方法を使い少しだけ度数をずらすことで例えば右眼を遠中にして左を中近にして両眼で遠方〜手元40cmくらい
まで見え方の質をあまり落とさずに老眼治療をすることが保険診療の白内障手術でも可能です。

このようにモノビジョンというのは屈折に少しだけ両眼差をつけて用いることで裸眼で明範囲を広げれる可能性があります。

両眼あえて同じ度数にしないのはここに理由があり、裸眼での見える範囲をできるだけ広げたいといった希望をもたれた方に適応することがあります。

このモノビジョン法はこのように手術前から予定する場合であったり、手術後の不満に対して使用し満足度を高める手段として行われる事があります。

例えば軽度の近眼の方が両眼遠方合わせで白内障手術を予定した場合です。片眼に単焦点眼内レンズ
を遠方合わせにして遠方ははっきり見えるようになったけど、手元が裸眼で思った以上にみえなくなってしまった、私は眼鏡を使わずに何とかしたいんです。と話される場合です。両眼遠方合わせの場合手元に関しては見にくくなるので眼鏡というのが原則ではあるんですが、この方は片眼だけ白内障手術遠方合わせにし、もう片眼は軽度の近視が残った状態で手元が見えるので一旦片目残りのの手術を延期してこのまましばらく様子をみたいと話されました。しばらくこの状態を続けて頂き、対応ができていた事を確認しまして結論からお話すると手元用の眼内レンズを入れた事で満足いただけました。単焦点眼内レンズで遠方、手元という組み合わせは屈折の値が大きくなってしまい、大きくなると立体視といって見え方の感覚が悪くなり眼精疲労の原因となるので原則勧めていないのですが、モノビジョン法にて満足いただけた方です。

片眼を遠方合わせの単焦点眼内レンズを入れてもう片眼で手元をみたい場合手元の単焦点眼内レンズを入れる以外にもう一つ方法がありましてもう片眼に多焦点眼内レンズを入れる事もあります。これはハイブリッドモノビジョンというかっこいい名前がついている方法です。片眼に単焦点眼内レンズ、もう片眼に多焦点眼内レンズを入れるような場合もあるんですね。こちらに関しても本来はレンズを揃えることが原則でありあまり行わないのですが、片眼の手術が終わった時に予想していたより見え方が少し違った、そのような場合の対応としてモノビジョン法を用いることで満足度が上がる可能性があります。

または片眼に多焦点眼内レンズを挿入した場合、以外と手元が見にくいなといった場合です。現在国内で承認を受けている3焦点眼内レンズは手元の距離が40cmで設定されており、人によっては40cmの距離

では遠いと言われる方もおられます。その場合はもう片方の眼には少しだけ度数を落として同じ多焦点眼内レンズを入れます

とtargetが全体的に少し手前によるので手元も見えるようにすることができます。

これもモノビジョン法です。

 

眼内レンズを挿入する場合は両眼全く同じ度数をいれる事が一番多いのですが、モノビジョンという方法を使いながら見え方の範囲を広げる場合もありましてこのように術後の不満例で使われる場合もあります。

両眼とも裸眼で見え方の質を落とさずに遠方から手元まで矯正できる治療は現状はありませんのでこのような方法を用いる事があるんですね。

ただし注意点もあり、術後すぐその見え方になれるかというとそうではなく、慣れるのに1ヶ月から3ヶ月程度時間を要します。また、長いこと遠方、もしくは近方をみる事が多い生活スタイルの方にはあえて屈折の差を使うモノビジョンを使うことは適していないので両眼同じ屈折の値が良いです。例えば仕事柄トラックの運転など遠方の距離を重視する方、逆にパソコンのように手元の仕事が多い方はあえてモノビジョンを行うメリットはあまりありません。屈折の値を両眼とも遠方、もしくは手元に揃えた方がいいです。また神経質の人にも向いていません。適応となりやすい人は元からそのような見え方に慣れている人です。白内障手術前に元々コンタクトレンズやレーシックなどでモノビジョンの見え方に慣れている方、元から不同視といって屈折の値に差がある方は適応しやすいと言われれております。裸眼での見える範囲をなんとか広げたいという方に対してお話することが多いです。

私としても基本は屈折の値は揃えて、不足分に対しては眼鏡ないしコンタクトレンズという考えたかではありますが、モノビジョン法は欧米含めて世界中で行われている老眼治療での戦略であり、白内障手術に更に満足度を上げる方法として広がっています。

今回の話をまとめますと、

①モノビジョン法という老眼治療の一環として意図的に左右の屈折に差をつけて眼内レンズを入れる場合があります。

②裸眼で広い範囲での明範囲(見える範囲)を獲得でき満足度が高い方法です。

③見え方に慣れるのに少し時間がかかるので神経質な方であったり、遠方、近方いづれかに生活スタイルが偏っている方はしない方がいい。

という3点です。モノビジョン法は60歳以降の老眼治療として満足度が高い方法です、白内障手術を両眼一度でしないのもこのように片眼終わったら術後の見え方を確認して場合によっては満足度をあげるためにモノビジョンを使う場合もあります。よければ参考にしてください。今回はモノビジョンに関するお話をさせて頂きました。

(2021.9.1)