〒500-8847 岐阜県岐阜市金宝町1-11

ブログ BLOG

37. 多焦点レンズ、単焦点レンズどちらがいいのか

白内障手術は手術によって入れるレンズで元々の近視や遠視、乱視を矯正すことが出来ます。そのレンズには保険診療で入れる単焦点レンズ、そして選定療養といって一部自費診療で受ける多焦点レンズがあります。詳しくは以前にブログでお話ししましたのでそちらもご参考ください。簡単に確認すると単焦点レンズというのは、名前のとおり単焦点ですのでピントが1ヶ所しか合いません。基本は遠方合わせか近方合わせかどちらかです。遠方を選んだ場合は裸眼で遠方はくっきり見えるようになるんですが、近くを見る場合は老眼鏡のようなメガネが必要になります。一方、近くの見方を選んだ場合は手元が裸眼ではっきりみえるようになります。ただ、遠くに関してはメガネが必要になります。自費診療で受ける多焦点レンズは多い焦点と書いてありますように、遠方~中間、近方と焦点が裸眼で合うレンズです。令和3年7月時点でこの多焦点レンズの主流は3焦点眼内レンズと2焦点+焦点深度拡張型レンズのどちらかになっております。多焦点眼内レンズは元は遠・近の2焦点眼内レンズとして2007年に発売されました。当初この2焦点タイプの多焦点眼内レンズで遠・近がメガネなしで見えるようになったのですが、中間距離の見方が落ち込むこと、そしてハロー、グレアという光がにじむような症状があり不満例が多かったんです。その後改良を重ねまして、焦点深度拡張型レンズといって中間~遠方がはっきりみえるレンズが出来るようになり、今現在は先程お話しした3焦点眼内レンズ、パンオプティクスという眼内レンズと2焦点眼内レンズと焦点深度拡張型レンズ、テクニクスシナジーという眼内レンズが国内で承認を受けており主流になっております。このパンオプティックスとテクニクスシナジーというレンズはどちらも近方から遠方を裸眼で見えるようになります。今までの多焦点眼内レンズの欠点を軽減したレンズで実際とてもいいレンズです。なのでこれだけ聞くと保険適用の単焦点レンズは焦点が遠方か近くかどちらかにしかピントが合わないからお金があれば近くから遠方がみえるレンズの方がいいなとなりますよね。
この点は以前のブログでもお話ししましたが、ここまで聞くと当然そう思われると思います。ただ、最新の多焦点眼内レンズにも注意することがあり、それはハローグレアという光がぎらついたりしたり、コントラスト感度が低下するのでどの距離もくっきりはっきり見えるようになるレンズではないんです。もちろん手術前の状態よりはしっかり見えるようになるんですが、その力は単焦点レンズの見方より劣ります。どういうことでしょうか。多焦点眼内レンズは1枚のレンズに色んな機能をつける結果どうしても1部不具合が出来てしまうんです。その点単焦点レンズはレンズの特性はシンプルですので、このような不具合はありません。ピントは単焦点だけど、その分遠方合わせなら1.2m以降遠方はっきりくっきり見えるようになります。例えば遠方合わせで手元が見にくければ眼鏡をして見ればいいだけなんですよね。多焦点眼内レンズは2007年以降たくさんレンズが出てますが、日本国内含めて世界でのシェア率はどこでも3-7%で90%以上は単焦点眼内レンズが占めております。若いときのように手元から遠方がはっきり見えてハローグレアのような不具合がないレンズというのは現状ないのですが、眼鏡無しで生活を送るのは多くの人が望まれているのではないでしょうか。現状だと出来るだけ眼鏡無しでの生活を望む場合は多焦点眼内レンズを入れることが一番の方法だと思いますが、先程話したハロー・グレア、見え方の質がやや落ちるコントラスト感度の低下があることを理解した上で選択されることなります。また多焦点眼内レンズは緑内障や黄斑疾患、ドライアイのような角膜疾患がある場合は基本適応にはなりません。それは先程お話したとおり、多焦点眼内レンズはコントラスト感度が低下しますので、目に疾患があって何らか視覚異常がある場合はさらに見え方の質が低下することが予想されるからです。とは言っても例えばパンオプティックス、3焦点眼内レンズを使用したも最近出てきているものだと95%以上の方が満足され、85%以上の方は眼鏡が不要になったというアンケート結果が出ております。こういうデータを見ると多くの人が満足されているのは間違いないと思います。ところが眼科医からの視点は違いまして以前の動画でもお話ししましたが、もし眼科医が白内障手術を受けるならどのレンズにするかというアンケートを取ったものが論文で発表されています。
単焦点眼内レンズを選ぶ眼科医が60%以上いました。その理由も見え方の質をとりハローグレアのようなリスクを嫌うからという理由でした。ブログ36でお話しした私自身の意見と同じ方が多いようです。単焦点眼内レンズは遠方合わせなら手元の眼鏡が必要だし、手元合わせなら遠方眼鏡が必要というように眼鏡が必要になるんですが、費用の点で保険診療だから安いというのももちろんいいことなんですがそれ以上に視機能面で心配する事がないんですよね。もちろん理想的な眼内レンズはコントラスト感度の低下やハローグがなく、遠方から手元までしっかり裸眼で見えるのが究極な眼内レンズといえますが、そのようなレンズはありません。
見え方に関する考え方は人それぞれです。白内障手術は基本人生に1度きりですのでどのレンズが一番いいかは担当の先生としっかり話して決めるようにしてください。


(2021.7.28)